学部・研究科 | 総合政策学部 |
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授業科目名 | 特殊講義(ヨーロッパ思想) |
学期名称 | 後期 |
配当年次 | 2年次配当 |
単位数 | 2単位 |
授業担当教員 | 横山 陸 |
教員カナ氏名 | ヨコヤマ リク |
履修条件 | 履修にあたり哲学・倫理学の専門知識は前提としない。後期科目「特殊講義(ヨーロッパ思想)」も合わせて履修することが望ましい。 |
科目の目的・到達目標 | 本講義の目的は、総合政策学部の理念である「政策と文化の融合」に基づいて、哲学・倫理学の観点から現代社会のさまざまな問題を批判的に分析し、その背景にある社会の理念や規範を問い直すことにある。そのために、次の二点を到達目標とする。 (1)哲学・倫理学の基本的な概念や理論を習得し、自らの言葉で説明できる。 (2)それらの概念や理論を応用して、社会の諸問題を分析し、問題解決のための政策を構想できる。 |
授業の概要 | 今年度は「寛容」と「多様性」をテーマにヨーロッパ思想の基本的な考え方を学んでいく。「ヨーロッパ人」と言われて、どのような「人」をイメージするだろうか。日本ではいまだに「金髪白人」のイメージが強いかもしれないが、じっさいにはロンドンでもパリでもベルリンでも、人口の半数近くが非白人系の住民(いわゆる旧植民地系・移民系の住民)である。宗教・文化の多様化された社会、それが現在のヨーロッパである。 もちろん宗教・文化の多様性はヨーロッパの専売特許でなく、アジアのさまざまな地域にも見ることができる。だがヨーロッパ社会の特徴は、多様性を「社会」だけでなく「個人の多様性」として考える点にある。個人はどのような宗教・文化に属していようとも、「個人」として尊重されなければならない。同様に、個人は女性であろうとも、性的マイノリティであろうとも、「個人」として尊重されなければならない。 ところが、近年の移民・難民問題のなかで、ヨーロッパ社会が直面しているのは、宗教・文化の多様性とジェンダー・セクシャリティの多様性とが両立しないという事態である。宗教的信条や文化的習慣は、ときに女性や性的マイノリティの人びと個人の尊厳・権利・自由を無視する。他方でこうした問題にかこつけて、特定の宗教・文化を狙い撃ちしたヘイト・スピーチが(個人の思想・表現の自由として)社会に吹き荒れている。いったい多様性と、個人の尊厳・権利・自由は、どこまで両立するのだろうか。私たちは多様性にどこまで寛容であるべきなのだろうか。 講義では、ヨーロッパ哲学・倫理学における個人の尊厳、権利、自由、多様性、そして寛容に関する伝統的な議論を紹介しながら、現代ヨーロッパ社会(そして日本社会)における「寛容」の問題を考えていく。 |
授業計画 | ※参加者の人数や関心・理解度に応じて、内容や進捗度は変更する場合もある。 第01回 ヨーロッパ思想の伝統としての宗教的寛容(イントロダクション) 第02回 個人の権利という発想——ロックの自由論 第03回 政教分離としての寛容——ロックの寛容論 第04回 お互いに寛容であること——ベールの寛容論 第05回 寛容とは理性を信頼すること?——ヴォルテールの寛容論 第06回 必要なのは他者への寛容か?尊重か?——カントの尊厳論 第07回 寛容と市民社会——レッシングの寛容論 第08回 社会をどのように構想するか?——ヘーゲルの市民社会論 第09回 表現の自由と寛容——ミルの自由論(1) 第10回 なぜ多様性が必要なのか?——ミルの自由論(2) 第11回 現代社会における寛容——フォアストの寛容論 第12回 同化か?統合か?——ヨーロッパの移民政策を考える 第13回 ヘイトスピーチと言論の自由——シャルリ・エブド事件を考える 第14回 宗教への寛容か?女性の権利か?——イスラム教徒のスカーフ問題を考える |
評価方法 | ・中間レポート(30%)、期末試験(50%)、平常点(リアクションペーパーなど:20%)。 ・中間レポートの未提出者、期末試験の未受験者はいずれもE評価(不可)とする。どちらかの素点が極端に悪い場合も同様。 |
テキスト・参考文献等 | 教科書は使用しない。適宜、授業中に資料を配付する。 |
授業外の学習活動 | 毎回配布するプリントやノートを読み直し、授業で扱った概念や理念について、自分の言葉で(文章で)説明できるようにしておくこと。それが中間レポートと期末試験の準備となる。 |