中央大学

シラバスデータベース|2025年度版

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ホーム > 講義詳細:異文化理解

シラバス

授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科など 担当教員 教員カナ氏名 配当年次 単位数
異文化理解 2025 後期 木4 文学部 中川 康弘 ナカガワ ヤスヒロ 1~4年次配当 2

科目ナンバー

LE-LG1-T503

履修条件・関連科目等

授業で使用する言語

日本語

授業で使用する言語(その他の言語)

授業の概要

【基本テーマ:自己をくぐらせ、異文化理解の対象領域をとらえる】

多様性の尊重、多文化共生社会の実現、そして異文化理解の重要性・・・よく聞かれる言葉です。しかしその言葉を発しているのは、誰でしょうか。それがままならない現実や社会の文脈に、どれほど思いをいたしているでしょうか。そこには強者の論理、見過ごされて声を出せない人々が存在しているということを、私たちは、どれだけ意識しているでしょうか。私は、日常において、自分の傲慢さ、不遜な態度を振り返るたびに、何様のつもりだ、それを語る資格があるのか、と忸怩たる思いになります。他者と関わり、揺さぶられ、失敗してばかり。それでも、本講義における異文化理解は、感度をもって自分の弱さに向き合いながら、他者とともに在るということ不断に求めていく学問だという認識に立っています。
公正な社会の実現を希求する声が高まっています。一方で、固定化された国家や民族枠組み、能力主義や家父長主義といった保守主義、あるいは新しい資本主義の名の下での経済成長を自明とする価値観を紐帯とする声も聞かれます。もはやどこかの誰かに与えられた制度・価値枠組みの中で喜び、憂い、承認欲求を満たすだけの自己喪失の時代にあるといえるでしょう。しかし分断と排外主義が懸念される今こそ、あたりまえを疑い、さまざまな価値観をもつ人々と対話し、共生することが求められるのです。その原動力は、言語と文化の教育を軸にした異文化理解でこそ培われる部分が大きいと考えます。
本講義では、レジュメやPPTを用いて異文化理解を深めていきます。マクロレベルとして多文化多言語状況に係る諸政策について歴史的背景を踏まえて学び、ミクロレベルで私たちの日常のコミュニケーションを見ていきます。同時に、各論として障害やジェンダー&セクシュアリティ、英語/日本語教育、日本人・日本文化論/メディア/記憶の継承等も射程に入れ、広く異文化をとらえます。それらの異文化にかかる議論を通じて、他者に出会った際の自らの立ち位置を確認するための最適解を見出していきます。

科目目的

私たちの社会は、測るものを限定し、効率よくパッケージ化し、誰かがこしらえた権威を拠り所に生きています。皆さんになじみのあるMBTIや、地球規模の複雑な課題をカラフルな絵やシンプルな記号で訴えるSDGsなど、流行りのプレインランゲージ(Plain language)をまつまでもなく、私たちは、課題や生き方さえ規定されている世界観の中にいるのです。でも、その世界観では「異」とされるもの、つまり規格外、曖昧なものはこぼれ落ちるかノイズとして排除されます。そう考えると、貧困や格差、大小の差別がいつまでも解消されないのは、認識枠組み自体が根源的な要因のように思えてきます。「異文化」には「自文化」が内包していますが、私とあなたが異なるように、そんな大雑把なカテゴリーはないでしょう。そう考えると文化=異文化とも言えます。でもあえて二分化するのはなぜでしょう。現行の社会や教育システムは、正常/異常、中心/周縁、マジョリティ/マイノリティ、規範/逸脱などの認識枠組みに二分化され、意思決定者、ネイティブ、健常者、ジェンダー偏重によって設計、価値づけられているといえます。
しかし、それはどこまでも条件付き真理であり、トートロジー(同語反復)になりますが、それは真理ではありません。だとすると、真理を証明できるのは外部のモノサシではなく、おのずと「私」との内的な関係ということになります。真理は、自己が変わる感覚、すなわち「自己変容」の内にある。私は本気でそう考えています。腑に落ちるという感覚です。それは公に共有されず、言葉で誰かに説明できるものでもありません。畢竟、外から与えられた世界観から解き放たれた、自己生成の始まりともいえるのです。
もう一つ、「理解」はそもそもできるものでしょうか。それは他者を所有物と化すステレオタイプ的暴力ではないでしょうか。異文化を「理解」してはいけないのです。希求しつつも、不断に書き換えていく。これが異文化理解に絶えず求められるマインドであり、講義でも、この点を涵養したいと思います。
さまざまな価値観、背景をもつ人々を歓待する教育現場の形成に向かうために、本講義を通じて、異文化理解という学の全体像を把握し、その基礎知識と態度を養うことを目指します。また、それにかかる種々の問題を他者化することなく、自分事として捉え、関係性に潜む権力やそこで構築されるアイデンティティについても思いをめぐらし、教育という営みのなかで異質な他者を歓待する意識を一人ひとりが育んでいくことを目的とします。

到達目標

私たちは複数の「私」を生きています。具体的な他者との関わりにより、「私」のあり方は変化するということです。高校から大学へのトランジションでキャラが変わった人、家ではお嬢ちゃんお坊ちゃんの甘えん坊だけど、サークルでは頼れる先輩として慕われている人もいるでしょう。塾バイトをしている人も、私の前では「学生」でも、塾では「先生」と呼ばれ、私なんかよりよっぽど教師然としている人もいるはず。それは強制でも演技でもなく、自分と関わる他者存在がそうさせるのです。つまり「私」という存在は周囲の他者との関係によって現れ、その他者に支えられているのです。「他者」あってこその「私」。関わりを持っていない「私」は存在しません。こうした発想から、異文化理解をとらえてほしいと思います。「文化の違いを乗り越える」「〇〇人」「男女」という線引きは一面的で固定化された境界にすぎません。それこそ単一の「私」について議論しているようなものです。その考えで異文化に臨むなら具体的な他者に会うことなどできないでしょう。個性は関わりから引き出され、自己において不断に更新されていく。その運動の総体に満ちた個性が「異文化」に内包する「前提としての差異」を問い、異文化理解を再構築していくことにつながっていくのです。
そこで本講義では、一人ひとりが単一の価値観や権力、ステレオタイプを誘導する社会を複眼的にとらえ、自らの言葉で語れるようになることを目標とします。本講義で得た知見は、自分の利害やその時々の関心事にのみこもり、他者への想像力やお仕着せの価値への批判的思考が希薄になりつつある現代に一層求められるものであり、学校教育における外国語教諭を目指す人には、何より多様な背景を持つ生徒に出会う際の必須のマインドとなるはずです。異文化理解で培うことのできる、目の前にあるのに見えていないものへの気づき、自分の心に住まう悪意や弱さと戦い、その努力に生きる価値を見出すことを、普段の生活の場において、家族、友人等とのかかわりにおいて、ぜひ応用してほしいと思います。

授業計画と内容

第1回 異文化を理解することとは・・・その射程と見取り図
第2回 異文化の日常:ステレオタイプ/日常会話の中の異文化/文化をめぐるイデオロギー
第3回 接触場面と異文化:コミュニケーションとインターアクション/非言語コミュニケーション
第4回 言語内部の多様性:世界の多言語状況と危機言語/CEFRと複言語主義/変種/言語の恣意性
第5回 異文化のとらえ方と扱い方:言語生活における態度/ユニバーサルデザイン/多文化主義
第6回 異文化としての学校:外国籍児童生徒と学校教育/バイリンガル教育/中学校夜間学級の現状
第7回 言語としての手話:ろう文化/障害学/優生思想と科学技術/支援の眼差し/インクルーシブ教育
第8回 異文化とジェンダー&セクシュアリティ①:フェミニズム/性の系譜と言説/現代日本の傾向
第9回 異文化とジェンダー&セクシュアリティ②:LGBTの語られ方/日本語とジェンダー/学校現場
第10回 英語教育と異文化:史的展開と課題/Native-like/自動翻訳機の是非/国際共通語としての英語
第11回 日本語教育と異文化:社会的文脈/国語教育との違い/日本語教育の言語知識/やさしい日本語
第12回 日本人論・日本文化論の理解:共感/タテ社会/友だち幻想/宗教リテラシー/ステレオタイプ受容
第13回 異文化とメディア・出来事の記憶・言語:スポーツ/記憶の継承/死者との対話/語りの暴力性
第14回 まとめ

*授業の進度状況により、順番や内容に若干の変更が生じる場合がある旨記しておきます。

授業時間外の学修の内容

その他

授業時間外の学修の内容(その他の内容等)

・定期的に課題を出すので、自律的に学修を進めること

授業時間外の学修に必要な時間数/週

・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。

成績評価の方法・基準

種別 割合(%) 評価基準
期末試験(到達度確認) 40 授業の内容に関係した課題文を課し、複眼的な観点から異文化理解に係る問題に一定の答えを見出し、その重要性を自分の言葉で説明できるかどうかを評価します。最終回に教室で実施する予定です。
レポート 30 授業で触れた基本概念の整理を兼ねて、異文化理解にかかる課題を中間地点に課します。
平常点 30 各回のクラスへの貢献度、受講態度状況を基準とします。

成績評価の方法・基準(備考)

授業の進度によってかわることもあります。

課題や試験のフィードバック方法

授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う

課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)

アクティブ・ラーニングの実施内容

反転授業(教室の中で行う授業学習と課題などの授業外学習を入れ替えた学習形式)/ディスカッション、ディベート/グループワーク

アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)

授業におけるICTの活用方法

実施しない

授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)

実務経験のある教員による授業

いいえ

【実務経験有の場合】実務経験の内容

【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容

テキスト・参考文献等

授業では、主にレジュメ等の配布資料を使用する。

参考文献
『異文化間教育事典』異文化間教育学会編著、明石書店
『顕在化する多言語社会日本』福永由佳編、三元社
『多文化社会で多様性を考えるワークブック』有田佳代子他編著、研究社
『多様性との対話』岩渕功一編著、青弓社
『異文化コミュニケーションの基礎知識』伊藤明美著、大学教育出版
          

その他特記事項

基本はmanabaのニュース機能でハンドアウトの配信を行います。連絡事項等があったらその旨のみスレッドでお知らせください。個人あてに個別指導コレクションでやりとりを行います。

参考URL

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