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シラバスデータベース|2025年度版

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ホーム > 講義詳細:国際法総論1

シラバス

授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科など 担当教員 教員カナ氏名 配当年次 単位数
国際法総論1 2025 春学期 木3 法学部 西海 真樹 ニシウミ マキ 2年次配当 2

科目ナンバー

JU-IL2-001L

履修条件・関連科目等

国際法総論2、開発の国際法、国際組織法、国際人権法、国際紛争解決法、国際環境法、領域の国際法、日本外交の法と政治1・2(外交の現場から)などを合わせて履修することが望ましい。国際社会にかんする認識を深め、これからのあるべき国際社会像を考えてみたい人に、また、将来の職業として外交官、国際的視野をもった公務員・企業人、国際機関職員、開発・人権・環境NGOのスタッフなどをめざす人に履修を薦める。

授業で使用する言語

日本語

授業で使用する言語(その他の言語)

授業の概要

 現代国際社会において国家は相対化されたといわれる。単一市場や通貨統合を実現したEU、地球規模で経済活動を展開する多国籍企業、民際交流を推進する多くの国際NGOなどをみれば、たしかにそう言えるだろう。実際、国家以外のアクター環境・人権・開発分野の国際法規範の形成・適用に及ぼす影響は、ますます大きくなっている。
 しかし、それでもなお国家は国際法の本来的な主体(国際法上の権利義務が帰属し、かつ、新たな国際法規範を形成・適用する能力をもつもの)であり続けている。たとえばパリ協定のような地球温暖化防止のためのCO2排出規制のルールが形成・適用されるためには、諸国の合意を得なければならない。人権、文化多様性、自由貿易、投資、武力行使、テロへの対処などについても同様である。
 この国際法主体としての国家は「主権」国家であり、みずからの意思にもとづかない限り国際法に従うことを強いられない。国際社会とはそのような主権国家から成る分権的な社会であって、司法、立法、行政の統一的権力が確立している国内社会とは構造が異なる。およそ法はそれを生み出す社会の構造を反映するから、国際法と国内法が形成・内容・適用の面で大いに違っているのも、いわば当然である。
 かつて国際法とは「文明国」たる欧米諸国の利益追求のための道具だった。現代国際法においてもその傾向が消滅したとはいえない。しかし、現代国際社会においては、個別国家の利益だけでなく国際社会全体の利益の実現が求められるようになり、そのために諸国が協力する必要がますます高まっている。たとえば、平和の実現、地球環境の保全、南北問題の克服、人権の保障などを考えてみよう。これらは個々の国家だけでは解決し得ない地球的な問題群であって、その解決に資することが現代国際法にも求められている。このような国際社会に生じた新たな必要性が諸国にたいしてさまざまな形の合意形成を促し、その結果、現代国際社会には、より普遍的な国際法秩序が形成されつつある。
 他方で、現在の国際社会は不安定化しつつあり、ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争の際限のない武力行使、憎悪にもとづくテロとそれへの報復、目を覆いたくなるような人権侵害、力に依拠した対外政策、事実や歴史を軽視し相手の立場を考えない言説が顕著になっている。そのようなときこそ、国際法の無力をいたずらに嘆くのではなく、その機能、意義、限界を冷静に直視することが重要だろう。
 以上の観点から、本講義では、国際法の歴史および現代国際法の主体について概説する。しばしば授業中に質問をし、意見を求めるので、履修者はそのつもりで授業に臨むこと。なお、任意のレポートの提出を受けつけ、それを評価のさいに考慮に入れる。

科目目的

国際法の歴史を学び、現代国際法の主体を把握することを通じて、この法の全体構造を理解する。なお、本講義は国際法総論2(秋期)とセットになっている。

到達目標

(1)国際法の構造的特徴について、その背景・原因を含めて他者に説明できるようになること。
(2)平和の実現、地球環境の保全、人権の国際的保障、文化多様性の保護などの国際社会共通の課題を、さまざまな視点から分析・考察し、それらを実現するための道筋を提示できるようになること。

授業計画と内容

01 国際社会と法(1)現代国際社会の一般的性格
02 国際社会と法(2)国際法秩序の存在とその特殊性
03 国際法の歴史(1)国際法の成立
04 国際法の歴史(2)伝統的国際法の構造
05 国際法の歴史(3)現代国際法の形成
06 国際法の歴史(4)日本の国際社会への参加
07 国際法の主体(1)国家(国家領域:領域の範囲、取得、確定、変動)
08 国際法の主体(2)国家(主権の属性:国家の国際法人格/国家管轄権)
09 国際法の主体(3)国家(主権の属性:国家の形成/国家承認と政府承認)
10 国際法の主体(4)国家(主権行使の制限:第三国・外国人の権利の尊重/自決権)
11 国際法の主体(5)国際組織(国家の国際組織への作用)
12 国際法の主体(6)国際組織(国際組織の国家への作用)
13 国際法の主体(7)個人(権利主体としての個人:人権の国際的保障)
14 国際法の主体(8)個人(義務主体としての個人:国際犯罪と個人)

授業時間外の学修の内容

指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと

授業時間外の学修の内容(その他の内容等)

 国際法判例百選(有斐閣)、判例国際法(東信堂)、国際条約集(有斐閣)などを通じて、国際法の具体的把握に努めること。また、授業中に配付する資料をよく読み、かつ、そこに挙げられた文献にできるだけ目を通すこと。
 社会現象は多面的であり、そこには法、政治、経済、社会、歴史、文化といったさまざまな側面がある。法的側面をしっかり把握することは、多面的社会現象を深く理解し、問題の解決を見いだすための必要条件である(十分条件ではないことに注意)。
 実学としての法学:現代社会の政治、経済、文化の大量現象を処理し、多様化した人間の欲求を整序していくために法技術は不可欠。そうした技術としての法学を学修することは、他の法分野と同様、国際法においても重要である。
 虚学としての法学:国際法学にかぎらず、法学は法技術の修得に尽きるものではない。自らの立場を相対化し、事象を多面かつ根本的に認識する態度・方法を修得することも、大学における法学教育の大切な役割である。そこにおいては、法の論理と機能の解明を通じて、自分の依拠する前提・常識を疑い、自己を相対化する視点を獲得することが求められる。
 国際法がかかわる問題には身近な問題も少なくない。これらの問題について、自己の偏見を自覚しつつ、他国・他者の主張の是非を冷静に判断するためには、国際法の理解とそれを通じての「自己の対象化」という知的訓練がぜひとも必要。授業を通じて、また、授業以外の場で、そのような態度を身につけてほしい。

授業時間外の学修に必要な時間数/週

・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。

成績評価の方法・基準

種別 割合(%) 評価基準
期末試験(到達度確認) 100  春学期末試験による(100%)。評価基準は次のとおり。問いにたいして論理的・説得的に解答しているか? 具体例を挙げているか? 授業で話したことがらに言及しているか? 独自の視点を有しているか?
 

成績評価の方法・基準(備考)

 春学期末試験以外に、本科目に関連する学内・学外講演会、学会報告、外国人研究者を招いての特別講義への参加を促し、それらについての任意のレポート提出を受けつけ、成績評価のさいに考慮する。すなわち、学期末試験の答案が合格点に少し足りない履修者が、適切な任意レポートを提出していた場合、合格と評価することがあり得る。

課題や試験のフィードバック方法

授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う

課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)

アクティブ・ラーニングの実施内容

実施しない

アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)

授業におけるICTの活用方法

実施しない

授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)

実務経験のある教員による授業

いいえ

【実務経験有の場合】実務経験の内容

【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容

テキスト・参考文献等

 講義はノート形式で行う。ただし、以下の2つの書物には頻繁に言及する。
*松井芳郎『国際法から世界を見る ‐ 市民のための国際法入門』東信堂、2011年。
*松井・佐分・坂元他著『Sシリーズ 国際法 第5版』有斐閣、2007年。
 条約集(有斐閣、三省堂、東信堂他の最新版)は必携。

 参考文献は以下のとおり。
*国際法学会編『国際関係法辞典』三省堂、2005年。
*松井・山手・香西他編『判例国際法』東信堂、2006年。
*別冊ジュリスト『国際法判例百選 第3版』有斐閣、2021年。
*大沼保昭編『21世紀の国際法 多極化する世界の法と力』日本評論社、2011年。

 その他は講義中に適宜指示する。また必要に応じレジュメを配付する。

その他特記事項

 上の「履修条件・関連科目等」に挙げた諸科目のうち、「日本外交の法と政治1・2(外交の現場から)」は、外務省の現役外交官が講師となって交代で授業を担当し、日本外交が直面している重要な外交案件を最新の資料を用いて扱うという魅力的な科目である。将来外交官になりたい諸君はもちろんのこと、日本外交についてより深く勉強したい人は、ぜひ履修されたい。

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