シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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商法Ⅱ | 2025 | 前期複数 | 月4,月5 | 経済学部 | 水島 治 | ミズシマ オサム | 3年次配当 | 4 |
科目ナンバー
EC-OL3-02IIX
履修条件・関連科目等
1、履修条件
本科目の履修条件として、特定の科目を履修していることは求めません。
ただし、このことは「勉強しなくても授業が理解できる。」とか、「何もしなくとも、単位がとれる。」といった趣旨ではありません。この点に留意して履修判断して下さい。
2,講開始時までに学修していることが望ましい、または並行して履修することが望ましい関連科目
商法I
3,講開始時までに学修していることが望ましい、または並行して履修することが望ましい関連分野
(1)会社法
(2)民法(特に不法行為法)
(3)財務会計(特に金融商品取引法会計)
(4)企業金融(コーポレート・ファイナンス)
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
<学位授与方針と当該授業科目の関連>
この科目は、現実把握力(経済学の専門知識及び社会・人文・自然科学の知識教養に裏付けられた広い視野に立った柔軟な知性に基づき、現実の経済現象を的確に把握することができる)の修得に関わる科目です。
<概要>
1,講義の目的
この授業は、以下の2つの事項を主たる目的としています。
(1)金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)を初めて学習する学生を対象として、金融商品取引法における開示規制や業者規制等に関する基本的な制度的枠組み及び解釈上の論点の解説をすること。
(2)金融商品取引法が前提する法令(特に会社法及び民法)について、金融商品取引法の理解に必要な範囲で、必要な知識の復習をすること。
2,取り扱う範囲
(1)この授業では、金融商品取引法を網羅的・平板的に取り扱うというよりは、経済学部の学生が社会に出た時に必要とされるであろう範囲(開示、インサイダー規制、投資やその勧誘に関する規制)を中心的に取り扱います。
(2)金融商品取引法における刑事罰や課徴金に関する規制については、刑法や行政法等を履修していない学生がほとんどであることを踏まえて、必要な限りで扱うこととします。
(3)金融商品取引法に付属する政令や金融庁のガイドライン等については、必要最低限度の取扱いとすることとします。
3,授業の水準・速度
(1)水準
金融商品取引法は、前提とする法令の範囲が極めて広く、かつコーポレート・ファイナンスや財務会計等の法律学以外の知識も当然の前提とされて作られている法律です。このため、法学部でも3年次以降の配当科目として位置づけられることが多い科目です。直感的に言えば、法学部における六法科目の標準的な授業水準で金融商品取引法の授業の水準を設計した場合、一般的な法学部1・2年生のレベルでは金融商品取引法の授業を履修して単位取得するのは、おそらくかなり難しいでしょう。
しかし、この授業については、法律学を初めて学習する学生向けに、法学部での授業であれば「これ、やっているでしょ。」と説明が割愛されるような内容も説明する形で、かなり初歩的なレベルまで授業の水準を引き下げします(大学の講義水準としてどうかという気もしますが、そこまで下げないと経済学部の学生には難しいと思います。)。このため、公認会計士や証券外務員その他の資格試験の関係で金融商品取引法や会社法をある程度学習している学生にとっては、この授業は「退屈なレベル」かもしれません。
(2)速度
講義の速度も、かなりゆっくりめにします。ただし、板書をしながら、六法で条文を大量に引く作業が求められます。また条文が非常に長くて読みにくいので、履修者は講義中かなり忙しいと思います。講義の速度がゆっくりであるということと、「講義中は暇である。」というのは違います。
4,そのほか
講義の節目(第15回を予定)に試験形式の問題演習(60分程度)を実施する予定です。ただし、試験ではありませんから、受験しなくとも評価との関係で特段の影響はありません。あくまでも初学者に対するトレーニングと理解して下さい。
科目目的
この授業の目的は、授業の概要1で示した事項を履修者に達成してもらうことにあります。
到達目標
この授業の到達目標は、以下のような点を学生が身に付けることにあります。
1,学生が金融商品取引法の条文を読んで、その内容や基本的構造を自分で抽出することができるようにする(たとえば、学生が、金融商品取引法における開示規制等の制度的枠組みを、条文にそって理解してもらう。)。
2,学生が金融商品取引法で登場する有価証券や金融商品、あるいは開示書類がどのようなものかを理解し、それがコーポレート・ファイナンスや会計学その他法律学以外の学問分野との関係で、どのような位置づけになっているかを理解する。
3,金融商品取引法の規定に違反する行為を行った者が、どのような法的責任を負うのか、またその要件はどのようなものかについて、学生が理解し、具体的事例において責任の有無が判断できるようにする。
授業計画と内容
シラバス作成時点において使用するテキストが確定していませんので、あくまで授業の予定・目安であり、実際には前後する可能性があります。
第1回 金融商品取引法の学習の準備
1,ガイダンス
2,法令における1条の形式
3,金融商品取引法1条の構造
4,金融商品取引法の規定の法的性質
第2回 有価証券(1)
1,法律学における有価証券の概念
民事法上の有価証券、刑事法上の有価証券、有価証券以外の証券
2,金融商品取引法における有価証券:金融商品取引法2条1項
3,金融商品取引法における有価証券の特徴
第3回 有価証券(2)
1,有価証券表示権利
2,金融商品取引法2条2項各号に定める権利
第4回 有価証券(3)
1,金融商品取引法におけるデリバティブ取引(金融商品取引法2条20-23項)
2,金融商品取引法における金融商品及び金融指標(金融商品取引法2条24・25項)
第5回 発行開示(1)開示総論
1,開示制度の意義と目的
2,開示制度の分類
(1)法定開示と任意開示
(2)発行開示と継続開示
3,有価証券の発行における金融商品取引法と有価証券の根拠法との関係
4,適用除外有価証券(金融商品取引法3条)
第6回 発行開示(2)発行開示
1,有価証券の募集又は売出しの届出(金融商品取引法4条)
2,有価証券届出書の提出(金融商品取引法5条)
3,有価証券の募集又は売出しの概念(金融商品取引法2条3項・4項)
第7回 発行開示(3)
1,有価証券の募集又は売出しの届出の効力
2,目論見書(金融商品取引法15条)
第8回 発行開示(4)
1,刑事責任
2,民事責任(金融商品取引法16-22条)
3,課徴金
第9回 継続開示(1)
1,有価証券報告書の提出(金融商品取引法24条)
2,半期報告書・臨時報告書(金融商品取引法24条の5)
3,確認書及び内部統制報告書(金融商品取引法24条の4の2、24条の4の4)
第10回 継続開示(2)
1、自己株券買付状況報告書(金融商品取引法24条の6)
2,親会社等状況報告書(金融商品取引法24条の7)
第11回 継続開示(3)
1,刑事責任
2,民事責任(金融商品取引法24条の4、金融商品取引法24条の4の6)
3,課徴金
第12回 公開買付け(1)
1,意義・機能
2,金融商品取引法の制度設計の特徴
3,公開買付けの強制(金融商品取引法27条の2)
第13回 公開買付け(2)
1,公開買付けの手続(金融商品取引法27条の3)
2,開示書類
第14回 公開買付け(3)
1,実体的規制(金融商品取引法27条の4-27条の8)
2,法的責任
3,大量保有報告書(金融商品取引法27条の23)
第15回 問題演習とその解説
第16回 会社関係者の禁止行為(1)
1,インサイダー取引規制(金融商品取引法166条)の意義と目的
2,会社関係者
3,重要事実
4,禁止される行為
第17回 会社関係者の禁止行為(2)
1,公開買付者等関係者の禁止行為(金融商品取引法167条)
2,法的責任
(1)刑事責任
(2)民事責任
(3)課徴金
(4)短期売買差益の返還義務
第18回 相場操縦規制(1)
1,相場操縦規制(金融商品取引法159条)の意義と目的
2,相場操縦の禁止とその例外
3,相場操縦の種類
第19回 相場操縦規制(2)
1,刑事責任
2,民事責任(金融商品取引法160条)
3,課徴金
第20回 その他の不公正取引規制
1,包括的禁止(金融商品取引法157条)
2,日本国憲法との関係:罪刑法定主義
3,要件
第21回 投資勧誘規制(1)
1,投資勧誘規制の意義と目的
2,虚偽情報・断定的判断の提供の禁止(金融商品取引法38条)
3,適合性の原則(金融商品取引法40条)と説明義務(金融商品取引法37条の3-37条の5)
第22回 投資勧誘規制(2)
1,標識及び広告に関する規制(金融商品取引法36条の3-4)
2,不招請勧誘の禁止(金融商品取引法38条)とその例外(金融商品取引法39条)
3,その他
第23回 投資勧誘規制(3)
1,損失補てんの禁止(金融商品取引法39条)の意義と目的
2,要件
3,金融商品取引法39条違反の効果
(1)補てん約束の私法上の効力とその根拠
(2)法的責任
第24回 投資家と金融商品取引業者(1)
1,金融商品取引法における投資家の区分
2,外務員(金融商品取引法64条-64条の9)
第25回 投資家と金融商品取引業者(2)
1,金融商品取引業(金融商品取引法2条8項)
2,金融商品取引業者の法的地位:問屋契約(商法551条~555条)
3,金融商品取引業者の登録と認可(金融商品取引法29条・29条の2、50条)
4,金融商品取引業者に対する行政監督(金融商品取引法51条)
第26回 投資家と金融商品取引業者(3)
1,金融商品取引業の区分(金融商品取引法28条)
2,第一種金融商品取引業者
3,第二種金融商品取引業者
4,投資助言・代理業
5,投資運用業
第27回 投資家と金融商品取引業者(4)
1,金融商品取引業者の業務範囲(金融商品取引法35条)
2,役員及び主要株主対する規制(金融商品取引法31条の4)
3,経理及び財務上の規制(金融商品取引法46条)
第28回 到達度確認
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
毎日、株価を確認して下さい(https://nikkei225jp.com/cme/)。証券や金融に興味のない人は、この授業を履修しないことを勧めます(そうした学生にとっては、この授業は本当につまらない話だと思います。)。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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その他 | 100 | 最終講義試験(到達度確認)の点数のみによって評価します。なお、第15回「問題演習」とは別のものであることを明確にするために、このシラバスでは、便宜上「最終講義試験(到達度確認)」と表記することとします。 |
成績評価の方法・基準(備考)
1,最終講義試験(到達度確認)の問題形式や試験時間その他の実施内容については、必要な時期に適宜説明することとします。
2,出席はとりません。また、授業内小テストやレポートその他の最終講義試験(到達度確認)以外の課題を出す予定はありません。
3,最終講義試験(到達度確認)の点数以外の要素は成績評価において一切考慮しません。これは、単位及び成績は、最終講義試験(到達度確認)の点数という結果に対して付与すべきものであって、平常の努力や態度に対して付与するものではないと考えるからです。
このため、以下の点に留意して下さい。
(1)最終講義試験(到達度確認)を受験しなかった学生については、評価の対象とはしません。「期末試験(到達度確認)と勘違いしていました。」といった弁解についても、同様の取扱いとします。
(2)「講義は毎回出てノートもとっていたが、最終講義試験(到達度確認)の点数がとれなかった。特別レポートなりで救済して欲しい。」旨の依頼には応じません。また、就職活動や課外活動その他の事情を理由とした特別な取扱いもしません。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
1,テキスト
金融商品取引法は令和5年及び令和6年に改正があった関係で多くのテキストで改定が予想されます。しかし、シラバス執筆時点において、どのテキストが改定され、それがいつ刊行されるか講義担当者には分かりません。古い版のテキストを指定して、講義開始後にテキストの買い換えを求めるという方法もありますが、履修者の経済的負担を考慮すると控えるべきであろうと考えます。
このため、テキストの指定については、以下のように取り扱うものとします。
(1)シラバスではテキストを指定しません。
(2)テキストは第1回の授業で説明します。
(3)第1回及び第2回の授業は、テキストがなくとも履修できるような措置を講じます(manaba等に資料をアップロードするなり、必要な対応は担当者側でします。)。
2,指定テキスト以外の使用
指定テキストは購入を強制するものではありません。
予備校テキストその他の書籍を使用したいという判断は尊重します(「金融商品取引法」というタイトルのテキストなら、基本的な内容は同じです。)。「このテキストでいいか判断できない。」という場合には、授業の時に現物を持参してもらえば、こちらで大丈夫かどうか判断します。
ただし、以下の点には留意して下さい。
(1)1でも説明したとおり、法改正でテキストの内容が変更されるので、刊行時期が古いテキストは避けて下さい。
(2)指定テキスト以外のテキストを利用する場合には、講義の順序とテキストの記載の順序が齟齬する可能性があります。その点のフォローについては、各自の責任においてして下さい。
3,六法
この授業は法律学の授業ですから、六法の持参は必須とします。
ただし、金融商品取引法は小型の六法では一部しか掲載されていない場合が多いです。法令データの提供システム(https://laws.e-gov.go.jp/、https://hourei.net/law/323AC0000000025)などを利用するなり、条文をコピーしてくるといった対応をする方がいいかもしれません(ただし、試験でPC等の利用を許与する趣旨ではありません。)。
その他特記事項
1,履修者間における公平の問題もありますから、評価に関する個別の交渉や対応はしません。
2,この授業は2コマ連続を予定しています。履修する学生は大変かと思いますが、担当者も配慮しますので、頑張って下さい。
参考URL
法令データ提供システム(https://laws.e-gov.go.jp/)
法令リード(https://hourei.net/law/323AC0000000025)
金融庁(https://www.fsa.go.jp/)
EDINET(https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/WEEK0010.aspx)
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