シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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法曹演習 | 2024 | 秋学期 | 金3 | 法学部 | 田中 宏 | タナカ ヒロシ | 1年次のみ | 2 |
科目ナンバー
JU-LA1-003S
履修条件・関連科目等
開講までに、民法の財産法分野について、「一通り目を通していること」がのぞましい(無論、完璧な理解を求めるものではなく、教科書や教材等で一通り概観した程度でよい)。演習が始まったら,積極的に教科書や判例集を確認することが必要である。
教材の提供、課題提出は、全て大学のmanabaを使用する。
教材をダウンロード・印刷したり、Word形式で文書を作成してアップロードすることは演習参加の必須事項である。
なお,教材等を紙に印刷することは必須ではないので,演習中に電子機器(スマートフォン,タブレット,PC等)を参照することは何の問題も無い。
★司法試験(予備試験)については,2026年からパソコンを使用しての試験実施に向けて準備がなされているので,早い段階でパソコンでの文書作成になれておくことが望ましい。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
【授業方式】
原則として全て面接授業を行う。ただし,感染症対応で面接授業が禁止される等やむを得ない事由によりオンライン方式をとる場合は,webexを使ったリアルタイム型授業とする。また個別事情により面接授業への参加ができない場合(本人または家族の感染症罹患による外出制限・ワクチン接種後の副反応等)がある場合にはオンライン方式による演習参加を認める。
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【演習内容(1)民事紛争処理方法の概観】
演習のはじめの2回で,モデル的な民事紛争事件を掲げ,その事件が実務ではどのように解決されていくのかについて概観する。その際,民法における当事者間の法律関係が,裁判においてどのような意味合いを持つのか,民事訴訟法がどう機能するかについて,おおまかなイメージを掴んで貰う。この2回は私からの講義の方式を基本とし,適宜指名して発言を求める。
【演習内容(2)】事例研究
その後の12回は,各種の民事紛争事例(ただし,単に,実務上のノウハウ的な問題ではなく,あくまで民法の基礎的な考え方が中心的問題となっているもの)を素材とした課題を検討する。
課題のいくつかについては,事前検討課題(紛争事例に含まれる民法上の基礎的な知識を問う設問に関して各自の検討結果をまとめたもの)を提出して貰い、演習当日は各自の検討結果を前提として質疑応答を行う。演習後に検討結果に基づいて,まとめ的な解答案を完成・提出してもらい、1つのテーマが完結する。概ね2コマで1つの課題を検討する。提出された課題等については,全て,添削・コメントを付けて返却する。
【教材の提供方法・課題提出方法について】
問題の提示・解答の提出や添削課題の返却には、大学のmanaba(授業支援システム)を用い、紙媒体でのやりとりは行わない。課題への解答等はWordファイルで作成し、教員とmanabaを介してやり取りできることが、受講の必須要件となる。なお、この要件は、法学部棟の情報処理教室を使用することや貸出しパソコンを使用することで概ね充たされるし、タブレットやスマートフォンでもWord形式のファイル作成等は可能である。学生個人でインターネット接続のできるパソコンを保持することを要求するものではない。
【演習における学生の参加方法】
演習の際には,基本的に私と学生との間の問答で進めていく。いわゆる輪番報告(複数名の学生の合議で1つの課題を検討させて順次報告させること)は行わない。
演習時間中に端末を使用して検索を求める等の作業は行わないので,演習に際しての電子端末の携行は必須ではない。もちろん各自が教材・条文・判例等の検索のために端末を使用することは望ましいので,演習時間中であっても,持ち込んで活用されることは問題ない。
科目目的
民法(主として財産法分野)の紛争事例を素材として、民法解釈の基本(判例・学説の概観)を確認するとともに、その紛争が裁判所で審理判断されるとしたら、紛争当事者はどのような訴訟活動を行うことになるかについて考察できる力を育成することを目標とする。
弁護士は、依頼者である紛争当事者の代理人として相手方と対峙するが、そこで使う武器は法律である。相手に勝つためには、手持ちの武器の特性を知る(民法の基礎知識を磨くこと)とともに、適切な場面でその武器を出して使う(民事訴訟法の基礎知識を磨く)ことが必要である。
この演習では、その「基本」を伝授する(特に民事訴訟法の領域に関しては、上級学年で本格的に学習するテーマであるから、あくまで手ほどきにとどめる)。
到達目標
1 紛争事案を分析し,事実関係(時系列・当事者関係)を正しく把握できること。
2 紛争当事者の要望に添った法的解決のため,実体法上の請求権・それに必要な事実を列挙し,当該事案においてその要素が満たされているかを判断できること。
3 民法で学習する判例・学説を,2の検討にあたって,特定の立場に固執せずに使い分けることが出来ること。
授業計画と内容
第1回 ガイダンス(自己紹介・演習の進め方の説明),民事紛争の基礎(請求と主張)
第2回 民事紛争の考え方の基礎(主張と立証,裁判所における争点整理)
第3回 民法総則分野(主として意思表示)の問題を含む事例(前半)
第4回 民法総則分野(主として意思表示)の問題を含む事例(後半)
第5回 物権法分野(主として総論・所有権・担保物権)の問題を含む事例(前半)
第6回 物権法分野(主として総論・所有権・担保物権)の問題を含む事例(後半)
第7回 契約法分野(主として売買契約における履行不全)の問題を含む事例(前半)
第8回 契約法分野(主として売買契約における履行不全)の問題を含む事例(後半)
第9回 契約法分野(主として契約の解除・賃貸借等)の問題を含む事例(前半)
第10回 契約法分野(主として契約の解除・賃貸借等)の問題を含む事例(後半)
第11回 債権総論分野(主として債権譲渡・債務の消滅)の問題を含む事例(前半)
第12回 債権総論分野(主として債権譲渡・債務の消滅)の問題を含む事例(後半)
第13回 民法全般にわたる問題点を含む事例(ある倒産事件を素材として)(前半)
第14回 民法全般にわたる問題点を含む事例(ある倒産事件を素材として)(後半)
第3回から第12回までは分野と主要なテーマを記載してあるが,この領域以外の問題が出てこない,ということではない。現実の紛争は複雑なので,他の分野にまたがることは充分あり得る。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
課題の該当分野について、民法の教科書・判例集等で基礎知識を確認し、課題については、自分の力で文章化すること。
提出課題については、所定の期限を設定するので,その期間内に提出することを求めるが,期限を経過した後も受けつける。また,添削課題の書き直し等にも対応する。
なお、予習復習等で困り事がある場合には、どんな小さいことでも、遠慮せずに教員宛に連絡を取ること。
(例:単位認定要件の課題提出ができないまま,何の相談もなければ,E評価とせざるを得ない)。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 30 | 問の要求する観点・視点・記述方法等にそって,検討がなされていること。 |
平常点 | 70 | 講師の発問に対して積極的に回答すること(最初から正しい答えを求めているわけではない。問に答えようという姿勢を維持することが肝要である)。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)/ディスカッション、ディベート
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
各種財産法に関する紛争事例(意思表示・代理権・不動産所有権・賃貸借契約等)について,裁判,裁判外交渉による解決の経験がある。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
各種財産法に関する紛争解決を経験していることから,弁護士が,「学説の客観的正当性」だけではなく依頼者にとって有利な法律構成という観点から,どのような法的主張をするか,そして裁判になった場合に,どのような事実を主張・立証するか,という観点から事案を検討する。
テキスト・参考文献等
【テキスト】特定の本は使用せず、教材は、全てmanabaで配布する。なお六法(各自が学部講義等で使用しているものでよく,特段の指定はない)は必携。
【参考書】(ともに電子書籍あり)
1 民法
潮見佳男「民法(全)(第3版)」有斐閣 2022年(ISBN 978-4-641-13885-8)
一人の著者が民法全体(家族法も)について著述しており,1冊にまとまっているため,使いやすい。
初学者の導入にも,試験直前の総まとめにも使える本である。
残念ながら著者が2022年8月に急逝され、今後の改訂がどうなるか見えないところはあるが、現時点では最新の情報が盛り込まれており、使用には問題なし。
2 要件事実論★予備試験に焦点を当てている人向け
岡口基一「ゼロからマスターする要件事実」ぎょうせい 2022年(ISBN 978-4-324-11179-6)
この演習のコンセプトでもある「民法が民事裁判でどう機能するか」を基礎から丁寧に説明した本。
その他特記事項
【後期開講直後の懇親会について】
大学からの規制がかからない限り,後期開講後できるだけ早い時期に,演習参加者の親睦を図るために懇親会を行います。その連絡のために,演習選抜に合格した人は,速やかにメールしてください。
【見学について】
教室演習の他、講義期間外になりますが、法廷傍聴・弁護士会見学・事務所見学等を予定しています。
(状況によっては,オンラインになる場合もありますが、2022年・2023年は対面で実施しました)
その他不明点は、hiroshi-tanaka@mtf.biglobe.ne.jp宛にメールで問い合わせてください。
略 歴
昭和57年3月 中央大学法学部法律学科卒業
平成3年10月 司法試験合格
平成4年4月 司法研修所 入所(46期)
平成6年4月 弁護士登録(第二東京弁護士会)(現在に至る)
平成13年4月 中央大学法学部講師(平成17年3月まで)
平成16年4月 大宮法科大学院大学教授(平成27年9月まで)
平成17年4月 中央大学法科大学院講師(平成31年3月まで)
平成28年4月 中央大学法職講座講師(現在に至る)
平成29年4月 中央大学法学部講師(現在に至る)
平成31年4月 中央大学法科大学院客員教授(現在に至る)
自己紹介
中央大学が駿河台から多摩に移転した当時の1期生です。40数年後に都心に戻ってくることになりました。平成13年から4年間、法曹演習の前身である司法演習を担当し、その経験をもとに法科大学院で専任教員として10年間民事法を担当しました(現在も中央大学法科大学院で教え続けています)。平成26年から法職講座を担当し、平成29年からは学部の演習に復帰しました。学部教育については,10年前より歳はとりましたが、法科大学院における法学教育の経験は積んだので、その経験を活かして、実務家の道具としての民事法の手ほどきができればと考えています。
弁護士としては,民事事件を幅広く取り扱っており,金銭請求・不動産明渡し・詐害行為取消し・損害賠償請求・離婚等,民法分野の訴訟や訴訟外の紛争解決を担当するほか,会社の顧問弁護士として,契約書のチェック,作成,社内での紛争解決のための聴き取りや提言などの業務も行っています。
所属(本務先):曙綜合法律事務所(平成6年4月より途中名称変更を経て,現在に至る)
本名(tanakah)でTwitterをやっています。私の実態が見えるかも(学生さんからフォローされても,原則としてフォローバックはしません(学生さんからの希望があればフォロバします))。