シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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専門総合講座B1 バイオテクノロジーと生命倫理法 | 2024 | 秋学期 | 金5 | 法学部 | 天田 悠、大石 正道、古田 裕清、松石 和也 | アマダ ユウ、オオイシ マサミチ、フルタ ヒロキヨ、マツイシ カズヤ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-OL3-026L
履修条件・関連科目等
高校で生物(特に遺伝子関係)が好きだった人、ぜひどうぞ。好きでなかった人でも、関心ある方はもちろん歓迎です。遺伝子科学は20世紀後半以降、研究が急展開で進み、今では遺伝子組み換え食品、医薬品製造、環境浄化技術からiPS細胞や難病治療など先端医療技術に至るまで、広く社会で実用化されています。こうした技術的応用と法律は多面的な接点があります。特に、ヒトの遺伝情報はヒトの設計図に相当します。なので、当然、プライバシー権や人間の尊厳などを通して憲法民法刑法、更に技術ですから知的財産法など、法学部の専門領域の極めて多くの科目と関連します。実定法科目の応用領域だと思ってください。生命倫理全般に関心がある人にもおすすめです。倫理学の授業で生命倫理の概論を履修した上で本科目を履修すると、発展的展開になります。並行して履修すべき科目としては、本科目にご登壇の天田先生が春学期にご担当の法学特講「医療と法」を強くおすすめします。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
バイオテクノロジーは生命工学と訳されます。現代ではとりわけ遺伝子(ゲノム)関連の先端技術を指します。医療だけでなく食品や洗剤、廃棄物処理など様々な仕方で我々の生活と関連しています。憲法、民法、刑法、情報法、知的財産法など、様々な法領域と横断的に接点があります。その概要と問題点を理解し、ご自身の将来の社会生活に活かしてください。
科目目的
遺伝子組換え、ヒトゲノム解読、ゲノム編集など、現代のバイオ関連技術の進歩には目覚しいものがあります。食糧増産や疾病治療などにつながるメリットがある半面、生態系のかく乱や人間の遺伝子改変、遺伝情報漏洩による差別問題など、恐ろしい結果にもつながりかねません。新しい技術のメリットとデメリットを熟知した上で必要に応じて法規制をかけるのは、科学者・技術者ではなく、法律家・社会科学専攻者の仕事です。本講義はバイオテクノロジーの現状とこれに対応する法制度や判例の現状、及びその問題点を広く紹介します。これらを知ってもらった上で、自ら問題意識をもって調査・考察していく姿勢を養っていただくことが目標です。
到達目標
「科目目的」欄に記載したことと重なりますが、
バイオテクノロジーの現状を正しく認識すること、
これを規制する法制度や判例の現状についての知見を持つこと、
これら法制度や判例では技術の発展においついていない部分が多々あることを知った上で、これを改善するためにどのような方向性があるかを知り、自分自身はどの方向性を支持するか、熟慮すること(すぐに結論は出ないかもしれないが、現代社会の課題を認識し、問題として温め続けていくことが重要です)。
授業計画と内容
第1回~第4回:大石(北里大学理学部、生物物理専攻)、クイズを出しながら高校の生物の授業内容に上乗せする基礎知識を解説します。
第1回 バイオテクノロジーの生物学的基礎
第2回 ゲノム編集技術について、生物学の立場から見た生命倫理問題
第3回 遺伝子組み換え技術と遺伝子組み換え農作物・食品の功罪
第4回 筋ジスなど難病治療関連技術と倫理的・法的問題(遺伝子差別、優生学など)
第5回:古田(中大法学部、哲学・倫理学) 大石先生のお話のまとめと法律との関連を敷衍
第6回~第9回:松石(弁護士、中大ロースクール非常勤講師)、皆さんの先輩にあたります。
第6回 民事法実務における生命倫理問題
第7回 医療過誤訴訟(因果関係)
第8回 医薬品開発と治験(人体実験)
第9回 倫理委員会の役割について
第10回~第12回:天田(香川大学法学部、刑法)、本学では法学特講「医療と法」の授業もご担当です。
第10回 脳死と臓器移植(臓器移植法)
第11回 安楽死・尊厳死(尊厳死法案、安楽死判例など)
第12回 ヒト胚の法的位置づけ(クローン技術規制法など)
第13回~第14回:古田
第13回 ヒトゲノムの倫理的・法的・社会的諸問題(個人情報保護法など)
第14回 ヒトゲノムに関する国際法的対応(世界ヒトゲノム人権宣言など)
登壇順・登壇回数は非常勤の先生方のご都合に合わせて変更があり得ます。
授業時間外の学修の内容
授業終了後の課題提出/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
毎回、授業後に質問感想をmanabaレポート機能を使って提出してもらいます。
■準備学習について■
特に必要ありませんが、自分で上記参考文献や独自に探し出してきた文献を読み込んで教員に質問してもらうのは大歓迎です。事前学習よりも事後学習に力点を置き、授業で聞いた話をきっかけとして自分で調査し末永く考えていっていただきたいです。この授業が取り上げる問題領域には、正解がありません。その時代その時代で都度、変化する事実関係を把握しながら、皆であるべき法制度を吟味構築し続けねばならない問題領域です。そのための手ほどきをしますので、がんばってください。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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平常点 | 100 | 毎回の質問感想提出による。提出することそのもの、および書かれた内容を、それぞれ評価する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
毎回の提出物は、短い文章しか書かなかった人と、長く自分の考えや疑問点を敷衍して記してくれた人とでは、当然、評価に差が出てきます。また、出席して教員の話に耳を傾けてくれた人と、出席せずにレジュメだけ読んで質問感想を提出する人との間でも、評価に差が出ます。この点、ご承知おきください。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
質問感想に対しては次回授業で教員から直接フィードバックします。足りない分はmanabaを通して、あるいはメールのやり取りなどでフィードバックします。
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
大石先生は理学部でPCR検査などを実際に行っておられます。
松石先生は弁護士で、様々な医療機関などで倫理審査委員会委員もお勤めです。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
実務経験をそのまま授業で話してくださいます。
テキスト・参考文献等
各教員がレジュメ等を使って話しますので教科書の指定はありませんが、全体を紹介したテキストとして甲斐克則編『レクチャー生命倫理と法』(法律文化社、2010年)、もう少し新しいものとして天田先生が本学「医療と法」の授業でお使いの教科書である甲斐克則編『ブリッジブック医事法』第2版(信山社、2018年)を挙げておきます。現代社会において発生している生命倫理法の諸問題を法律学の立場から俯瞰するコンパクトな教科書で、お手元においておくと便利で有益です。これ以外に、入門的で有益かつ手ごろな参考文献として
橳島次郎 『先端医療のルール』 講談社現代新書 2001年
石井哲也 『ゲノム編集を問う』 岩波新書 2017年
石原理 『生殖医療の衝撃』 講談社現代新書 2016年
米本昌平 『バイオポリティクス』 中公新書 2006年
などがあります。一部は古いですが、全体の概要を伝える手ごろな入門書としては古びていません。技術はどんどん進化しており、毎年たくさん関連本が出版されているので、他にもたくさんあります。必要に応じて授業中に言及します。もっと専門的な文献もたくさんあります。関心がある人は授業後に質問してくれたら口頭でお答えします。