シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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政治学特講1 イタリアの政治哲学で考える現代政治(生政治と例外状態) | 2024 | 秋学期 | 金2 | 法学部 | 中村 勝己 | ナカムラ カツミ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-PS3-031S
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
「生政治と例外状態」というテーマ設定で、新型コロナ・ウイルスの流行に規定された現代政治の変容について考える。ただし、この4年間ほどの動きを時系列に沿って振り返ったり、ウイルス対策のワクチン接種について技術的に考えたりするものではない。あくまでも政治学・憲法学・非常事態論などに即して政治の変容を原理的に考察するものである。
科目目的
この科目を履修し学習することで、現代世界において全面化している「生政治」について考察することができ、しかも時代は「生政治(バイオポリティクス)」から「死の政治(ネクロポリティクス)」へと移行しつつある点についても考えることが出来るようになる(ことが望ましい)。
到達目標
プリントに紹介されている文献を自分で(あるいは友人たちと協力して)読めるようになること。
授業計画と内容
① ガイダンス 秋学期12回の授業の説明
② フーコー① 生権力/生政治
③ フーコー② 生権力と統治性
④ チポッラ 公衆衛生局
⑤ シュミット① 独裁と例外状態
⑥ シュミット② 主権者の決断主義
⑦ レポート課題 レポート課題の提出
⑧ ロシター 立憲独裁
⑨ 小林直樹 国家緊急権
⑩ 芦部信喜 憲法制定権力
⑪ アガンベン 例外状態
⑫ アガンベン=ナンシー論争
⑬ ムベンベ ネクロポリティクス
⑭ レポート課題 レポート課題の提出(総括・まとめ・到達度確認)
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
プリントに挙げられている参考文献を図書館で検索し、読んでみることを推奨する。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 70 | 2回のレポート課題の内容により成績をつける。成績全体(100%)のうち、1回目のレポート課題で35%、2回目のレポート課題で35%、平常点を30%で評価する。 |
平常点 | 30 | 授業に臨む姿勢を評価して決める。 |
成績評価の方法・基準(備考)
2回のレポート課題の内容により成績をつける。成績全体(100%)のうち、1回目のレポート課題で35%、2回目のレポート課題で35%、平常点を30%で評価する。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
特定のフィードバックは行っていないが、授業時間内に質疑応答の時間を必ず設けるなど理解が進むよう工夫している。
レポート課題は manaba で提出するものとする。
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
私は、授業で紹介するイタリアの政治哲学者、ジョルジョ・アガンベンとアントニオ・ネグリの著作の翻訳・紹介にこの10年ほど携わってきた。その実務が授業に反映するはずである。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
上記2人の文献をプリントに引用する際には、原書における表記と照らし合わせたうえで引用をした。とはいえ、これは上記2人の著作だけではなく、ドイツ語(カール・シュミット、カール・レーヴィット、ヨッヘン・ブライケンら)からの引用でも、フランス語(ミシェル・フーコー)からの引用でも、英語(クリントン・ロシター)からの引用でも常にやっていることであるが。
日本は学術書に関しても翻訳大国であり、古典も現代の研究書も邦訳があり、とても助かるが、時にはおかしな訳文・訳語も散見される。西欧政治思想史を研究する者・学ぶ者は、極力、原典にも当たることが望ましい。私は、学術書翻訳に携わる者として、学生の皆さんにそのことを強調したい。
テキスト・参考文献等
以下は、すべて授業で使うレジュメに引用したり言及した参考文献であり、教科書ではない。
ジョルジョ・アガンベン『例外状態』上村忠男・中村勝己訳、未來社
――『ホモ・サケル――主権権力と剥き出しの生』高桑和巳訳、以文社
――『アウシュヴィッツの残りのもの――アルシーヴと証人』上村忠男・廣石正和訳、月曜社
――「エピデミックの発明」高桑和巳訳、『現代思想』2020, vol.48-7所収
――「感染」高桑和巳訳、『現代思想』2020, vol.48-7所収
――「説明」高桑和巳訳、『現代思想』2020, vol.48-7所収
――『私たちはどこにいるのか?――政治としてのパンデミック』高桑和巳訳、青土社、2021年
芦部信喜『憲法制定権力』東京大学出版会
上村忠男『アガンベン《ホモ・サケル》の思想』講談社
大江志乃夫『戒厳令』岩波新書
大林啓吾編『コロナの憲法学』弘文堂
尾高朝雄『〔新版〕法の究極に在るもの』有斐閣
小林直樹『国家緊急権――非常事態における法と政治』学陽書房
アベ・シィエス『第三身分とは何か』稲本・伊藤・川出・松本訳、岩波文庫
カール・シュミット『憲法論』阿部照哉・村上義弘訳、みすず書房
――『政治神学』田中浩・原田武雄訳、未來社
――『危機の政治理論』長尾龍一ほか訳、ダイヤモンド社
――『政治的ロマン主義』大久保和郎訳、みすず書房
――『政治神学』長尾龍一訳、『カール・シュミット著作集I』所収
――『独裁――近代主権論の起源からプロレタリア階級闘争まで』田中浩・原田武雄訳、未來社
――『カール・シュミット著作集I』長尾龍一編訳、慈学社
ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄――1万3000年にわたる人類史の謎』(上)倉骨彰訳、草思社文庫
ヤーコプ・タウベス「カール・シュミット――反革命の黙示録を書く男」杉橋陽一訳、『批評空間』1994-II-2号所収、太田出版
カルロ・M・チポッラ『シラミとトスカナ大公』柴野均訳、白水社
――『ペストと都市国家――ルネサンスの公衆衛生と医師』日野秀逸訳、平凡社
中山元『フーコー生権力と統治性』河出書房新社
成瀬治・黒川康・伊東孝之『ドイツ現代史』山川出版社
ジャン=リュック・ナンシー『侵入者――いま〈生命〉はどこに?』西谷修編訳、以文社
――『世界の創造あるいは世界化』大西雅一郎・松下彩子・吉田はるみ訳、現代企画室
――「ウイルス性の例外化」伊藤潤一郎訳、『現代思想』2020, vol.48-7所収
――「あまりに人間的なウイルス」伊藤潤一郎訳、『現代思想』2020, vol.48-7所収
――『あまりに人間的なウイルス――COVID-19の哲学』伊藤潤一郎訳、勁草書房、2021年
アントニオ・ネグリ『構成的権力――近代のオルタナティブ』杉村昌昭・斎藤悦則訳、松籟社
フーコー『監獄の誕生――監視と処罰』田村俶訳、新潮社
――『性の歴史I――知への意志』渡辺守章訳、新潮社
――『社会は防衛しなければならない コレージュ・ド・フランス講義1975₋76年度』石田英敬・小野正嗣訳、筑摩書房
――『安全・領土・人口――コレージュ・ド・フランス講義1977₋78年度』高桑和巳訳、筑摩書房
ヨッヘン・ブライケン『ローマの共和政』村上淳一・石井紫郎訳、山川出版社
ウルリッヒ・マンテ『ローマ法の歴史』田中実・瀧澤栄治訳、ミネルヴァ書房
森功『官邸官僚――安倍一強を支えた側近政治の罪』文藝春秋
カール・レーヴィット「シュミットの機会原因論的決定主義」、シュミット『政治神学』(未来社)所収
クリントン・ロシター『立憲独裁――現代民主主義諸国における危機政府』庄司圭吾訳、未知谷
Achille Mbembe, Politiques de l’inimitié, Editions La Découverte, 2016
Achille Mbembe, Necropolitics, Duke University Press, 2019.
アキーユ・ンベンベ「ネクロポリティクス――死の政治学」小田原琳・古川高子訳、『Quadrante』第7号、2005年
『現代思想』2020, vol.48-7,「緊急特集*感染/パンデミック」2020年5月号、青土社