シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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独占資本主義論 | 2024 | 前期複数 | 水3,水4 | 経済学部 | 東 浩一郎 | アズマ コウイチロウ | 3年次配当 | 4 |
科目ナンバー
EC-TE3-05XX
履修条件・関連科目等
「マルクス経済学」を履修していることが望ましいですが、2024年度は「独占資本主義論」が前期開講、「マルクス経済学」は後期開講なので、並行履修ができません。そこで、資本主義経済の基礎理論として4回にわたってマルクス経済学の基礎をご紹介します。初学者やマルクス経済学を履修したが理解が不十分だった方も積極的に受講してください。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
<学位授与方針と当該授業科目の関連>
この科目は、現実把握力(経済学の専門知識及び社会・人文・自然科学の知識教養に裏付けられた広い視野に立った柔軟な知性に基づき、現実の経済現象を的確に把握することができる)の修得に関わる科目です。
<概要>
レーニンは『帝国主義』の中で、帝国主義は資本主義発展の最後の形態であるとともに戦争を不可避とすると述べています。そして帝国主義の経済的基盤は独占資本にあります。2023年はまさに戦争の年でした。パレスチナ問題は宗教対立ではなく、資本主義経済の発展過程において大国の利害によって引き起こされたものです。
現代資本主義経済の1つの特徴が「独占」です。しかも特徴の1つといっても、独占は、他の特徴と並列されるものではなく、他の特徴にもつながる全体の基礎に置かれる概念です。しかも独占は、単に完全競争の対立概念として競争的な市場をゆがめるものにとどまりません。独占資本の運動は、資本蓄積や再生産構造にも影響を与えるものだからです。そして時には戦争にも結びつきます。
本授業では、前半に独占資本主義のさまざまな理論を考察し、後半は現実の資本主義経済にどのようにあらわれているのかを見ていきます。
現実の資本主義経済は、2008年の「リーマンショック」に見られるような不安定な様相を呈し、情報技術の革新(IT化・AI化)に伴う社会構造の急激な変化がそれに拍車をかけています。日本においては、国際競争の激化や産業の空洞化、少子高齢化を背景として、賃金の低下や雇用の不安定化などを通じた経済的な格差の拡大と貧困層の増加が進行しており、いずれも深刻な課題となっています。さらに近年は、物価上昇が私たちの生活に深刻な影響を与えています。
本授業を通して、皆さんが、現代資本主義の諸課題を表面的に評論するのではなく、独占資本主義の理論を通して論理的に理解し、自ら考える力を培っていただけることを期待します。そして、本授業が、少しでも平和な社会の実現に寄与するものとなることを願っています。
科目目的
現在の経済社会における諸問題について自らの頭で考え、また自らの言葉で語るための基礎的な知識や技法を身につけてもらうことを目指します。
到達目標
1. 独占資本主義の理論を理解する
2. 現代経済の諸課題を理解する
3. 理論と現実を結びつける力を培う
授業計画と内容
0.ガイダンス・導入(2回)
1.講義の進め方と授業概要の説明
2.現代資本主義の対象と方法:資本主義とはどのような社会なのか
Ⅰ.資本主義社会の歴史的変遷(2回)
3.資本主義社会の生成と発展:唯物史観、価値法則
4.独占資本主義の形成:重商主義、自由主義、帝国主義
Ⅱ.資本主義分析の基礎理論(4回)
5.商品の価値と労働:商品の二要素と労働の二重性
6.資本の運動:労働力商品化と剰余価値の生産
7.利潤率傾向的低落法則:技術革新が及ぼす影響
8.景気循環と恐慌:資本主義経済の必然としての恐慌
Ⅲ.独占資本主義の理論(8回)
9.独占価格:完全競争市場と独占市場
10.独占における均衡:クールノー均衡、シュタッケルベルク均衡
11.価格の硬直性:屈折需要曲線、フルコスト原理
12.独占企業の戦略:参入阻止価格等
13.株式会社:資本の集中と集積
14.金融寡頭制:独占資本による経済の支配
15.資本蓄積:資本蓄積様式の変化
16.長期不況:独占とインフレ・デフレ
Ⅳ.国家独占資本主義の理論(4回)
17.独占資本主義における国家の役割①:国家の市場への介入
18.独占資本主義における国家の役割②:労働力の包摂
19.独占資本の国際的展開:多国籍企業の社会的役割について考える
20.帝国主義の不均等発展:戦争を不可避とする体制
Ⅴ.現代資本主義とその展開(8回)
21.有効需要創出政策の意義と限界
22.新自由主義の展開
23.バブルの発生と崩壊
24.リーマンショックと現在の恐慌
25.雇用の非正規化と新たな貧困
26.現在の労働環境資
27.持続可能な発展は可能なのか
28.総括:資本主義の未来
※なお、状況に応じて内容を一部変更する場合があります。あらかじめ了承ください。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
・理論と現実を結びつける力をつけるため、日常的に新聞やニュースに触れてください。
・本講義はマルクス経済学を基礎としていますが、他の経済学(ミクロ経済学、マクロ経済学)と常に比較しながら議論を進めます。ミクロ経済学、マクロ経済学の基礎を理解しておいてください。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 100 | ・専門的な用語や内容に対する理解度 ・適切な説明や論理展開 |
成績評価の方法・基準(備考)
期末試験(100%)
・持ち込不可
・選択問題90%、記述問題10%
普通に受講していれば60点は取れる試験を作成するので、過度に心配する必要はありません。
なお、試験結果が60点に満たなかった場合に限り、授業後のレスポンを加味し10点加点します(おおむね3分の2提出していれば加点対象とします)。
レスポンを加味しても単位取得水準(60点)に達しない場合は、別途レポートを課します。ただし、レポートは単位取得水準に達している場合だけ受理します。レポート提出=単位取得、ではないので注意してください。
課題や試験のフィードバック方法
その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
試験終了後、manabaに解答例を提示します。
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
毎時間、前回のレスポンに対する回答を行うことで双方向性を確保します。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
(テキスト)
なし。毎回、講義資料を配布します。manabaにアップするとともに授業時に紙でも配布します。PC、タブレット、スマホなどで表示・編集することができるので、紙の資料は受け取らなくてもかまいません。
(参考文献)
レーニン『帝国主義』(岩波文庫、大月文庫など)
久留間健『資本主義は存続できるか』(大槻書店、2003年)
長島誠一『現代の景気循環論』(桜井書店、2006年)
山田鋭夫『さまざまな資本主義』(藤原書店、2008年)
北村洋基『現代社会経済学(改訂新版)』(桜井書店、2013年)
斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書、2020年)
その他特記事項
・私語は授業妨害なので厳しく注意します。
・独占資本主義にはさまざまな見解があります。授業でも異なった視点からの諸説を比較しながら紹介するので、混乱しないようできるかぎり出席するようにしてください。
※ 授業は出席することが当然なので、出席点はありません(欠席による減点もありません)。