シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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スモールビジネス論 | 2024 | 春学期複数 | 月4,木2 | 商学部 | 砂川 和範 | スナガワ カズノリ | 3・4年次配当 | 4 |
科目ナンバー
CM-MN3-33XL
履修条件・関連科目等
Web登録科目です。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
人は多様性を内包する生き物といえます。仕事・家庭・地域参加・社会貢献等々さまざまな「顔」を持ち、多面的な知的社会活動を営んで生きているはずです。一方で、私たちが身を置く企業組織は、効率性を重視するあまりに、ともすれば多様性を抑制し、ひとつの「顔」で生きることを強いるときがあります。それが結果として、人間の幅を狭め、深みを失わせることになってはいないでしょうか。
人として、こころ豊かに生きるためには、多様な「顔」を内側から支え、バランスよく駆動させる「人間力」が必要であると考えています。人間力は、知性,感性、身体の三つの要素から構成され、人間のあらゆる知的社会活動において発揮される立体的な総合力といえます。
豊かな人間力を持つことは、近代の始まり14世紀にイタリアで花開いたルネッサンスの理想でもあります。自らの基軸を形成し、発想を豊かにし、異質な他者への理解を促進し、失敗や挫折への耐性となるはずです。
以上の問題意識に基づき、この授業では、経営学を軸に、単にそれにとどまらず、関連する、歴史、哲学、芸術、都市、家庭、音楽、遊び、学校などまで広げた方法や対象をもとに身体論、社会学、文化人類学、サイエンス(経営学もサイエンスのひとつ!)など、多彩なテーマを絡め、事例と理論を交えながらじっくりと現代的なビジネスの課題を学びます。
「憶える」ことよりも「感じる」「考える」機会を提供することが目的です。「知る」を楽しみ 「観る」を培い 「感じ」て、「学んで」くださる機会としてください。
また、この授業には、以下の3点のねらいがあります。
①温故知新
古いものがあらゆる意味で優れているわけではない。新しいものが必ずしも良いわけでもない。新しいものには改良される余地があり、古いものには再活用される要素がある。古き良きものを鏡とし、現代の課題を映し見ることで、新しき良きものを創り成していきたい。
②名著との対話
時代を経て読み継がれた名著、多くの人の感動を呼んだ良書を随時、大量に紹介していくブックガイドをおこなう。それらの著作には、われわれが社会の中でより良く生きていくためのエッセンスが詰まっている。関心をもったテーマやトピックについて、担当教員による問題提起や議論の調整、解説に導かれながら、自由な雰囲気の中で思索と議論を楽しんでください。
③現代の眼
日本が抱える課題を考える時、その俯瞰的視野は宇宙規模の広がりを持たねばならないだろう。地球を巨大なシステムとして認識し、そのサブシステムとして人類の営みを位置づけたうえで、経営現象、最先端のサイエンスの動向と示唆、テクノロジーと技術・技能、アート、環境、地域、都市、家庭、消費文化、サブカルチャー、大学、etc. 現代の我々が直面しているさまざまな問題から考えたい。
そのうえで。
時代が大きく変わる移行期にあるといえる現在、スモールビジネスをめぐる議論は、経営学のなかでは新しく多様な視点が試される先端的領域といえます。そこでは、小さい企業や市場を考えるという単なる「規模の問題」についての議論だけではなく、さまざまな新しい領域や問題のなかで取り組まれている企業がもつ「質的な問題」の違いの意味について考える必要があります。つまり「スモールビジネスという切り口」から過去と未来を考えてみるというスタンスがなければ、この科目が設置されている意義を理解することにはなりえません。"Small Business, Large Concern."これがこの講義のメッセージです。
これまでスモールビジネスが、社会的にどうとらえられてきたかを端的にあらわすのが中小企業基本法です。現在の基本法は、1999 年中小企業基本法改正を基にしています。それは36年ぶりに基本的理念の根本的な転換をもとに制定から全面改正された経緯があります(講義担当者は、中小企業庁の委員として、かつて、その一端に携わった経緯もあり、その基本法改正過程にまつわる議論などをふまえて、みなさんと近未来を考えていくことを目指したいと思います)。
旧基本法の政策思想では、戦前から続くいわば病理解析モデルとしての「二重構造モデル」であり、競争制限的な手法がとられていました。一方で、新基本法はスモールビジネスが持つ独自のメカニズムと役割に着目した競争政策への転換といえます。そこではセイフティーネットに着目したうえで、起業や創業を積極的に評価し、再挑戦の可能性を保証する方向への制度変革を目標としていました。しかし、その新中小企業基本法も現在、再検討がなされる状況にあります。このようなスモールビジネスの経営をとりまく問題背景の変容過程を理解するため、従来、大企業システムを前提としていた経営学の世界ではあまり取り上げられなかった要素を、さまざまな隣接領域の概念を用いて説明してみるビジネスの思考実験が有効となります。
以上の前提のもと、本講義は、以下にしめすような7つの相対的に独立したテーマからスモールビジネス現象にアプローチしていきます。体系構成的というよりは、相対的に独立しつつも相互関連する7テーマからの問題提起的な構成をとっています。
1. スモールビジネスという対象をとらえるモデルの変遷と事例
2. 場所と空間性がビジネスにもつ意味
3. 「社会ネットワーク」(社会関係資本)という新しい考え方
4. 家族システムとビジネス・システムの深い関わり
5. 観光学を手がかりとした「持続可能性」概念(sustainability, SDGs)とビジネス
6. 消費と創造性(クリエイティブ・エコノミー)
7. サイエンスと実学的知識、経営思想と経営哲学
以上の7テーマのような新しい問題は、先端的領域としてのスモールビジネスから議論が可能ですが、その際に、経営戦略論や組織論のみならず、経済社会学や経営学の隣接領域である都市社会学や家族社会学、文化人類学、民俗学、経済学、地理学、観光学などとの境界領域に存在します。各分野のど真ん中では議論されにくい大事なテーマが、境界領域には存在します。方法論的探究もさかんで、こういった領域横断的に存在している現象に対しては各領域の方法をクロスオーバーさせながら問題に肉薄していくことが要請されます。また、そこでは、まだ答えが定まっていない重要なテーマも多く、いろいろな見解がせめぎあう世界でもあり、レディメイドで標準化された教科書を学ぶようにはいかないといえます。
たとえば社会問題をビジネスの力で解決し非営利組織とはまたことなる高い収益を上げる「ソーシャルイノベーション」や「シビックエコノミー」というような存在があります。誰もが市民企業家として参加できるような従来の企業や政府、あるいは家族の問題だけでは解けない地域に根差した新しい市場の担い手としてのスモールビジネスです。その担い手たらんとする諸君は、どのような知識を手がかりとしていけばいいのでしょう?
一方で、従来の経営学や経済学の延長で考えていくとしても「企業の外部に他企業とシェアする経営資源を蓄積し利用するさまざまな戦略や「シェア経済」のような試みも珍しいものではなくなってきました。さらに、こういった時代のながれは、地域を変えるデザインを通じた「まちづくり」や「創造都市」、「サードプレイス」などのコミュニティシップを考慮しないと従来型の企業と政府だけでは多様化し細分化された市場を創っていくことができなくなりつつあることを意味します。
またスモールビジネスに期待されているのは、たんに新しい経営環境に適応したサバイバルのみではありません。むしろ新規事業創造の担い手として、新しい市場環境の特性にフィットした産業組織・経営組織の開発、経営戦略の策定の主役としての役割なのです。例えば、コンテンツ制作や芸術・デザインのマネージメント、建築・都市開発、まちづくりなどの領域が、スモールビジネス論の対象となりはじめています。
またグローバル化した市場のなかでローカルに行動する「グローカル」な小さな企業ということを考えたい場合、対象となる現象と視点の双方が必要となります。幅広い領域での多様な新しい現象がスモールビジネスの題材となりますし、そこにどういう視点で切り込むか、という模索も幅広い領域から応用を試みなければ、現在の経営学を乗り越えていくことができません。それは、「大学でビジネスを学ぶこと」の意味は何か、それは、世界で、日本で、どのような思想的・歴史的背景のなかで発展してきたか、それはどこへむかっていくのか?という近未来を構想することにもつながっていくでしょう。
以上の計画に基づき、受講生のみなさんが自由に思考するための素材となる視点や現象を幅広く紹介しながら、系統的な解説を行います。
科目目的
この科目は商学部カリキュラム上の商学部分野別専門科目経営系に位置付けられています。
経営学科目のなかで、スモールビジネスに固有のトピックについて講義するとともに、スモールビジネスを舞台にした様々な経営現象のもつ普遍的な問題について経営学から考える。また各トピックの内容に応じて関連する隣接領域の内容についても紹介解説を行う。例えば、社会学、文化人類学、経済学、地理学、観光学など。
到達目標
科目目的・到達目標
1.基本的な問題状況を理論、政策、歴史のかかわりで解説する。
2.スモールビジネスという実体的対象があると考える前に、スモールビジネスという視点にたって企業や市場、組織現象を考察することの面白さを理解する。
授業計画と内容
(1)イントロダクションー本講義の全体構成とコンセプト
(2)スモールビジネスの現状と捉え方から
■テーマ1「スモールビジネスを見る基本的視点と事例」
(3)スモールビジネスを捉えるモデル (1):二重構造と産業集積
(4)スモールビジネスを捉えるモデル(2):モデルの有効性と限界
(5)産業集積のダイナミズム:大田区機械金属工業のケース(前編)
(6)産業集積のダイナミズム:大田区機械金属工業のケース(後編)
(7)問題提起的考察:「弱さの力」と「ネットワーク」
■テーマ2「場所と空間からみたビジネス」
(8)場所と空間: 産業集積から市場空間へ(1)
(9)流通過程と商業集積、市場プロセス論: 産業集積から市場空間へ(2)
(10)事例: 「秋葉原」のメカニズム
■テーマ3「スモールビジネスをめぐる現象と視点」
(11)「ネットワーク」という視点 (1)スモールビジネスのネットワーク戦略
(12)「ネットワーク」という視点(2)社会ネットワーク分析の基礎
(13)「ネットワーク」という視点(3) 複雑系ネットワークと「スモールワールド現象」
(14)ネットワーカーとしての企業家:イノベーション戦略論と技術の歴史社会学からみたT. エジソン
■テーマ4「家族とビジネスとの関わり」
(15)家族とビジネス (1) :ファミリービジネスの特徴と課題
(16)家族とビジネス (2) : 家族システムとビジネス
(17)家族とビジネス (3) :ビジネス創造を考える相関社会科学的考察
■テーマ5「持続可能性の多面性と観光」
(18)持続可能な観光開発と企業家精神(1)大井川鉄道の事例:衰退産業における事業創造
(19)持続可能な観光開発と企業家精神(2) :事例分析をめぐる経営理論的探究
(20)持続可能な観光開発と企業家精神(3) :事例分析をめぐる経営理論的探究
(21)持続可能な観光開発と企業家精神(4):事例分析をめぐる観光学的探究
(22)持続可能な観光開発と企業家精神(5):事例分析をめぐる観光学的探究
(23)“Mobilities”(移動):観光学の最先端と展望
■テーマ6「創造性とビジネス」
(24)創造的消費ー自動車から考える(1) :製品開発、デザインの歴史にみる成功と失敗
(25)創造的消費ー自動車から考える(2) :消費形態の多様性と創造性から考える
(26)創造的消費ー自動車から考える(3) :事例分析から「消費」概念を再考する
■テーマ7「科学とビジネスをめぐる歴史と思想」
(27)大学の機能変容ー実学の再考ー(1) :科学と市場、大学とビジネス
(28)大学の機能変容ー実学の再考ー(2) :「実学」思想の歴史と経営思想・経営哲学
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
近視眼的な実用的知識のみならず広い視野を滋養する歴史、思想哲学、社会科学的な問題関心を広く持つこと。
また日経四紙の新規事業創造・ベンチャービジネス・中小企業・スモールビジネスに関する記事に、常日頃から意識的にあたること。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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中間試験 | 35 | 授業において解説したトピックの理解度を確認するとともに、その応用力を評価する。また中間試験、60点以上の取得を評価の条件とする。 |
期末試験(到達度確認) | 35 | 授業において解説したトピックの理解度を確認するとともに、その応用力を評価する。また期末試験、60点以上の取得を評価の条件とする。 |
平常点 | 30 | 授業への参加度を評価する。中間、期末の各試験で60点の取得をクリアした受講生に対して平常点を加点します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
登録者数に応じてテスト(中間、期末)をレポート課題とする場合があります。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
講義資料を毎回manabaにて事前に配布します。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
〔テキスト〕
〔参考書〕
その他特記事項
〇利用するソフトウェアについて
出席確認については、Resonを使用します。
また課題出題・提出、授業についてのQ&Aなどについてはmanabaを使用します。