シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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貿易論 | 2024 | 春学期複数 | 月2,木4 | 商学部 | 榎本 俊一 | エノモト シュンイチ | 2年次配当 | 4 |
科目ナンバー
CM-MK2-21XL
履修条件・関連科目等
Web登録科目です。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
貿易は多様な現象であり、経済学、経営学、商学、法学など多面的にアプローチできます。経済学系の「貿易論」(国際経済論)では、国家間の財・サービスの移動に関するデータに基づき貿易構造・動態を分析しますが、貿易を動かす企業の個々の活動はマクロ分析の蔭に隠れてしまい、姿が見えません。また、国家間の財・サービスの移動は企業のビジネス活動(サプライ・チェーン・マネジメント)の一部に過ぎず、その意味はサプライ・チェーン全体の中で考察しなければ分かりません。本講義は、企業がサプライ・チェーンに貿易を如何に組み込み、グローバル・ビジネスを成り立たせているかを考えます。
1990年以降の「自由で開かれた国際貿易システム」では、多国籍企業が自由に最適地で事業活動を行い、グローバル・サプライ・チェーンを構築することで、世界経済の飛躍的成長が実現しました。多国籍企業のグローバル活動(サプライ・チェーン・マネジメント)が1990年以降の国際貿易の成長発展・構造変化をどのように惹き起したのか。多国籍企業はどのように貿易プロセスを含むグローバル・サプライ・チェーンをマネジメントし、企業戦略を達成しようとしているのか。また、企業のグローバル活動の自由を制度的に如何に守ったらよいのか。
さらに、貿易といえばモノ貿易だった時代は終わり、GAFAなどが推進してきたデジタル貿易が世界経済の牽引役として期待されますが、国際貿易を巡る課題はこの10年間で爆発的に増えており、本講義では、21世紀の国際貿易が直面する課題についてもフォローします。
科目目的
グローバル経済では、内需依存企業であろうと、海外市場と関係なくビジネスはできません。過去30年間の日本は、中国の目覚ましい台頭、米独の復活とは対照的に競争力を低下させ、世界市場で存在感を喪ってきました。今や先進国の地位からも滑り落ちつつある日本は改めて魅力ある商品・サービスにより、世界市場における競争を勝ち抜く必要があります。企業活動がグローバル化している中、企業には、貿易を含むグローバル・サプライ・チェーンをいかにマネジメントして、川下の顧客に新たな付加価値を提供するかが課題です。
本講義では、将来そうした課題を担う者に対し、貿易を貿易プロセス単体で考えるのではなく、サプライ・チェーン・マネジメントの観点から捉え直し、企業の総合的なビジネス活動を貿易プロセスを含め如何に進めるかを考える契機を提供するとともに、モノ貿易、デジタル貿易を含めて、貿易を巡る様々なイシューに関する基礎知識を提供します。
本科目は商学部カリキュラム上、分野別専門科目、商業・貿易/国際マーケティング系として位置づけられ、商業・貿易学科及び国際マーケティング学科では必修科目です。
到達目標
本講義では、以下を到達目標とします。
1 貿易の意義・メカニズムを経済理論に基づき説明できる。
2 企業活動における貿易プロセスの位置づけ、多国籍企業が貿易を含むグローバル活動を如何にマネジメントしているかを、サプライ・
チェーンの観点から説明できる。
3 1990年以降、グローバル・メーカーによる国際分散生産、工程間国際分業、国際水平分業はグローバル・サプライ・チェーンの在り方を
如何に変えたか、それがどのように国際貿易構造に影響したかを説明できる。
4 自由で開かれた国際貿易システムの維持発展におけるWTO等の役割と限界を理解した上で、多国籍企業がグローバル・ビジネス円滑化
のため如何にWTO等を活用しているかを説明できる。
5 国際貿易の推進役であるグローバル・メガ企業への規制が、なぜ国際貿易の発展に必要であるか、いかなる措置が採られているかを
説明できる。
6 デジタル貿易とモノ貿易の違い、プラットフォーマーのビジネス・モデルと経済的特性、デジタル貿易の発展に向けた課題を説明できる。
7 新技術や環境保護が貿易を含むサプライ・チェーン全体のマネジメントを如何に変えようとしているかを説明できる。
授業計画と内容
貿易論Ⅰ「モノ貿易」
(ガイダンス)
第1回 貿易と世界経済発展(時間的余裕があれば第2回内容も一部講義する可能性あり)
(第1群 貿易理論)
国家間で貿易がなぜ行われるのか。ある国がなぜ特定の製品を輸出するのか。伝統的な分業理論と異
なり、現実では工業国間で製品が相互に輸出される。なぜなのか。貿易に関する経済理論を学びます。
第2回 古典的な貿易理論 リカードの比較優位論、へクシャー・オ-リーンの要素比率論
第3回 新貿易理論:多国籍企業と産業内貿易
第4回 新々貿易理論:輸出企業等の限られる理由
第5回 貿易の利益
(第2群Ⅰ 多国籍企業と国際貿易)
多国籍企業が国際分業を推進し国際貿易を構造変化させる原動力です。多国籍企業がどのように国際
貿易を発展させ形作るかを、サプライ・チェーン・マネジメントをキー・ワードとして学びます。
第6回 多国籍企業:国際分業と国際貿易の構造変化の原動力
第7回 1990年代を分水嶺とする国際分業・国際貿易の構造転換
第8回 構造転換の原動力1:多国籍企業の国際分散生産
第9回 構造転換の原動力2:多国籍企業の企業内国際工程間分業、国際水平分業
第10回 貿易の新しい見方:付加価値貿易
第2群Ⅰのまとめ:多国籍企業のサプライ・チェーン・マネジメントと国際貿易構造
(第2群Ⅱ)
グローバル企業のサプライ・チェーン・マネジメントをケース・スタディします(括弧内は仮置きの例示である)。
第11回 グローバル企業の経営戦略とサプライ・チェーン・マネジメント 事例1(総合商社)
第12回 グローバル企業の経営戦略とサプライ・チェーン・マネジメント 事例2(UNIQLO、ニトリ)
第13回 グローバル企業の経営戦略とサプライ・チェーン・マネジメント 事例3(工作機械)
第14回 貿易論Ⅰのまとめ(到達度確認)
貿易論Ⅱ「21世紀の貿易」
(ガイダンス)
第15回 21世紀の国際貿易の発展に向けた課題(時間的余裕があれば第16回内容も一部講義)
(第3群 国際貿易システムの制度基盤)
1990年以降の自由で開かれた国際貿易体制により、世界は飛躍的な経済発展を遂げました。今後、自
由で開かれた国際貿易体制をいかに維持したらよいのか、WTOルール等を学びます。
■国際経済公法
第16回 WTO:自由で開かれた貿易システムの制度基盤
第17回 地域経済統合・FTA(自由貿易協定)
■グローバル・メガ企業支配の是正
第18回 多国籍企業の租税回避問題
第19回 グローバル・メガ企業に対する独占禁止法適用等
第20回 第3群のまとめ
(第4群 デジタル貿易)
20世紀までは貿易は即モノ貿易でした。21世紀には、モノ貿易に加えてデジタル貿易が登場し、世界
経済を牽引しようとしています。デジタル貿易、担い手であるプラットフォーマーはどのようなものな
のか、デジタル貿易を発展させるため何が課題なのかを学びます(括弧内は仮置きの例示である)。
第21回 デジタル貿易とプラットフォーマー
第22回 デジタル貿易に係るケース・スタディⅠ(GAFA vs. Other world)
第23回 デジタル貿易に係るケース・スタディⅡ(Alibabaとそのグローバル展開)
第24回 第4群のまとめ
(第5群 新技術・環境保護と国際貿易)
デジタル貿易だけでなく、IoT技術は貿易を含むサプライ・チェーン全体の在り方を変革してお
り、環境保護等の規制もサプライ・チェーン全体での対応を要求しています。
第25回 国際電子商取引
第26回 ブロック・チェーン技術、デジタル通貨
第27回 環境と貿易
第28回 貿易論Ⅱのまとめ(到達度確認)
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
教科書の刊行が春学期ではなく秋学期に延びました。貿易論の内容を、従来の国際経済論ではなく、商学・経営学科目として見直し続けていることから、教科書がある方が学習や試験対応では容易です。この点を踏まえた上で、(2023年度、春学期に履修者が著しく偏ったこともあり)秋にも履修できる学生には、春・秋学期の履修者数の均等化に協力いただければと思います。
「事前学習」としてレジメ・文献の講読(4時間)、「事後学習」としてレジメ・文献の再読及びノート整理 (2時間)が必要であり、授業が進むに応じて「群」単位で「知識・理解の確認・定着」のために講義全体の振返り(「群」単位で3時間)が欠かせません
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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中間試験 | 30 | 到達目標1~3について、授業における説明の理解度を記述式試験で問います。 |
期末試験(到達度確認) | 40 | 到達目標4~7について、授業における説明の理解度を記述式試験で問います。 |
平常点 | 30 | 基本的に質疑応答等による授業進行への寄与を評価。不定期であるが、複数回の小テストを行い、履修生の理解度を確認し、評価に反映する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
試験は持込み一切不可(教科書持込み可の秋学期と取扱いが異なります)。試験では、授業では教えていない、あるいは、授業と関係ないことを自由に創作される方がいますが、成績評価対象となりませんので御注意ください。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
2019年度以降、大学教員に転じて国際ビジネス、国際通商システム、デジタル・エコノミー等を担当するまで、1990~2018年度の約30年間、通商産業省・経済産業省において、行政官として産業政策、通商政策に取り組んできました。大学の講義は決して実務家の「経験談」ではありませんが、実地に見聞きし経験したことを踏まえて貿易論を講義したいと考えます。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
上記の通り。
テキスト・参考文献等
春学期に教科書の刊行が間に合わなかったため(9月初刊行予定)、2023年と同様にレジメにより授業を進めます。講義内容を、従来型の国際経済論ではなく、商学・経営学科目として見直し中であるため、教科書がある方が学習や試験対応では容易であり、秋にも履修可である学生には、春・秋学期の履修者数の均等化に協力をお願いします。いずれにしてもレジメはmanabaを通じて掲示しますので、授業前にコマメにチェックしてください。
その他特記事項
授業等に関連する事項はすべてmanabaを通じて連絡します。マメにmanabaを見るようにしてください。なお、ソフトウェアの利用は特にありません。