シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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民法概論 | 2024 | 秋学期複数 | 月5,月6 | 商学部 | 金井 憲一郎 | カナイ ケンイチロウ | 2年次配当 | 4 |
科目ナンバー
CM-OL2-91XL
履修条件・関連科目等
Web登録科目です。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
本講義では、法律学の中核であり、我々の日常生活の基礎法である民法、とりわけ民法典に焦点を当てて、その概要を講義形式により説示いたします。民法典は、その条文が1050か条にも及ぶ非常に範囲が広く、その内容も抽象的で、初学者の理解は相当に難しいものです。
そこで、概論たる本講義は、実質的には「民法入門」の講義であり、次のステップとしての民法学習への橋渡しであること、さらにいえば、民法の理解が商法等他の法律を理解するための前提となること等を重く見て、民法を法律学の入門としての領域であるとの認識に立ちつつ民法典における基礎概念、その体系的理解をしていただくため、以下に特に留意して講義することにいたします。
第一に、可能な限り具体的事例(判例の他最近問題となった民法における諸問題)を取り上げることで、民法のイメージをつかんでいただき、具体的事実について法的観点から当該問題を分析できるような授業展開に配慮することといたします。当該授業時点における民法に関する最新のトピック(改正の議論の動向)や事例等につき新聞報道等を踏まえ、お話しすることにより、それが当該授業とどのように関連するのか考えていただく時間を設定することを考えております。
第二に、これまでの履修者のアンケートを考慮し、民法解釈学の醍醐味を知っていただくことを目的としつつ、履修者にとってとりわけ関係することが多いと考えられる諸点につきポイントを絞って、典型かつ重要な解釈上の争いについても可能な限り言及いたします。
第三に、いわゆる債権法改正、実質的な「契約法改正」が行われることが決定し、2020年4月1日からその改正法が施行されました。他方で、相続法についても2019年から2020年にかけて改正法の施行がされましたし、いくつかの民法典の分野(家族法、物権法等の領域)でさらに改正が予定されております。
本講義では、そのすべてについて言及することは時間の関係で難しいですが、現行民法の初学者にとっても、その比較において特に重要と思われる論点については、可能な限り言及したいと思います。今日ほど、毎年のように民法典が改正される時代はないといってよく、そのダイナミズムについても言及したいと考えております。
科目目的
本科目は、商学部カリキュラム上の商学部分野別専門科目経済・法律系科目として位置付けられていることに鑑み、私法の一般法である民法につき、その改正動向に留意しつつ、民法典を中心にその規定全体を概観しつつ、主としてその基礎的諸概念の内容を把握することにより民法典を体系的に理解することをその目的とします。
到達目標
民法における重要な諸概念を取りあげることで、受講生が1050か条にも及ぶ民法典がどのような構造を有しているか理解し、向後さらに民法を深く学びつつ、民法の基本的な知識を前提として、本学の他の法律科目である、会社法、税法等の学習にスムーズに取り組むことができることを目標とします。
さらに、受講生が社会人となり、人生の様々なステージで遭遇するであろう法律問題の多くが民法の規律に関わることを知ることも当然その目標となります。
授業計画と内容
1、ガイダンス、民法とはなにか
2、私法上の法律関係はどのようにして決まるか、財産法と家族法
3、財産法の前提1ー財産法における基礎的概念
4、財産法の前提2ー財産法における基本原理と財産法の全体像
5、権利・義務の主体1ー権利能力、意思能力
6、権利・義務の主体2ー行為能力、法人
7、契約の成立、契約の客観的有効要件ー公序良俗
8、契約の主観的有効要件ー心裡留保、虚偽表示、錯誤、詐欺・強迫
9、消費者契約法
10、代理、条件・期限
11、債権の主たる発生原因としての契約、契約の効力ー同時履行の抗弁権
12、債権の消滅ー各種の弁済、相殺、消滅時効
13、債務不履行、強制履行、債務不履行による損害賠償請求権
14、契約の解除、契約不適合給付における買主の救済手段
15、受領遅滞、危険負担
16、強制執行、債権の対外的効力ー債権者代位権、詐害行為取消権
17、債権担保、人的担保、債権譲渡
18、物的担保、典型担保、非典型担保
19、物権的請求権、占有
20、物権変動
21、即時取得、取得時効
22、不法行為の成立要件
23、不法行為の効果、消滅時効
24、特殊な不法行為
25、親族法の全体像、婚姻、離婚、親子
26、相続法の全体像、相続人、相続の効力
27、相続の承認と放棄、遺言、最近の相続法の改正ー配偶者の保護へ向けて
28、全体の総括、権利の実現方法、これから深く民法を学ぶために
上記数字は、授業の回数に相当しているが、あくまでも予定であり、変更があり得ることにご留意ください。すなわち、本講義は2時限連続で行われることから、当該授業日において授業の進展次第により当初の予定から若干の内容の変更を行うこともある(例えば、当該授業日の5時限目に説明する予定を6時限目に行うこと、あるいはその逆等)ということです。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
事前にテキストを読んで授業に出席してください(当該箇所に条文が出てきた場合、その条文に当たることが求められます)。予習が重要です。細かい諸点に拘泥せず、広い視点で民法の全体を大きく把握することに意を用いてください。
また、教科書を読み始めの段階で、後半の授業でより説示のある概念も出てくることがありますが、その段階で先に読み進めなくなってしまうことは好ましくありません。わからなくても、どんどん先にテキストを読み進めることが重要です。後半においてより詳しい解説のある箇所において、前に出てきた当該事項があったと思い出されることが重要であります。
「テキスト学習の進め方」については、2019年12月に発刊された「法学教室471号」の35頁以下に分かり易い解説があります。法学部学生を対象にしているようですが、本講義の履修者にも非常に参考になると考えます。図書館等で一読されることをお勧めいたします。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 100 | 授業で説示した民法概論についての基礎を理解したうえで、期末試験問題における重要なキー概念を入れて整理し、文章としてまとめることができているかを評価します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
期末試験における成績を評価対象といたします(100%)。 期末試験は、論述試験の形式により実施します。第1回の授業では、これまでの期末試験採点雑感、その後の授業の受け方や試験への対処方法、持ち込み等(判例のつかない六法の持ち込みを認める予定ですので、当該六法への書き込みは不可、アンダーラインは認める等)についてコメントいたしますので、履修希望者は可能な限り第1回の授業に出席するようにしてください。
なお、2023年度も、可能な限り民法と関連する最新の日本で生起した社会問題、当該授業までに既に説示した事項を復習的に理解を確認するために質問を投げかけたりしながら、授業を展開しました。
いずれにしましても、試験については、授業に出席されている受講生に配慮した問題になることをご承知置きください。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
その他
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
出席受講生の数にも拠りますが、民法と関連する最新の日本で生起した社会問題、当該授業までに既に説示した事項を復習的に理解を確認するために質問を投げかけたりしながら、可能な限り対話形式も入れた授業を展開したいと思います。
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
特別なことはいたしません。時間の制約、履修者数にも拠りますが、可能な限り指名して双方向型の対話を行います。前回講義までの復習として基本概念の確認、当該講義までに説示した基本概念と実際に日本社会で生起した事件やニュースとの関連等に言及し、多摩キャンパス内教室の中での閉じられた民法ではなく、「日本社会における生きた民法」の運用の実際について議論することに意を用いることとしたいと考えております。
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
1997年4月より2008年3月まで、三機工業株式会社において、企業法務等総務、人事、広報、不動産、労働安全衛生等の業務に従事いたしました。企業法務では、取締役会や株主総会の諸事務手続き、社規の見直し、自社所有社宅の等価交換契約手続、労働災害に係る示談手続きを弁護士と行う等した経験があります。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
日本社会のいかなる場面で民法が解釈・適用され、実社会における諸問題は民法によりどのように解決されているか、反面において解決されない問題点としてどのような諸問題が残されているか等につき、企業で経験した具体例を織り込みながら、授業を展開したいと思います。法律に係る実務経験の基礎的知識には、民法のそれが欠かせないことを強調したいと考えております。
テキスト・参考文献等
本講義は、松久三四彦・遠山純弘・林誠司『オリエンテーション民法 第2版』(有斐閣、2022年)をテキストとします(ただし、上記で述べましたとおり、民法改正を反映した形で改訂版が出版されましたら、その新しい教科書を使用します。シラバスを2023年11月上旬に作成していますので、2024年9月中旬のことは出版社マターですので、わかりかねるからです)。ポケット六法令和7年版(有斐閣)等コンパクトな六法全書を用います(特に、本講義以外に他の法律科目を履修される方、公務員試験等の国家試験受験を予定しておられる方はポケット六法等により条文に十分に親しむ必要がありますので、購入してください)。最近は、民法典は、毎年のように法改正がなされておりますので、常に最新(令和7年版)の上記六法全書を準備してください(2024年9月に令和7年度版が出版される予定です)。
第1回目の講義から、上記テキスト、六法を用いて講義をしますので、ご留意ください。
その他当該授業のテーマに応じて、必要が認められる場合、資料を適宜配布することとします。
なお、参考文献は、適宜講義の中において紹介することにします。
その他特記事項
民法をはじめ、法律は社会の紛争を解決するために存在しています。加えて、民法は「日常生活における基礎法」でもあります。上記「達成目標」においても述べましたように、繰り返しますが、人が生まれてから死亡するまで、人生のあらゆるステージにおいて民法ほど関わる法はないといってよいくらいです。それゆえに、民法学は法律学の王様と言われており、あらゆる法律学の学習の出発点に位置する法領域です。
したがって、裁判例等民法に関する法律問題に関するニュースにつき、新聞、テレビ、インターネット等如何なる媒体でもかまいませんので(新聞を読むことがより望ましいですが)、日々関心を持ってそれらの情報入手に努め、自分の頭で考える習慣をつけてください。法律問題の生起する社会への関心がなければ、民法をはじめとする法律学の理解も困難であるからです。
授業では、時間の制約や受講生の数にもよりますが、前回までの授業内容を質問したり、当該授業に関連するタイムリーな法律問題等につき対話や議論をすること等も考慮したいと思います。
質問等があれば、その都度授業時間の前後で受け付けます。
民法概論は、授業の概要で述べたように、その性質は「民法入門」の講義です。民法の講義は、民法総則、物権、債権、親族、相続という民法典の五編に及び、多くの法学部においては、概ね5分割されてそれぞれが28コマでなされるものです。したがって、本講義は、自ずから5倍速で展開せざるを得ず、最重要と考える基本的概念を中心に、民法の全体構造を意識しつつ講義します。繰り返しますが、細かい点に拘泥せず、民法の全体構造とその把握のための基礎概念の説示に重点を置いて講義します。
最後に、「ソフトウェア利用なし」。