シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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化学2\化学Ⅱ | 2025 | 後期 | 木1 | 理工学部 | 米澤 宣行 | ヨネザワ ノリユキ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
SE-BC1-NZ06
履修条件・関連科目等
理系大学等に進学を希望する生徒が高等学校で履修するレベルの化学の授業を履修している,前期の開講科目「化学1\化学Ⅰ」を聴講した経歴を有している,あるいはそれに相当する知識を独自に獲得している,等を前提とする水準の講義を行います。授業開始前に,これらの科目等でカバーしている項目にどのようなものがあったか,例えば高等学校で用いた教科書の目次を見るなどして確認しておくことが望ましい。また,物理学についても,静電力(クーロン力)の式を用いて,実際の斥力・引力が計算できる程度の電磁気に関する基礎的な理解力を有していることも望ましい。なお,授業の後半の4回については,履修前に十分な概要の推測ができなくても気にしないこと。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
有機化合物は,炭素と水素を必須元素に,酸素,窒素,ハロゲン,リン,硫黄等の元素が絡んだ多種多様な構造と性質をもつ物質である。生命活動の鍵化合物の役割に加え,現代社会では,生活に不可欠なプラスチックス・繊維・フィルム等の高分子材料,食品,医薬品,さらに光電子材料等も多くの有機化合物が関わっている。科学・技術に携わる研究者・技術者にとっては頻繁に(常時)取り扱うことになる物質群である。この点から,研究者・技術者は有機物質の特性等をある程度理解して使用することが必須で,有機物質に関する基礎知識と考え方を修得して,生活者に要求されるよりも高いレベルの合理的・科学的な説明能力を身に着けることが求められる。本講義では,受講者が「有機化合物の構造」を見たとき「大体こんな性質だろう」と思い浮かべることができる「有機化合物についての物質観」を身につけられるよう,有機化合物の構造,構造の表記法と名前の付け方,物理的性質(物性),化学的性質(反応性,安定性等)の有機化学の基礎概念を論ずる。最初に原子と原子を結ぶ「化学結合」に関して,複数の原子核による電子の共有のもたらす安定化という定性的概念から分子軌道による整理の初歩を学ぶ。その後,基本的な物質群(脂肪族炭化水素,芳香族炭化水素,含ハロゲン有機化合物,アルコール・フェノール,エーテル,カルボニル化合物,カルボン酸誘導体,アミン)についての具体的な事例を学ぶ。さらに日常で関わり合いの大きい有機分子群および生体関連物質,有機・高分子構造材料,有機機能材料について物質の構造(分子構造と集合構造)と性質との関わり方の概要,有機化合物の機器分析についての基盤的な整理を行う。そして最終回において「化学物質のリスク管理」の概要を学ぶ。
科目目的
原子と原子の持続的な近接関係の発生としての化学結合の原則理解を踏まえた,基本的な有機化合物群についての各論学習を通して,有機化学・有機化合物の代表的かつ一般的な基本的事項の理解を試みる。授業導入部で有機化合物の名前の付け方と構造の描き方,有機化合物の化学反応挙動や物質の性質特徴についての視点・基本的な考え方等を整理して習得する。次いで,それを踏まえて代表的な化合物群の各論の学習を行うことで,有機物質をより合理的に,またリスクを低減させながら使いこなす応用的な思考力・理解力の基盤を形つくり,使用を重ねながら判断の質を高める方法を修得する。
到達目標
第一目標は,構造材料,特殊部材,デバイスの中で用いられる有機物質,また生体関連有機物質を中心に,日常生活で目に触れる有機物質に関して,物質や材料の成分についての情報あるいは使用上の注意点の情報が必要になったとき,有機化合物を特定した上で専門家やデータベースにその性質に関する相談をして必要な情報を入手する行動を遂行できる能力を身につけることである。
第二の目標は「有機化合物の構造に基いて」,有機物質を含む構造材料・天然および人工機能材料の物理的特性(物質そのものは変わらないで示す性質),化学的特性(物質の変化が伴って現れる性質=反応性)についてそれを大まかに予想かできるレベルの基盤能力を獲得することである。
そのために,有機化合物を「基本炭素骨格」と「官能基」の 二点から分類して名前をつけること,逆に名前から「分子の構造式」を「描く」ことができる,「有機化合物に関するコミュニケーション能力」を習得する。そして,有機分子の構造と性質について相関を考え起こす姿勢を修得する。
授業計画と内容
第1回 有機化合物の表し方;有機化合物の分類と命名;化学結合:原子の構造・原子軌道と分子軌道
第2回 有機化合物・無機物質・金属物質の構造と特徴の違い;大きな分子と普通の大きさの分子の比較;有機化学の学習に向けた基盤熱力学的事項;有機化合物の反応の分類と捉え方
*第3回以降,有機化合物の基本的な群(共通の構造をもつ物質の集団)について事例を学ぶ
・脂肪族炭化水素,芳香族炭化水素と置換基効果 (2回;第3,4回)
・含酸素有機化合物 (4回;第5〜8回)
・含窒素有機化合物 (2回;第9〜10回)
・生体系複合的有機化合物 (1回;第11回)
・高分子化合物 (1回;第12回)
・有機機器分析 (1回;第13回)
・化学物質のリスク管理と有機化合物の構造と命名のまとめ
第3回 脂肪族炭化水素 ハロゲン化炭化水素を含む
第4回 芳香族炭化水素と置換基効果
第5回 含酸素化合物の概論:炭素―酸素単結合および炭素―酸素二重結合を有する有機化合物群全般の構造的・酸化還元的比較と命名法の概要
第6回 アルコール,フェノール,エーテル,硫黄類縁体
第7回 カルボニル化合物 (1) アルデヒド・ケトンの化学と有機化合物の酸化・還元,糖
第8回 カルボニル化合物 (2) カルボン酸と炭酸とその誘導体,脂質
第9回 含窒素化合物
第10回 アミノ酸・ペプチド
第11回 核酸,補酵素,生体関連分子
第12回 ポリマー
第13回 機器分析
第14回 化学物質のリスク管理,有機化合物の構造と命名
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業前に提示される授業資料に目を通した上で授業に臨むこと。予習を中心に位置づけ,早めの復習を併せ,まとまった時間の学習を各授業回毎に2回行うことが望ましい。授業ではっきりしなかったことは,授業中に質問して解決すること。manabaを通すことも可能ですが,授業中の質問が高効率です。復習については,まず理解が覚束なかった項目や部分について「配布資料を中心に,必要に応じて参考書等を用いて」見直してください。できればその後に参考書の課題を「参考書の記述を基に自分自身のみで解いて」,次いで「他の文献等の情報などを調べて解き直す」という活動を,授業ごとに繰り返すのが望ましい。学習終了後に小テストに解答し,期限内に回答すること。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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平常点 | 100 | 各回の小テストに概ね70%以上回答していることを条件に,小テストの合計点数で判定する。小テストは各回の授業終了直後から約1週間回答できる設定とする予定にしている。 |
成績評価の方法・基準(備考)
各回の小テストは,選択式を大部分とする予定です。語句を記入する問題も出題する可能性も考えています。有機化合物の,共通的な物理的性質・化学的性質についての記述の正否,名称の妥当性などの問題を出題する予定です。
特に,第3回授業以降の有機化合物各論では,少なくとも各回1問(3問ないし4問中)は命名に関する問題とする予定です。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う/その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
解答結果の全体的傾向で補足が必要と判断したときには,基本的にmanabaのお知らせで通知する予定である。状況によっては後の回の授業内で解説を行うこともある。
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
毎回の授業は授業の前日までに公開する板書資料(pdf)を用いて行う予定です。ただし,著作権的な制限から,事前公開資料には含まず,授業時にのみ映すシートもあります。
授業で扱う項目の半分から60%程度は次の参考書の記述している項目と重なっており,この参考書の併用は効果的と思っています。
参考書(参考文献): 宮本 真敏・斉藤 正治,『大学への橋渡し 有機化学』,化学同人,2006年,京都,B5判,2,200円, 7(ISBN)9784759810219