シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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演習Ⅳ | 2024 | 秋学期 | 木2 | 商学部 | 井上 義朗 | イノウエ ヨシオ | 4年次のみ | 2 |
科目ナンバー
CM-IF4-14XS
履修条件・関連科目等
3年次配当の事前登録科目です。
演習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・論文はセット履修科目です。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
〔テーマ〕
現代経済学と社会的企業
このゼミでは、ミクロ経済学・マクロ経済学の知識をもとに、経済学に関する理解をもう一段階深め、さらに、経済学の対象である現実の経済が、いま大きく、どのように変わろうとしているかについて、「新しい働き方」と「新しい企業」を中心に、考えていきます。
みなさんは2年次に、経済学の基礎理論である、ミクロ経済学とマクロ経済学を学びます。これらは、経済学の基礎理論として十分な内容を持っていますが、経済学を実践的に活用していくためには、もう一段階、深いレベルの知識も必要です。演習Ⅰでは、ミクロ経済学・マクロ経済学(とくに、ミクロ経済学の)先端領域の1つである「メカニズム・デザイン論」について、その基礎となる部分を学びます。一見、図と数式のかたまりのように見えた経済学の知識が、臓器移植や学校選択などの現実問題に対して、どのように役立てることができるのか。実践的な学問としての経済学の姿がそこにあります。先端的な内容ではありますが、数学の知識はそれほど必要としません。
そしていま、経済社会は大きく変わろうとしています。とくに日本経済は、「新しい働き方」と「新しい企業」のあり方を求めて、大きな模索のなかにあるといえます。このゼミでは、この新しい動向を象徴するものとして、「社会的企業」という存在に注目します。社会的企業とは、これまでもっぱら公共政策の対象と考えられてきた、ホームレス問題、子どもの貧困や福祉の問題、エネルギー問題や町づくりといった問題について、あくまで民間の事業体として取り組もうとするものです。社会的企業は、社会的課題の解決を本業とするため、みずから利益をあげて自立することを目指します。しかし、こうした問題に営利目的で取り組むことには大きな弊害も予想されるため、利益をあげても、それを私的に分配することはしません。日本では、NPOの形態をとるものが大部分ですが、外国では、NPOとは別の法人形態を定めているところもあります。営利的な株式会社でもなければ、典型的なNPOとも異なる不思議な存在が、社会的企業です。なぜ、こうしたものが、21世紀に入って、世界中でほぼ同時に出現したのか。演習Ⅱでは、この問題に取り組み、夏合宿(実施の有無については、新型コロナウイルスの感染拡大状況を見て判断します)を使って、実際に、社会的企業を訪問します。現場の姿に学びながら、こうした新しい企業のあり方が、じつは、演習の初めから学んできた、経済学の本来の思想に近いものである可能性について、皆で意見交換をしながら、考えていきます。
経済学を正しく理解するには、経済理論をよく理解するとともに、経済の現実をよく知る必要があります。と同時に、経済学の思想や歴史についても学ぶ必要があります。経済は、生きている人間によって営まれるものですから、これを対象とする経済学も、一見、図や数式だけでできているように見えながら、図や数式のなかに、経済学を生み出した時代や人びとの、生きた思想が込められています。経済学の思想や歴史について学んでいくと、経済学がより身近なものに感じられるようになるとともに、経済学に対する理解がより深く、より正確なものになります。演習Ⅲでは、経済学の理解をこのような方向に深めるために、経済学の3巨星、すなわち、アダム・スミス、マルクス、ケインズの現代的な意義について改めて考えてみようと思います。
演習Ⅳでは、卒業論文の執筆に取り組みます。大学4年間を通じて学んできたことの総決算になるような、野心的な論文を書いてください。
科目目的
この科目は、カリキュラム上の「商学部アドヴァンスト科目」であり、商学部スタンダード科目及び商学部分野別専門科目の発展的な科目として位置づけされています。この科目での学習を通じて、主体的学習能力を習得することを目的としています。
この科目は、カリキュラム上の専門演習科目に位置づけられることから、演習ならではの討議やグループワークを通じて、経済学への理解を深めると同時に、現代企業の新しい動向に関する理解を通じて、現代経済の課題と、その進むべき方向性について、総合的な判断能力を身につけることを目的とします。
到達目標
この科目では、以下の点を到達目標とします。
・経済学の理論について理解を深め、理論内容を、自身の言葉で説明できるようになること。
・社会科学としての経済学という観点から、経済学の思想や歴史について幅広い知識をもち、それをめぐって他者と意見を交わすことができるようになること。
・現代の新しい企業の動向について、基礎的な知識を修得し、その背景と役割、予想される課題と解決の方向性などについて、総合的な判断力をもち、他者と意見交換できるようになること。
・以上の点を総合して、学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)が求める人材像において、特に「適応力・判断力・実践力」すなわち、「ビジネスをはじめとする様々な分野において、多様性を理解・尊重し、柔軟な適応力・総合的な判断力・確かな実践力を身につけ、他者と協働することができる」能力、ならびに「主体的学修能力・知的好奇心」すなわち、「知的好奇心、協調性やリーダーシップ、倫理観や社会的責任の自覚、自己管理力などを有し、主体的に学びを継続することができる」能力の獲得を目標とします。
授業計画と内容
演習Ⅰ:経済学の知識を、もう一歩深める
1. プロローグ
2. メカニズム・デザイン①:メカニズム・デザインとは何か?
3. メカニズム・デザイン②:第1価格オークションについて
4. メカニズム・デザイン③:第2価格オークションについて
5. メカニズム・デザイン④:VCGオークションについて
6. メカニズム・デザイン⑤:オークションにおける効率性と衡平性について
7. メカニズム・デザイン⑥:TTCアルゴリズムについて
8. メカニズム・デザイン⑦:DAアルゴリズムについて
9. メカニズム・デザイン⑧:誰もが納得する臓器移植の割り当ては可能か?
10. メカニズム・デザイン⑨:学校選択とミスマッチ解消のメカニズム
(11.~14.:学んできた内容を題材に、理解をさらに深めるための、グループワークを行います。)
11. グループワーク①:グループ課題の設定
12. グループワーク②:プレゼンの方針と内容の協議
13. グループワーク③:プレゼン資料の作成
14. グループワーク④:プレゼンテーションの実施
演習Ⅱ:社会的企業とは何かを考える
1. プロローグ
2. 社会的企業とは何か①:アメリカの社会的企業
3. 社会的企業とは何か②:ヨーロッパの社会的企業
4. 社会的企業とは何か③:日本の社会的企業
5. 社会的企業の取り組み①:貧困問題に取り組む社会的企業
6. 社会的企業の取り組み②:教育支援に取り組む社会的企業
7. 社会的企業の取り組み③:コミュニティの創造に取り組む社会的企業
8. 社会的企業の取り組み④:地域のエネルギー問題に取り組む社会的企業
9. 社会的企業の取り組み⑤:BOPを支援する社会的企業
10. 社会的企業の取り組み⑥:社会的排除/包摂論と社会的企業
(11.~14.:学んできた内容を題材に、理解をさらに深めるための、グループワークを行います。)
11. グループワーク①:グループ課題の設定
12. グループワーク②:プレゼンの方針と内容の協議
13. グループワーク③:プレゼン資料の作成
14. グループワーク④:プレゼンテーションの実施
演習Ⅲ:改めて、経済学の「考え方」を考える
1. プロローグ
2. 経済の思想①:アダム・スミスについて知る
3. 経済の思想②:富とは?「豊かさ」を追うことと、「貧しさ」を失くすことは、同じことか?
4. 経済の思想③:分業とは?それは、誰もが「社会参加」できるための仕組みではなかったか?
5. 経済の思想④:競争とは?競争に「勝つ」ことと、競争に「負けない」ことは、同じことか?
6. 経済の思想⑤:マルクスについて知る
7. 経済の思想⑥:賃金とは?賃金を下げれば利益は増えるのか?
8. 経済の思想⑦:株式会社とは?その起源が「資本家」を失くすことにあったとしたら?
9. 経済の思想⑧:ケインズについて知る
10. 経済の思想⑨:福祉・教育・環境を重視すると経済は「弱く」なる?それは本当か?
(11.~14.:学んできた内容を題材に、理解をさらに深めるための、グループワークを行います。)
11. グループワーク①:グループ課題の設定
12. グループワーク②:プレゼンの方針と内容の協議
13. グループワーク③:プレゼン資料の作成
14. グループワーク④:プレゼンテーションの実施
演習Ⅳ:卒業論文を作成する
1. プロローグ:卒論テーマの提出
2. 基礎研究①:卒論テーマに合わせて基礎研究グループを作る。
3. 基礎研究②:グループごとに、研究分担を考え、基礎研究を開始する
4. 基礎研究③:グループごとに討議を重ね、研究内容を深める
5. 基礎研究④:研究成果をプレゼンに向けて整理する
6. 基礎研究⑤:プレゼン資料を作成する
7. 基礎研究⑥:グループごとにプレゼンテーションを行う
8. 目次作成①:基礎研究に基づき、各自の卒論テーマを推敲し、目次を作成する。
9. 目次作成②:作成した目次に基づき、各自の卒論構想を発表する
10. 中間報告①:順次、卒論中間報告を行う
11. 中間報告②:中間報告を続行する
12. 中間報告③:中間報告を続行し、それに基づき、仕上げに入る
13.最終報告①:中間報告からの修正点について、各自報告する
14.最終報告②:最終報告を完了し、提出稿を確認する
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
指定されたテキスト以外にも、ゼミで言及された本や論文等について、積極的に読み進めることが望ましい。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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平常点 | 50 | ・遅刻・欠席がないこと ・事前の予習を十分に行い、ゼミでの討論に積極的に参加できていること。 ・理由なく欠席した場合は、単位認定できません。 |
その他 | 50 | ・報告25%、プレゼンテーション25% ・報告とプレゼンテーションの内容 ・グループワーク等に、積極的に取り組んでいること。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/グループワーク/プレゼンテーション
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
「テキスト(演習Ⅰ)」(変更する場合もあります。)
坂井豊貴『マーケットデザイン入門』、ミネルヴァ書房、2010年
ギオーム・ハーリンジャー『マーケットデザイン』、中央経済社、2020年
「参考文献」
アルビン・E・ロス『フー・ゲッツ・ホワット:マッチメイキングとマーケットデザインの経済学』、日本経済新聞出版、2018年
C.ボルザガ・J.ドゥフルニ編『社会的企業』、日本経済評論社、2004年
A.エバース・J-L.ラヴィル編『欧州サードセクター』、日本経済評論社、2007年
井上義朗『「二つの」競争』、講談社現代新書、2012年
井上義朗『「新しい働き方」の経済学』、現代書館、2017年
その他、ゼミの進行に合わせて、紹介していきます。
その他特記事項
〔募集人数〕
15名程度
〔募集方法〕
〇面接試験
〔課題図書〕
受講生が決定したら、事前課題としてあらためて指示します。ちなみに、2022年度の事前課題図書は以下の通り。
坂井豊貴『多数決を疑う』 岩波新書
駒崎弘樹 『働き方革命』 ちくま文庫
吉野源三郎 『君たちはどう生きるか』 岩波文庫
〔注意事項〕
「夏合宿」(実施については、新型コロナウイルス感染拡大状況等を鑑みて判断します)と「卒論発表会」はゼミの一環として行いますので、必ず参加してください。
〔国外実態調査〕
実施しない