シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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演習1 | 2024 | 通年 | 木5 | 経済学部 | 亀井 伸治 | カメイ ノブハル | 2年次のみ | 4 |
科目ナンバー
EC-OM2-01XS
履修条件・関連科目等
<選考方法>
志望者との面接を行い、その結果に基づいて選考します。面接の際には、以下のような内容についてお尋ねします。
1.「この演習への参加の動機」
2.「自分が関心を持っている文学作品や藝術作品(映画など)について」
3.「その他」
<履修条件>
1.欧米(特にドイツ語圏および英語圏)の文学・藝術に深い関心があること。
2.ドイツ語を履修しているか、もしくは、自分でドイツ語を学習していることが望ましい。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
<学位授与方針と当該授業科目の関連>
この科目は、協調性及び自己管理力(専門知識を活かせるだけでなく、チームワークの経験から学んで、他人と協調し、自己を管理することができる)の修得に関わる科目です。また、創造的思考力(総合的な学習体験に基づいて、ものごとを創造的に思考することができる)の修得に関わる科目です。
<テーマ>「幻想的なもの」と文学
アルゼンチンの高名な文学者ホルヘ・ルイス・ボルヘスは、「ドイツは、哲学と小説の領域において幻想文学というものを所有している — というよりむしろ、ただ幻想文学のみを所有している」と述べています。しかし、ドイツ文学に限らず「幻想的なもの」は、どの国の文学においても最も大きなテーマのひとつでしたし、いまもそれは変わっていません。
この演習では、十八世紀後半から二十世紀前半までに書かれた西欧(特にドイツ語圏と英語圏)の幻想文学を題材に採り上げて研究します。また、それらの作品を映像化した映画なども考察の対象に含めます。
科目目的
「幻想文学」とされている作品や、それに関する研究書などの二次文献を読み、それらのテクスト内容を考察することを通じて西欧文化に対する知識と理解の獲得を目指します。
到達目標
文学研究においては、個々の文学作品をきちんと読解することは、もちろん必須の作業です。ただ、さまざまな国や時代の作品同士、あるいは作家の創作動機や成立過程と文化的背景の間には複雑な関係が存在しています。そこで、各作品を個別に分析すると同時に、比較文学の方法を通じて各国の作家たちが互いに対して行う解釈や表現の仕方を眺めれば、作品への理解をより深いものにできます。さらに、文学作品は、ますます多様に他の藝術分野との関わりを持つようになって来ているので、映画などの映像の領域にも考察対象を拡大することで、文学と藝術の関係や、それぞれの分野の特性への関心を培うこともできるでしょう。
授業計画と内容
【演習1】(2年次)
初回は、「演習」全体の目的と、「演習1」から「演習3」までの流れを説明します。以降は、テーマの選択、先行研究の検討、理論的枠組みの確定、資料・データの収集など、論文設計の方法について概説した後、ツヴェタン・トドロフの『幻想文学論序説』(1970)を講読します。この著作を読み進めながら、内容について意見を述べてもらい、あるいは、議論を行います。トドロフの論考をひとつの例として、学術的な論文とは何かを再確認し、論文作成のための論理的な基礎固めを行います。
第1回:「演習」全体の目的と方法の概観
第2回:「演習1」の内容についての説明
第3回 から第13回までは、上記『幻想文学論序説』の前半部の各項目に沿って演習を進めます。内容は以下の通り。
第3回: 文学のジャンル:ジャンル理論一般
第4回: 文学のジャンル:ノースロップ・フライ
第5回: 文学のジャンル:構造主義
第6回: 幻想の定義:先駆者たちの見解
第7回: 幻想の定義:『サラゴサ手稿』『オーレリア』他
第8回: 怪奇と驚異:怪奇
第9回: 怪奇と驚異:驚異
第10回: 詩と寓意:詩
第11回: 詩と寓意:寓意
第12回: 幻想のディスクール:比喩、誇張
第13回: 幻想のディスクール:修辞
第14回: 前期のまとめと内容の補足
後期は、第1回と第2回に『幻想文学論序説』前半の内容を復習した後、その後半を講読します。
第15回: 前半部分の復習
第16回: 後半部分を概観
第17回: 幻想のテーマ群・序論:語用論的機能
第18回: 幻想のテーマ群・序論:統語論的機能
第19回: 幻想のテーマ群・序論:意味論的機能
第20回:「私」のテーマ群:変身
第21回:「私」のテーマ群:『ブランビラ王女』における知覚 他
第22回:「あなた」のテーマ群:性愛と他者
第23回:「あなた」のテーマ群:無意識
第24回: 幻想のテーマ・結論:詩学と批評
第25回: 幻想のテーマ・結論:精神分析学
第26回: 文学と幻想:二十世紀
第27回: 文学と幻想:文学のパラドックス
第28回: 後期および「演習1」全体についてのまとめと補足
また、前期と後期を通じ、機会を見つけて、幻想文学に関連した映像作品を観せるなどして、異種メディア間における表現方法の違いなどの考察もします。
【演習2】(3年次)
論文作成の具体的な準備として、各自が論文の主題と、それに対する考察の方法を決定できるように、毎回、具体例を提示しつつ指導します。然る後に、そうして、それぞれの学生が何らかの幻想文学テクストを選択して読むと共に、そのテクストについて調査した結果や考えたことを発表・報告してもらいます。また、それら発表と報告に対しての質疑応答や議論も行います。
前期
第1回:トドロフ『幻想文学論序説』の主たる論旨の再確認
第2回:『幻想文学論序説』以外の想幻文学関係主要参考文献の紹介
第3回: 論文テーマ例の提示:ドイツ・ロマン主義の文学概観
第4回: 論文テーマ例の提示:ルートヴィヒ・ティークの作品
第5回: 論文テーマ例の提示:E. T. A. ホフマンの作品(短篇)
第6回: 論文テーマ例の提示:E. T. A. ホフマンの作品(長篇)
第7回: 論文テーマ例の提示:ロマン主義のその他の作家と作品
第8回: 論文テーマ例の提示:十九世紀のドイツ語圏のその他の作家と作品
第9回: 論文テーマ例の提示:十九世紀の英語圏の文学概観
第10回: 論文テーマ例の提示:E. A. ポオの作品
第11回: 論文テーマ例の提示:十九世紀の英語圏のその他の作家と作品
第12回: 論文テーマ例の提示:二十世紀前半の英語圏の作家と作品
第13回: 論文テーマ例の提示:二十世紀後半の英語圏の作家と作品
第14回: 前期のまとめと補足
後期
第15回: 論文テーマ例の提示:1910-30年代のドイツ語圏の文学概観
第16回: 論文テーマ例の提示:レーオ・ペルッツの作品
第17回: 論文テーマ例の提示:グスタフ・マイリンクの作品
第18回: 論文テーマ例の提示:ハンス・ハインツ・エーヴェルスの作品
第19回: 論文テーマ例の提示:フランツ・カフカの作品
第20回: 論文テーマ例の提示:二十世紀前半のドイツ語圏のその他の作家と作品
第21回: 論文テーマ例の提示:幻想ミステリ
第22回: 論文のテーマ選択についての報告と議論(以下「報告」は学生の個別報告)
第23回: 論文のテーマ選択についての報告と議論
第24回: 論文のテーマ選択についての確認
第25回: 論文の考察方法についての報告と議論
第26回: 論文の考察方法についての報告と議論
第27回: 論文の考察方法についての確認
第28回:「演習2」全体についてのまとめと補足
【演習3】(4年次)
演習論文の完成と提出に向けて、学生が自身で選んだ作品や主題に従って論文を作成します。各人の作成の進捗状況に合わせた指導を行い、論文を完成して提出できるようにします。
第1回: 論文完成と提出に向けての解説
第2回: 論文作成の具体的な目論見についての報告:目次(各章の見出し)
第3回: 論文作成の具体的な目論見についての報告:目次(各節の見出し)
第4回: 論文の作成経過についての報告:第一章前半
第5回: 論文の作成経過についての報告:第一章後半
第6回: 論文の作成経過についての報告:第二章前半
第7回: 論文の作成経過についての報告:第二章後半
第8回: 論文の作成経過についての報告:第三章前半
第9回: 論文の作成経過についての報告:第三章後半
第10回:論文作成の最終報告:序章
第11回:論文作成の最終報告:終章
第12回:論文原稿の内容と形式の最終チェック
第13回:論文全体の再チェック
第14回:「演習」全体の総括
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
指定したテクストや配布した資料を事前に読み込み、その内容に対する見解などをまとめておく。また、関心のある分野や題材について自律的に調査を行うこと。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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平常点 | 100 | 演習への参加姿勢に基づいて綜合的に判断します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
必要に応じて、レポートなどの課題もあり得ます。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/プレゼンテーション
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
「演習1」では、ブルガリア出身でフランスの思想家・文学研究者であるツヴェタン・トドロフ Tzvetan Todorov(1939-2017)の著作 "Introduction à la littérature fantastique"(Paris, 1970)の和訳『幻想文学論序説』(三好郁朗訳, 東京創元社・創元ライブラリ, 1999)をテクストとして用います。
トドロフの『幻想文学論序説』は、出版当時、それまで曖昧模糊としていた「幻想文学」というジャンルの概念を、構造主義的研究の手法を用いて初めて理論的に定義付けしようと試みた野心的著作でした。この論考は、今日では、幻想文学研究において必須の基本文献となっています。演習では、まず、参加学生全員でこれを批判的に精読します。
上記以外の文学テクストや参考文献などについては、授業で適宜、指示します。
その他特記事項
欧米の文学や藝術に深い関心を持つ学生の積極的な参加を期待します。