シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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演習2 | 2024 | 通年 | 火5 | 経済学部 | 丸山 佳久 | マルヤマ ヨシヒサ | 3年次のみ | 4 |
科目ナンバー
EC-OM3-01XS
履修条件・関連科目等
<選考方法>
事前に以下のテーマで、簡単な見解を提出してもらいます(A4×2枚以内)。これをもとに教員が面接をし、問題意識と研究意欲とに重点を置いて、合否を判定します。過去の履修状況・成績等は問いません。
<レポートのテーマ>
あなたはX社とY社から入社内定の通知を受け取りました。どちらの企業に入社するか迷っているあなたは、サステナビリティの観点からX社とY社を比較してみることにしました。
Q.1 あなたが就職を志望する業界の中から、サステナビリティ・レポート(企業によって名称は様々ですが、企業がサステナビリティ情報を取りまとめ開示しているレポートです)を開示している企業を2社(X社・Y社)選定してください。また、2社のサステナビリティ・レポートの名称をそれぞれ教えてください。
Q.2選定した2社(X社・Y社)のレポートを参照し、どちらの企業に入社するか決定してください。その際に、X社・Y社の採用担当者が納得する根拠を含めてください。
<履修条件>
(1)4年次に演習論文(卒業論文)を書くこと。
(2)3年次に「環境会計論」(MA333)を履修することが望ましい。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
<学位授与方針と当該授業科目の関連>
この科目は、現実把握力(経済学の専門知識及び社会・人文・自然科学の知識教養に裏付けられた 広い視野に立った柔軟な知性に基づき、現実の経済現象を的確に把握することができる)の修得に 関わる科目です。
<概要>
2015年に開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、パリ協定(Paris Agreement)が採択されて以降、企業の気候変動に対する取組みが加速しています。気候変動に関する国際的なイニシアティブとして、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)があります。TCFDは、G20の要請によって、企業が気候変動関連の情報開示の枠組みを作成して、投資家や金融機関が企業の重要なリスクを理解できるようにするため、金融安定理事会により設立されました。
日本では、2021年に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいて、TCFDに基づく気候変動関連の情報開示が求められるようになりました。2023年6月時点で、1,344の企業・機関がTCFDへの賛同を表明しています。
具体的に、TCFDは、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標という4つ観点から、企業に対し、気候変動に係るリスク・機会および財務的影響の開示を求めています。これらの観点のうち戦略に関する開示にあたり重要なものとして、シナリオ分析があります。シナリオ分析とは、2℃以下シナリオを含む様々な気候関連シナリオに基づく検討を踏まえ、組織の戦略におけるレジリエンス(回復力)について説明するものです。シナリオ分析を実施する際には、環境省のシナリオ分析実践ガイド等を参考することが考えられますが、企業にとって、ハードルは高い状況です。
本ゼミでは、サステナビリティ・コンサルのサポートのもと、TCFDにおけるシナリオ分析の実践を通じて環境会計を学びます。これにより、気候変動に係るリスク・機会および財務的影響に基づき、企業分析ができるようになります。ワークショップ形式でスモールチームを組成し、スモールチームがコンサルとなり、仮想企業(クライアント)からTCFDシナリオ分析の実施依頼を受けたシチュエーションを想定し、シナリオ分析の実施や、クライアントに対するプレゼンテーションを行ってもらいます。コンサルティング・シンクタンク業界を志望する学生を中心に、実際の仕事に近い経験ができます。希望者向けに、サステナビリティ・コンサルのオフィスツアーを予定しています。
科目目的
環境会計の実践として、TCFDにおけるシナリオ分析を実施し、気候変動に係るリスク・機会および財務的影響に基づき、企業分析ができるようになることを、授業の最終的な目的とします。実務をシミュレーションし、シナリオ分析に基づく調査レポートの作成、クライアントに対するプレゼンテーションの実施まで実践的に学びます。
本ゼミでは、チームでの成果物の作成能力を重視します。メンバーとコミュニケーションをとり、調査・議論・アウトプットの作成・プレゼンテーションに至る全ての局面で、チームで協力して成功体験を得ることを目的とします。
到達目標
上記の目的を達成するために、具体的には以下の到達目標を設定します。なお、演習2および演習3・演習論文の作成に至るまで、ゼミの活動は、原則としてチーム別のグループワークとして行います。
【演習2】TCFDにおけるシナリオ分析の実施を通じて、以下の目標を達成します。
①事業インパクト評価の算定を始め、仮想企業を想定し、TCFDにおけるシナリオ分析が実施できるようになること。
②企業が発行するサステナビリティ報告を文献調査や、企業に対するヒアリング調査によって、先行事例を収集・整理できるようになること。
③シナリオ分析に基づき、気候変動に係るリスク・機会および財務的影響に基づき、企業分析ができるようになること。
【演習3】演習論文の作成を通じて以下の目標を達成します。
①チーム毎に研究テーマを深め、卒業論文の執筆を通じて、3年次に養った筋道を立てて物事を考える力を基礎に、論理的な思考方法を身につけること。
②他人の演習論文に対して原稿段階からコメントすることを通じて、単なる非難ではない鋭い批判的能力を身につけること。
授業計画と内容
【演習2】(3年次)
3年次には、TCFDにおけるシナリオ分析の実践を通じて、気候変動に係るリスク・機会および財務的影響に基づき、企業分析ができるようにします。業種別に3人~4人のチームを組成し、チーム別のグループワークとして、基本的には、ワークショップ形式でゼミを実施します。具体的には、チームがコンサルとなり、仮想企業(クライアント)からTCFDシナリオ分析の実施依頼を受けたシチュエーションを想定し、シナリオ分析の実施や、クライアントに対するプレゼンテーションを行っていきます。
<前期>
1. ガイダンス
2. ワークショップの概要説明と業種別チームの組成
3. サステナビリティ開示の諸基準とシナリオ分析の関係
4. シナリオ分析の進め方に関するTIPS
5. 他社ベンチマーク調査 ①自社のリスク・機会の把握
6. 他社ベンチマーク調査 ②競合他社のリスク・機会の把握
7. リスク重要度評価 ①リスク項目の列挙
8. リスク重要度評価 ②事業インパクトの定性化
9. リスク重要度評価 ③リスク重要度評価
10. 中間プレゼンテーション(リスク重要度評価)
11. シナリオ群の定義 ①手順の説明
12. シナリオ群の定義 ②チーム別にシナリオ群を定義する
13. 中間プレゼンテーション(シナリオ群の定義)
14. まとめと確認(前期)
<後期>
15. 事業インパクト評価 ①
リスク・機会が影響を及ぼす財務項目を把握する
16. 事業インパクト評価 ②
算定式の検討と財務的影響を試算する
17. 事業インパクト評価 ③
将来の事業展望に気候変動がもたらす影響を可視化する
18. 中間プレゼンテーション(事業インパクト評価)
19. 対応策の定義 ①
自社のリスク・機会に関する対応状況を把握する
20. 対応策の定義 ②
リスク対応・機会獲得のための対応策を検討する
21. 対応策の定義 ③
社内体制を構築しアクションの進め方を検討する
22. 中間プレゼンテーション(対応策の定義)
23. 資料作成およびプレゼンテーションのTIPS
24. クライアントに対するプレゼンテーション(第1・2班)
25. クライアントに対するプレゼンテーション(第3・4班)
26. シナリオ分析をもとにした企業分析
27. TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)およびTSFD(社会関連財務情報開示タスクフォース)による情報開示
28. まとめと確認(後期)
【演習3】(4年次)
3年次に実施した仮想企業に対するシナリオ分析を発展させる形で、4年次には、原則として、チーム別に卒業論文(演習論文)を作成してもらいます。チーム別に、月1回程度の打ち合わせを行います。なお、ビジネスプランおよびスケジュールによっては、4年次に夏合宿を実施するチームがあります。
<後期>
1. 演習論文の書き方について(報告順番の確定)
2. 第1回報告(第1班)テーマ・概要・目次・主要参考文献
3. 第1回報告(第2班)テーマ・概要・目次・主要参考文献
4. 第1回報告(第3班)テーマ・概要・目次・主要参考文献
5. 第1回報告(第4班)テーマ・概要・目次・主要参考文献
6. 第2回報告(第1班)α版原稿
7. 第2回報告(第2班)α版原稿
8. 第2回報告(第3班)α版原稿
9. 第2回報告(第4班)α版原稿
10. 第3回報告(第1・2班)β版原稿
11. 第3回報告(第3・4班)β版原稿
12. 第3回報告(予備日)
13. 第4回報告(第1・2班)完成原稿
14. 第4回報告(第3・4班)完成原稿
ゼミの進度や受講生の理解度等に応じて、授業計画が変更になることがあります。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
(1)サブゼミ
・例年、授業時間以外に、グループワークのために、チーム毎にサブゼミが自主的に開催されています。特に、「サブゼミで準備⇒授業時間に報告・教員や他の班からのコメント⇒サブセミで修正」という一連の作業が重要になりますので、サブゼミにも時間を費やせるよう、チームメンバーのなかでスケジュールを調整してください。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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平常点 | 100 | 【演習2】 ①事業インパクト評価の算定を始め、仮想企業を想定し、TCFDにおけるシナリオ分析が実施できるようになったか。(30%) ②企業が発行するサステナビリティ報告を文献調査や、企業に対するヒアリング調査によって、先行事例を収集・整理できるようになったか。(30%) ③シナリオ分析に基づき、気候変動に係るリスク・機会および財務的影響に基づき、企業分析ができるようになったか。(40%) 【演習3】 ・論理的思考力が身についたか。(50%) ・批判的能力が身についたか。(50%) 以上の各項目を評価基準とするので、通常授業でのチーム毎グループワークへの参加状況を重視します。したがって、通常授業およびその他のゼミ活動に欠席を重ねると、単位付与の根拠がなくなることになりますから、十分に注意してください。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
・提出された意見があれば、授業中にリプライするか、メール等で回答します。
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/グループワーク/プレゼンテーション/実習、フィールドワーク
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
・授業の実施にあたってサステナビリティ・コンサルティング会社の方にご協力を頂きますが、その際に、メールや電話、テレビ会議等のツールを活用します。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
【参考文献】環境省(2022)『TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候変動リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド 2022年度版~』
参考URL:https://www.env.go.jp/content/000120595.pdf
その他特記事項
・ゼミを欠席することは、他の講義科目とは異なり、チームでの作業が停滞して、仲間のゼミ員の勉強にも支障を来すなど、多大な迷惑をもたらします。前述の通り、やむを得ず欠席する場合には、必ず教員およびチームメンバーへ連絡してください。
・ゼミでの勉強は、3年生での基礎固め・共同研究⇒4年生での研究の取りまとめの2年間で完結します。その点から、4年次の演習論文も執筆を必修としていますので、この点をよく理解しておいて下さい。