シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
情報サービスとゲーミフィケーション | 2024 | 前期 | 月2 | 国際情報学部 | 田中 翔太 | タナカ ショウタ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
GI-IF3-SE28
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
急速なデジタル・トランスフォーメーションが進む現代においては、身近なフリマアプリや動画視聴サイトのみならず、金融、ヘルスケア、公共交通や、スマートシティ、行政システムに至るまで、ただ「使える・動く」ように実装するだけではなく「優れたユーザ体験(User Experience、UX)であること」、「ユーザが主体的・能動的に行動、参画できている、という実感」が求められています。また、UXの向上とともに、ビジネス目的の達成のため、本講義名にもある「ゲーミフィケーション」をはじめとして、ユーザの行動に変化をもたらす手法(行動変容デザイン)についても多くの議論が重ねられてきました。近年では学習アプリ「Duolingo」のように、ゲーミフィケーションや行動変容デザインの実例を、みなさんが手元で体験する機会も増えています。
その一方で「情報サービスにおいて、ユーザ体験をどのように設計するか?」「そもそも『優れたユーザ体験(UX)』とは何か?」「ゲーミフィケーションとは何か?」を具体的に考え、実装を推進できる、企画・開発人材はけして多くなく、あらゆる領域で、そのようなクリエイティブな人材が強く求められている状況です。
本講義では、まず「ユーザ体験(UX)」の理論と実務における実践について学び、その応用として「ゲーム」やそのノウハウをユーザ体験の向上、社会課題の解決に活かす「ゲーミフィケーション」の実践方法を学びます。
またテクノロジーや行動変容デザインのような手法は「銀の弾丸」(すべてを魔法のように解決してくれる万能な手段)ではなく、消費者から見れば優れた仕組みも、プロフェッショナル(専門家)としては冷静に分析する必要があります。近年問題となっているインターネットを通じた陰謀論の拡大や、労働強化のためにゲーミフィケーションを用いることについて「良いゲーミフィケーション、邪悪なゲーミフィケーションとは?」といった切り口についても取り扱い、幅広く「ゲーミフィケーション」の実情や課題を通じて、プロフェッショナル(専門家)として、その善悪との向き合い方を考えます。
株式会社ディー・エヌ・エーにおいて、ゲーム等の企画製作、エンターテイメント事業開発、プロダクト開発に従事している講師の実務経験に基づき、実務の現場において、情報サービスの企画開発や「ユーザ体験」の設計がどのように行われているのか、また、その面白さや企画者が陥りがちなジレンマ、法的・倫理的な課題などを、ケーススタディやゲスト講師との対話、情報サービス開発の疑似体験を通じて体験・実践することで、より深く理解できるような講義を目指しています。
科目目的
・この科目は、カリキュラム上の情報実践科目として位置付けられていることから、この科目での学習を通じて、受講者が「情報サービス」、「ゲーミフィケーション」の認識を深めるとともに、「ユーザ体験(UX)」設計の概要や、情報サービスの企画開発における実務的なアプローチについて理解を深め、実践できること、実践のために自学できるようになることを目標とします。
・最新の技術トレンドに合わせて、ヘルスケアやスマートシティ、web3・トークンエコノミクス・NFT(非代替性トークン)といった幅広い領域の実務をテーマに、学びの内容が現実社会でどのように活用、期待されているかを知る機会を提供し、受講者各人が今後の情報サービスについて考察を深められるようになることを目指します。
到達目標
・現代社会における「ゲーム」、「ゲーミフィケーション」の活用事例を他者に説明することが出来るようになること。
・情報サービスにおける「ユーザ体験(UX)設計」に関連する「デザイン思考」「人間中心設計」といった理論、「アジャイル開発」といった手法の基本的な内容や、実務における活用の現状を理解し、より深い内容について受講者自身が学び続けられるようになること。
・全ての講義を通じて、情報サービスの企画開発において「ゲーミフィケーション」を活用した「ユーザ体験(UX)」向上や、「ゲーム」や「xR」「NFT(非代替性トークン)」など最新の「デジタルエンターテインメント」技術を活用した社会課題の解決について、自分なりに考え、実践的な提案ができるようになることを期待します。
授業計画と内容
Ⅰ:導入
第1回 :2034年(10年後)に向けて、この講義で何を学ぶか?(イントロダクション)
2034年(多くの受講者が、講師の私と同じ、30代前半になっている年)の日本・世界を考え、そこで求められる「情報サービス」と「ユーザ体験」の入門的な講義を行い、本講義の全体像・進め方、到達目標、成績評価などについて説明します。
Ⅱ:情報サービスにおける「ユーザ体験」の理論と実際
第2回 :【講義】開発者・クリエイターからみた「情報サービス」と「ユーザ体験」
受講者の皆さんが利用者として接している情報サービスを、開発者・クリエイターの観点で捉え、実際のサービス企画や開発プロセスや運用がどのように行われているかを学びます。また、サービス企画開発、サービス運用、サービス周辺部(プロモーションやカスタマーサポート)などにおいて、「ユーザ体験(User Experience、UX)」がどのような関わりを持つかを考えます。
第3回 :【講義】「ユーザ体験」とは何か?
第4回 :【講義】「ユーザ体験設計」とは何か?
第5回 :【講義】「ゲーミフィケーション」とは何か?
3回の講義を通じて、「ユーザ体験(UX)」と「ユーザ体験設計(UXデザイン)」について、基本的な定義や理論を学びます。またユーザ体験設計において「デザイン思考」や「クリエイティブマインド」、「人間中心設計」、あるいは「サービスデザイン」「UIデザイン」といった言葉がそれぞれ何を意味し、どのようなレイヤーに位置するのか、関係性を持つのかを学びます。特に第5回においては、「ユーザ体験」における「ゲーミフィケーション」の位置付けと、その実例を入門的に学びます。
第6回 :【実践】なぜ「ユーザ体験」は犠牲になるのか?
「ユーザ体験」の重要性を理解しているはずなのに、「イマイチな情報サービス」が存在するのはなぜでしょう? 架空の新規事業(情報サービス)開発をテーマに、開発者の意思決定を擬似的に実践することで、なぜ「ユーザ体験」が犠牲になるのかを体験します。
第7回 :【講義】なぜ「ユーザ体験」は”犠牲になった”のか?
前回の演習結果から、なぜ「ユーザ体験」が犠牲になったのか? を考察し、実務におけるユーザ体験設計、ゲーミフィケーション導入の課題を検証します。そのうえで、情報サービス開発が抱えるジレンマを解決する手法を学びます。
Ⅲ:「社会課題解決×ゲーム」「ゲーミフィケーション」の深化
第8回 :【講義】社会課題とゲーム①(シリアスゲーム、エデュテイメント、ゲーミフィケーション、その具体的事例の検証)
第9回 :【講義】社会課題とゲーム②(事例検証、ゲーム産業の過去、現在、未来)
第10回 :【講義】社会課題とゲーミフィケーション(陰謀論/Qアノンと「邪悪なゲーミフィケーション」)
3回の講義を通じて、社会課題とゲームの関わりを考えます。
第8回は「シリアスゲーム」や「エデュテイメント」「ゲーミフィケーション」の概念を具体的な事例から学びます。実際にゲーミフィケーションを活用したヘルスケアに関するプロダクトの開発者をゲストとしてお呼びし、最新の実務やプロダクトに基づく知見を学びます。
(※ゲスト講師の都合により、講義回が前後する可能性があります)
第9回では、ゲーム産業の歴史とゲーミフィケーションの関わりを学び、未来のゲームと、ゲーミフィケーションのあり方を考察します。
第10回では、社会課題のひとつとして、インターネット上で流布される「陰謀論(いわゆる"Qアノン")」と、そこに観察されるゲーミフィケーション的なアプローチを知り、いわゆる「邪悪なゲーミフィケーション」とは何かを学びます。
第11回:【実践】ケーススタディ:「ログインボーナス」さえ入れれば、それで良いのか?(就活サイト、テーマパークアプリ、スマートシティで考える)
あまり深く考えず「ゲーミフィケーション」を実行すると、どのような問題が起きるのでしょうか? オンラインゲームで多用される「ログインボーナス」を例に「ゲーミフィケーション」の安易な実践における問題点や、どうすれば有効に活用できるか、を「ユーザ体験」や「デザイン思考」の理論を用いて学びます。
第12回:【実践】「2024年のゲーミフィケーション」① 課題に適した手法の選定
第13回:【実践】「2024年のゲーミフィケーション」② ユーザ体験設計とその検証
第12回・第13回では、情報サービスとゲーム、ゲーミフィケーションを用いた社会課題解決について複数の技術的なトレンドを組み合わせて実践的に検討します。本講義での修得内容に則りつつ、講師自身も実務家としての経験から、皆さんと一緒に実践を試みます。並行して、受講者各自が、自身の関心がある社会課題に対して企画検討を行い、その内容に対してフィードバックを行います。
第14回:2034年に求められる「情報サービスとゲーミフィケーション」とは?(総括・まとめ)
第1回講義で触れた2034年の未来を、本講義で修得した内容から改めて考察し、本講義の受講者の今後の学び、キャリアのあり方を考えます。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
・講義中にWebページ、Webサービス等の実例等については、事前に体験し、指示した考察を行い、次回講義に臨んでください
授業時間外の学修に必要な時間数/週
毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
---|---|---|
期末試験(到達度確認) | 75 | 【期末レポート】 「ユーザ体験設計」の理論と実務上の課題を理解し、講義で得た「ゲーミフィケーション」の知見を踏まえた、実践的な企画検討、又は、事例分析ができるかを評価します。 |
平常点 | 25 | 授業への参加、貢献度、受講態度(意見の表明、他の学生と協調して学ぶ態度等)、中間提出物の状況などから評価します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う/その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
・授業時間外の学修内容や自主的な企画案について、希望者にはmanaba、メール等を通じてフィードバックを行う
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
・ケーススタディ(情報サービスにおける機能開発の優先度判断や、所与の制約に則った機能の取捨選択など、実務的な課題を擬似的に実践し、その判断について議論、講評を行います)
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
・manaba、ライブ講義においては配信ツールのテキストコミュニケーション機能などを用いて、受講者の反応やコメントを踏まえた講義を進行します
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
2012年より株式会社ディー・エヌ・エー に勤務。
エンターテインメント開発事業本部 デジタルエンターテインメント事業部 事業部長(2024年1月現在)
イノベーション戦略統括部 オープンイノベーション推進室 室長(2024年1月現在)
デジタルエンターテイメント領域の新規事業及び、ディー・エヌ・エー本体からのスタートアップ出資、ベンチャーキャピタルへのLP出資を管掌しています。
2010年より、ゲームプランナー、ディレクター、プロデューサーとして『怪盗ロワイヤル』『デュエルエクスマキナ』等、複数のゲームプロジェクトを担当しました。
また、アニメプロデューサーとして『色づく世界の明日から』『殺戮の天使』『ストライクウィッチーズ Road to Berlin』等に出資参画、関連するゲームアプリ開発やデジタルエンターテインメントコンテンツのライセンスなどを担当しました。その他、情報サービスのプランナー、ディレクター、プロジェクトマネジャー、プロモーション担当者として『Comm』『Mobageチャット』『ハッカドール』など情報サービスの企画開発に参加しました。
2022年にはデジタルエンターテインメント事業部 事業部長として、複数のNFTプロダクトの開発運営に、Web3戦略準備室 副室長としてWeb3領域の戦略立案・推進、戦略投資などを担当しました。
ゲーム、デジタルエンターテインメントのノウハウを活用した社会課題解決や、先端技術(xRや5G、IoT、NFT)を活用した新規事業の企画・実行推進を行っています。
上記『情報サービス』『ゲーム』の開発・プロデュース経験やUX設計の実務経験を本講義に活用します。また社内研修における研修講師、ゲームの他事業における活用、ゲーム・デジタルエンターテインメントのノウハウを活用した先端技術の技術実証(PoC)などを業務として担当しており、本講義内での実務の疑似体験、ケースメソッドでの活用を想定しています。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
・第1回および第14回講義における『2034年の情報サービスとゲーミフィケーション』の考察、受講者の考察内容の講評においては、ゲーム、デジタルエンターテインメントのノウハウを活用した事業、プロダクトの企画開発の実務経験を活用します。
・Ⅱ:情報サービスにおける「ユーザ体験」の理論と実際(第2回~第7回)においては、情報サービスのプランナー、ディレクター、プロジェクトマネジャーとしての実務経験を活用し、特に実務現場における理論活用の実際と葛藤(ジレンマ)について講義します。また、
・Ⅲ:「社会課題解決×ゲーム」「ゲーミフィケーション」の深化(第8回~13回)においては、ゲームプランニング、ディレクション、プロデュースおよび事業開発の実務経験から「ゲーム」や「ゲーミフィケーション」、「情報サービス」および、さまざまなデジタル技術(xR、IoT、NFT等)による社会課題解決について講義します。
テキスト・参考文献等
講義中、適宜、文献、Webでアクセス可能な公的機関のレポート等を示します
また、時事ニュースなどを積極的に講義に反映するため、新聞、雑誌等で社会問題についてキャッチアップを行ってください。
授業時間外の学修用の参考文献として
・ジェイン・マクゴニガル著(妹尾堅一郎/監修 藤本徹・藤井清美/訳)「幸せな未来は『ゲーム』が創る」2011 早川書房
・Stephen Wendel著「行動を変えるデザイン 心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する」2020 オライリー・ジャパン
・セリア・ホデント著「ゲーマーズ・ブレイン」2019ボーンデジタル
・セリア・ホデント著「はじめて学ぶビデオゲームの心理学」2022福村出版
を挙げます。