シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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演習Ⅰ(ヨーロッパ経済史) | 2024 | 通年 | 木4 | 経済学研究科博士課程前期課程 | 柴田 英樹 | シバタ ヒデキ | 1年次配当 | 4 |
科目ナンバー
EG-OM5-201S
履修条件・関連科目等
経済史を専攻しているとしていないとにかかわらず,西洋経済史に関心がある大学院生。学部で経済史関連科目を履修していることが望ましいでしょう。この授業では、歴史的視角を持つうえで重要な弁証法について、その背景、基本的構造について、経済史や思想史に限らず、広範囲に関連文献を読みながら考えていきたいと思います。経済史・歴史研究全般に関心のある方あるいは経済学史や経済思想史に関心のある方の役にも立つと思います。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
ヘーゲルやマルクスは、デカルト以来の近代西洋思想を支配する認識主観としての意識主体と世界との対立という二元論思想を批判して、弁証法を展開した。この授業では、多様な分野の文献を検討しながら、弁証法がどのような背景で生まれ、何を問題としていたのかを検討する。
『社会心理学講義』は、意識主体というものの存在の不明確性についての学説を整理し、意識主体の起源を社会的に解明してくれる。
『あなたの脳のはなし』は世界を直接知ることができず、感覚器から無差別の電気信号を受け取るだけの脳が、世界と自我の区別を生み出す過程や、脳内の各領域の競合関係の中から意思決定がなされる過程など、自律的に見える精神活動が何らの主体なしにも生み出される理由を解明している。
『レトリックと人生』は人間の意味生産活動において、意識主体の活動が様々の意味素材の媒介活動に限定されていることを例示し、間テクスト性のわかりやすい説明になっている。
これらの文献で、弁証法が必要とされる状況を理解したうえで、哲学に関する文献を読解し、ヘーゲルやマルクスの業績に関する理解を深める。
科目目的
社会心理学、文学理論、認知科学、哲学などの文献を読みながら、ヘーゲルやマルクスの弁証法がどのような背景で生まれ、何を問題としてきたのかを探求する。
到達目標
脳科学、文学理論、社会心理学等の文献を検討し、主体の独立性・根源性がどのように疑われるようになったのか、意識主体と世界とを対立させる二元論的世界観がどのような問題を持っているのかを明らかにし、主観と客観の区別がまだない状態から、世界と主体とが生み出されてくる過程を現代の諸科学がどのように扱っているのかを理解し、マルクスやヘーゲルの弁証法が何を問題にして、どのように問題を解決しようとしていたのかを概観することが本科目の目標である。
授業計画と内容
1.社会心理学における主体(1):主体の自立性についての疑義(文献1の読解)
2.社会心理学における主体(2):主体の成立過程(文献1の読解)
3.社会心理学における主体(3):主体の社会的構成(文献1の読解)
4.社会心理学における主体(4):主体と世界の同時成立(文献1の読解)
5.社会心理学における主体(5):実存主義と社会心理学(文献1の読解)
6.脳科学における主体(1):脳の成長過程(文献2の読解)
7.脳科学における主体(2): 感覚器官の分化(文献2の読解)
8.脳科学における主体(3):世界と主体の成立(文献2の読解)
9.脳科学における主体(4):脳における意思決定の過程(文献2の読解)
10.脳科学における主体(5):意思と行動との実際の関係(文献2の読解)
11.記号論と間テクスト性(1):記号論とは何か(文献3の読解)
12.記号論と間テクスト性(2):間テクスト性とは何か(文献3の読解)
13.記号論と間テクスト性(3):マルクス主義と記号論(文献3の読解)
14.記号論と間テクスト性(4):レトリックにおける意識の役割の実例(文献3の読解)
15.記号論と間テクスト性(5):レトリックにおける意識の役割の実例(文献3の読解)
16.記号論と間テクスト性(6):レトリックにおける意識の役割の実例(文献3の読解)
17.近代西洋哲学史(1):ヘーゲルにおける転換(文献4の読解)
18.近代西洋哲学史(2):ヘーゲル以降の存在論の展開(文献4の読解)
19.近代西洋哲学史(3):実存主義(文献4の読解)
20.近代西洋哲学史(4):現代言語哲学の問題意識(文献4の読解)
21.ヘーゲルの弁証法(1):ヘーゲルの問題意識(文献5の読解)
22.ヘーゲルの弁証法(2):ヘーゲルの哲学批判(文献5の読解)
23.ヘーゲルの弁証法(3):ヘーゲル弁証法の誕生(文献5の読解)
24.ヘーゲルの弁証法(4):ヘーゲル弁証法の意義(文献5の読解)
25.マイケル・ポランニーの主体論:暗黙知(文献6の読解)
26.マイケル・ポランニーの主体論:創発(文献6の読解)
27.マイケル・ポランニーの主体論:創発と主体(文献6の読解)
28.総括
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業で取り扱う文献や,関連文献を読み,自分なりに学説の整理を行うこと。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 50 | 輪読形式で文献を読んでいくので、文献について報告していただきます。 |
平常点 | 50 | 授業に積極的に参加してください。 |
成績評価の方法・基準(備考)
主に分担報告の出来不出来を中心に評価にしますが,授業中の討論での発言などで理解度を判断し,評価の資料とします。また、期末に短いレポートを提出していただきます。
授業に多く出席し,授業に積極的に関わるほど成績評価は高くなります。
授業での活動(平常点)50%、レポート50%で評価します。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
クリッカー/タブレット端末/その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキスト
1.小坂井敏晶(2013)『社会心理学講義』筑摩書房
2.デイヴィッド・イーグルマン(2016)『あなたの知らない脳』太田直子訳、早川書房(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
3.G.レイコフ&M.ジョンソン(1986)『レトリックと人生』渡辺昇一他訳、大修館書店
4.ラントグレーベ(1969)『現代の哲学』改訂版、細谷貞雄訳、理想社
5.太田孝太郎(2018)『ヘーゲルの媒介思想』渓水社
6.青木克仁(2002)『認知意味論の哲学ーーコミュニケーションの身体的基礎』大学教育出版
7.マイケル ポランニー(2003)『暗黙知の次元』高橋勇夫訳、筑摩書房 (ちくま学芸文庫)