シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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文化財学A | 2025 | 前期 | 火4 | 文学部 | 須田 英一 | スダ エイイチ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-HE3-F419
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
文化財は保存するだけではなく、その活用に政策の重点が置かれてきている。世界遺産が国内外で大きな関心を集める中、文化財保護に視野の広がりも求められてきている。特に埋蔵文化財(遺跡)保護行政のシステムを、考古学研究との関わりにも触れながら学ぶと共に、近年の文化政策の展開も視野に入れながら、文化財の保存と活用についての知識と、実務に展開可能な適応力を身に着ける講義を展開する。
科目目的
混沌とした現代社会の中で、文化財は地域社会にうるおいを与えてくれる文化遺産の一つである。特に遺跡(埋蔵文化財)は地域教材として学校教育や生涯学習などの教育分野、景観を形成する一要素としてまちづくりなどの都市計画分野、地域アイデンティティーとしての地域社会とのつながりなど、現代社会との関わりも深く、文化財行政は文化政策の中で大きな支脈を形成している。
遺跡を保護する行政を埋蔵文化財行政学と位置付け、行政の基本的枠組について理解を深める。さらに考古学研究との関わりにも言及し、埋蔵文化財を幅広く文化遺産の一つとして考えると共に、文化財を現代社会との関わりの中で捉える態度を身につける。
この科目は、学生が学位授与の方針で示す「専門的学識」・「複眼的思考」を習得することを目的としている。
到達目標
この科目では、埋蔵文化財を中心とした文化財行政のシステムを学ぶことを通じて、行政職員としての施策の進め方を把握し、埋蔵文化財を文化財の一つとして幅広く考えられるようになると共に、教育・都市計画・景観・まちづくりなど、現代社会との関わりの中で広く活用という視点でも捉えられるようになることを到達目標とする。また、埋蔵文化財に限らず、文化財の多様なかたちとその保存・活用のための国内外の制度やしくみを学び、広い視野をもって文化財保護に関してその問題点を説明できるようになることも到達目標としたい。
授業計画と内容
第1回 ガイダンス、文化財の種類・区分と埋蔵文化財、保存の意義
第2回 埋蔵文化財に関する制度・行政のシステム(1) 近代における文化財保護
第3回 埋蔵文化財に関する制度・行政のシステム(2) 文化財保護法の制定とその意義
第4回 埋蔵文化財と埋蔵文化財行政学(1)埋蔵文化財とは
第5回 埋蔵文化財と埋蔵文化財行政学(2)埋蔵文化財専門職員に求められる能力
第6回 埋蔵文化財の保存 遺跡の保存・整備
第7回 埋蔵文化財の活用 遺跡の活用、埋蔵文化財の普及
第8回 文化政策と埋蔵文化財 近年の文化政策の展開と埋蔵文化財を取り巻く環境
第9回 文化財の保護と世界遺産 世界遺産条約の成り立ちとしくみ
第10回 文化財の保護と日本遺産 日本遺産のしくみと課題
第11回 文化財の再生と活用(1) 文化財建造物の保存と活用
第12回 文化財の再生と活用(2) 伝統的建造物群の保存と活用
第13回 文化財の再生と活用(3) 近代の文化遺産の保存と活用
第14回 総括・まとめ 現代における文化財の保存・活用と今後の展開と役割
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
プライベートな時間に、近隣の埋蔵文化財センター・博物館などにも足を運び、埋蔵文化財の活用事業にも参加して欲しい。また、文化財や史跡などに関する新聞・雑誌記事やテレビのニュース・特集番組などにも接し、講義内容の理解度を高めて欲しい。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 60 | 定期試験は実施しない。学期末の課題レポートを課す。その内容を基準とする。 |
平常点 | 40 | 授業の受講態度の状況と、毎回のリアクションペーパーの内容を基準とする。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
1988年9月~1991年12月、慶應義塾藤沢校地埋蔵文化財調査室勤務、発掘担当者として発掘調査、整理作業に従事
1994年4月~2010年3月、神奈川県三浦市教育委員会社会教育課文化財保護係勤務、文化財担当者として発掘調査・整理作業、資料館運営、公開・普及事業、庶務事務、その他に従事
2011年10月~2013年3月、慶應義塾大学矢上地区文化財調査室勤務、担当者として整理作業に従事
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
大学の調査機関、自治体での実務経験を通じて、資料館運営に関する基本的な知識と運用、文化財行政に関する運営と課題などについて講義する。
テキスト・参考文献等
毎回レジュメを配布する。下記以外の参考文献については適宜紹介する。
稲田孝司『日本とフランスの遺跡保護』岩波書店、2014年 ISBN978-4-00-025974-3
須田英一『遺跡保護行政とその担い手』同成社、2014年 ISBN978-4-88621-676-2
土屋正臣『市民参加型調査が文化を変える』美学出版、2017年 ISBN978-4-902078-46-6
和田勝彦『遺跡保護の制度と行政』堂成社、2015年 ISBN978-4-88621-709-7
その他特記事項
考古学など歴史学を専攻して学芸員課程を履修している学生にとって、専攻と社会との関わりを考える絶好の機会になると思う。また、地方自治体勤務を希望している学生においては、自治体の仕事の進め方などを理解するうえで、参考になると考えます。講義では埋蔵文化財に関わる最新のニュースなどにも触れるので、必ずしもシラバス通りの進行にならない場合がある。