シラバス
| 授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 有価証券法/法学特講1 有価証券法 | 2026 | 春学期 | 金4 | 法学部 | 橡川 泰史 | トチカワ ヤスシ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-SO3-007L,JU-LA3-006S
履修条件・関連科目等
科目名にかかわらず、民法総則および債権総論・契約総論に該当する分野を体系的に履修していることが望ましい。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
本講義は商法の一分野である有価証券法について、その概要及びポイントとなる論点について講ずることを目的とする授業です。
商法とは、利益を得ることを目的として取引を反復・継続して行っている者(商人)の取引を対象とする法分野である、ということはすでに商法総則に関連した授業で学ばれていることと思います。そうした商人同士が金銭と商品を交換(取引)するとき、売り買いされる商品の価値は、「その商品から将来獲得できるはずの金銭的利益」を現在の金銭価値で評価した額となります。これを裏返して言えば、「将来キャッシュを生み出すであろう何か」であれば、不動産や動産などの有体物でなくても、商人にとっては「商品」としての取引対象となるわけです。
これをさらに推し進めて考えれば、商人の間では、「なんらかのビジネスモデルから将来獲得されるキャッシュのうちの一定部分を優先的に確保する権利」が法的権利として確立されてさえいれば、この「権利」を(その具体的内容がどんなものであれ)「商品」として取引の対象としてしまえるはずです。(例えば、「株式会社が将来獲得するキャッシュのうちの分配可能利益分を配当として優先的に受け取る権利」は「株式」という法的権利として会社法その他の法によって保護され、取引されています。)
問題は、そのような「権利」の内容が複雑になると、取引の対象にしようとしたときに、将来生じ得るキャッシュの量を推し量ったり、キャッシュの源となるビジネスモデルのリスクを評価し、リスクを取引当事者間で適切に分配する、といった様々な事前の活動や交渉が必要になってしまい、そうした活動・交渉のコスト(取引費用)によって、取引全体が費用倒れに終わってしまう可能性があることです。
伝統的な法的ツールである「有価証券」は、そのような複雑な内容の「権利」を可視化し、取引しやすくすることで、そうした種々の取引費用の節約を手助けとなる道具でした。そして、この法的道具を用いた取引に特有の私法上の諸ルールをまとめて「有価証券法」と呼んできたわけです。伝統的「有価証券」は、その名のとおり券面上に権利内容を具体的に記載したものであり、「有価証券法」とはこの券面の作成・譲渡・担保・決済・盗難紛失事故等に関するルールの集成のことでした。現在では、券面に代わって何らかの媒体に電子データとして記録された権利が取引の対象となるようになりましたが、その取引に適用されるべきルールの核の部分について考える場合、そこで考慮されるべき法的利害は、券面化された権利の取引の場合と共通する部分が多く見られます。
そこで本講義は、上記のような有価証券法の基本ルールを概観するため、主な素材として、伝統的有価証券法の中でもとりわけ厚い議論の集積が見られる「手形法」における議論を参照しながら、電子データを媒介とした権利のやりとりを行うための手段である電子記録債権や振替株式などによる権利のやりとりに関する法律関係を検討していきます。その過程では、手形の流通プラットホームである決済システムとの関連を常に意識していくことになりますが、その詳細については秋学期科目である「法学特講・支払決済法」で取り扱うこととなります。
科目目的
いわゆる「有価証券法理」について、その内容、及び実際の適用上の法的問題を理解する。
到達目標
シンプルな事例における法的問題の所在を把握し、適用される法規範の解釈を通じて、妥当な解決に至る論証スキルを修得する。
授業計画と内容
第1回 有価証券法の対象:流通する電子データと伝統的有価証券の関係
第2回 決済システムの中の有価証券・決済データ
第3回 小切手・約束手形・電子記録債権
第4回 「原因関係」と「無因性」
第5回 手形・小切手の振出/電子記録債権の発生記録
第6回 手形・小切手の譲渡/電子記録債権の譲渡記録・保証記録
第7回 有価証券法理(1)「形式的資格」と「善意支払」
第8回 有価証券法理(2)「善意取得」
第9回 有価証券法理(3)有価証券に関する法律行為の基本的性質(手形理論)
第10回 有価証券法理(4)意思表示の瑕疵
第11回 有価証券法理(5)「文言性」と「名義」の意義
第12回 無権代理・偽造・なりすましと流通保護のバランス
第13回 有価証券の静的安全保護
第14回 総まとめ(決済システム・有価証券法理)
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
各回授業ごとに、あらかじめにmanabaに資料をアップする。テキスト該当箇所を目を通し、「設例」が示されている場合には、それに対する一応の回答を準備してから出席して下さい。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
| 種別 | 割合(%) | 評価基準 |
|---|---|---|
| 期末試験(到達度確認) | 100 | 手形法・小切手法の基本原則・基礎概念を理解し、設例の解決において、適切に解釈論を展開していること |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキスト
田邊宏康『企業決済法講義』成文堂・2025年
ISBN978-4-7923-2830-6
参考書
別冊ジュリスト「手形小切手判例百選」第7版・有斐閣、2014年(別冊ジュリスト222)
小塚壮一郎=森田果『支払決済法』第4版・商事法務、2026年4月(刊行予定)
その他特記事項
■授業の工夫■この科目は講義を中心として行うため、受講生の皆さんの反応・理解度の向上を目的として、manaba のアンケート機能を利用して毎回の授業へのリアクションの提出を求め、次回以降の授業内で適宜応答する予定です。
手形法の体系的履修を希望する受講生は、本講義から続けて秋学期「(法学特講/企業関係法特講)支払決済法」を受講されることをお勧めします。本講義では、時間の都合上、有価証券法理の背景にある決済システムそのものの法的構成や、有決済システムを利用した場合の原因取引の清算の問題について必ずしも十分な検討ができませんが、「支払決済法」の講義でその不足部分が補えると思います。
参考URL
全銀協 決済システム等の企画・運営
http://www.zenginkyo.or.jp/abstract/efforts/system/