シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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都市社会学特殊研究 | 2024 | 後期 | 土5 | 文学研究科博士課程後期課程 | 新原 道信 | ニイハラ ミチノブ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LG-SC6-123L
履修条件・関連科目等
①履修条件は、"生身の都市社会(living urban society: city, community and region)"を理解するために必要な都市・地域社会学に加えて、文化人類学・民俗学、社会調査法、現代社会理論、人文・社会・自然科学の関連部分について学ぶ意思があることです。②「研究(勉強)」だけでなく「場/人間を創る(統治する、責任をもつ)ことへのチャレンジ」をする学生、自分に固有の問い/依拠すべき理論/適切な調査の方法/オリジナルデータの取得方法について、教えられる以前に"自ら学べる"力を身につけたい学生、とりわけ「3.11以降」「コロナウイルス感染拡大」下の"共存・共在の智(wisdom of coexistence)"と"異質性を含み混んだコミュニティ(composite community with heterogeneity)"の形成に関心を持つ学生にとって適切な科目です。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
現代都市は、"「壁」の増殖(proliferation of 'barrier')"と異質な他者との"出会い(incontrare l'altro, encountering the other)"が"衝突・混交・混成・重合"する「場(place, space, moment)」となっています。都市社会の、とりわけ微細な変動の意味を理解するため、都市・地域社会学の展開への理解とイタリアの社会学者A.メルレルとA.メルッチの議論を導きの糸としつつ、参加者が遂行している調査研究から得られた知見を交換し、"惑星社会の諸問題を引き受け/応答する"ための「エピステモロジー/メソドロジー/メソッズ」を錬成していきます。この授業は、「問題発見(仮説生成)型」を基本として問題解決(仮説検証)型のプロセスを組み込む、フィールドワーク("原問題(underlying problem)"の発見から科学知へ)の性格を持った授業です。①自分でフィールドワークの場(自分にとっての"共創・共成"の場)を探す、②他のメンバーとの"対話的なエラボレイション"により、独自のフィールドワークを行う、③「原問題の発見/問題解決の新たな方向」に関してまとめる、④この段階に達した者が各種のプロジェクトの主要な担い手となるためのトレーニングを行います。
科目目的
本科目は、ナショナル/トランスナショナルという枠組みを越え、いわばプラネタリーに、その「都市的状態」を転換させている現代都市で生起する"地球規模の諸問題(global issues)"の背後にある"原問題/問題の源基(underlying problem)"を切り出し、想定内の「問題解決」ではない"新たな問いを立てる(formulating new questions)"ことをめざします。システム化・グローバル化した現代都市社会の問題を"惑星社会の諸問題(multiple problems in the planetary society)"としてとらえたうえで、「3.11以降」「コロナウイルス感染拡大」下の社会的痛苦の縮減を可能とする"共存・共在の智(wisdom of coexistence)"と"異質性を含み込んだ都市コミュニティ"を学生のみなさんとともに構築していきます。
到達目標
本科目に参加する院生は、グローバリゼーションのもとで高度に複雑/複合的な惑星システム(highly complex planetary system)の端末(terminals)となった都市社会の動態を比較研究することにより、知的教養を養うことを目標とします。また、"コミュニティを基盤とする参与的行為調査(Community-Based Participatory Action Research(CBPAR))"と"療法的でリフレクシヴな調査研究(Therapeutic and Reflexive Research(T&R) )"の技法・作法と倫理、理論と方法を学ぶことによって論理構築力と実践力を身につけます。授業の運営自体、初期シカゴ学派のような「調査者の知的コミュニティ」(現場主義、小集団による問題発見、多声の確保による調査研究アプローチの錬磨、智の継承)をめざすことによって、学会発表・投稿論文・博士論文などの発信力、さらには独創性を身につけることを到達目標とします。
授業計画と内容
第1回 都市社会の原理的考察
第2回 メルッチの"惑星社会論(vision of planetary society)"
第3回 メルッチの"未発の社会運動"論
第4回 メルレルの"社会文化的な島嶼性論(visione di insularità socio-culturale)"
第5回 メルレルの"コミュニティを基盤とする参与的行為調査(CBPAR)"
第6回 参加者の都市社会論の検討
第7回 ラウンドテーブルとグループワーク
第8回 グランドデザインから見た都市社会
第9回 移動民から見た都市社会
第10回 受難民から見た都市社会
第11回 「生活」「いのち」「生存」から見た都市社会
第12回 参加者の都市社会研究による知見の提示
第13回 "異質性を含み混んだコミュニティ"にむけて
第14回 総括・まとめ 都市の"生身の現実"にふれるために
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業前には、あらかじめ指示されたテキストの該当箇所を読み、授業後は配布されたレジュメを熟読してください。授業時間外にも、各自の熟練の度合いに応じて、グループワークや研究会、大学教員、大学院生、市民、自治体職員等がすすめている共同研究プロジェクト、"コミュニティを基盤とする参与的行為調査"と"療法的でリフレクシヴな調査研究"等に参加してもらい、そのなかで、指導と質疑応答を行います。これ以外にも自立した研究者として、自分のフィールドでの調査研究をすすめ、その知見を授業の場に持ち寄るようにしてください。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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中間試験 | 25 | 報告や課題論文への積極的取り組み、ML等の諸活動へのコミットメント |
期末試験(到達度確認) | 35 | 学会報告・論文投稿などの発信力 |
レポート | 20 | 知的教養と論理構築力 |
平常点 | 20 | 事前事後学習・グループワーク・コメント&リプライへの積極的参加と「議論の場」形成への寄与、コミットメント、リーダーシップなどの実践力 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
MLで常にお互いの草稿と授業の記録を開示し、授業時間外でもコメント&リプライを、教員から学生という一方向のみならず学生間も含めて多元的に行います。
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)/反転授業(教室の中で行う授業学習と課題などの授業外学習を入れ替えた学習形式)/ディスカッション、ディベート/グループワーク/プレゼンテーション/実習、フィールドワーク
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
ターム・ペーパー,報告レジュメは,受講者全員にメーリングリストで配布し,当日もスライド等を用いて発表し,議論を進める。ディスカッションも,対面で参加できない学生との間ではオンラインで接続し、ハイブリッドの授業を行なう。各種の端末を各自が使用し、manabaの掲示板やチャットの機能などを活用する。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
①新原道信編『地域社会学講座2――グローバリゼーション/ポスト・モダンと地域社会』東信堂,2006
②新原道信『境界領域への旅――岬からの社会学的探求』大月書店,2007
③新原道信編『"境界領域"のフィールドワーク――惑星社会の諸問題に応答するために』中央大学出版部,2014
④新原道信編『うごきの場に居合わせる――公営団地におけるリフレクシヴな調査研究』中央大学出版部,2016
⑤矢澤修次郎編『再帰的=自己反省の社会学』東信堂、2017
⑥新原道信編『"臨場・臨床の智"の工房――国境島嶼と都市公営団地のコミュニティ研究』中央大学出版部,2019
⑦新原道信他編『地球社会の複合的諸問題への応答の試み』中央大学出版部,2020
⑧新原道信編『人間と社会のうごきをとらえるフィールドワーク入門』ミネルヴァ書房,2022
その他特記事項
新原が長年かかわってきた日本地域社会学会と都市社会学会、中央大学社会科学研究所等を研究拠点として、イタリア、ブラジルを始めとした海外の大学・研究者との協業により、研究の最前線での活動をしていきます。参加院生には、国内外の学会・研究ネットワークへの積極的なコミットメントを促し、指導・支援していきます。イタリア語、ドイツ語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語、ラテン語など、どれかのヨーロッパ言語・文化に関心があると理解の助けとなります。自分の狭い「専門」に閉じこもらぬために、「足でかせぐ」資料収集、濫読、系統的・悉皆的読書、語源の探求、(日本語と英語のみならずより多くの)複数言語による考察などを行うようにしてください。