シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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多国籍企業と人事管理 | 2024 | 後期 | 金3 | 総合政策研究科博士課程前期課程 | 菅谷 英之 | スガヤ ヒデユキ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
PG-MH5-201L
履修条件・関連科目等
1.基本的な事項から解説しますので,事前の知識は特に必要ありません.
2.他研究科・学部からの履修もOKです.課題提出等,授業中の扱いは正規履修生と同様になります.
3.職務経験を有する人の多様なニーズに対応します.
4.就活を間近に控えた,院生・学部生等の聴講登録もOKです.課題提出等,授業中の扱いは正規履修生と同様になります.
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
組織における経営資源は,ヒト(人財)・モノ・カネ・情報です.経営資源の中で特に重要な資源は人財であり,組織等の経営企画部門・人事部門等が,たとえ立派な戦略・政策を策定しても,組織の人財能力が高くなければ,その戦略・政策は成就せず,絵に描いた餅になります.
組織の業績は,戦略・政策の優劣だけではなく,その組織に属する人財たちの能力によって決すると言っても過言ではありません.
1.組織文化とミッション・ビジョン・バリュー・パーパス、組織戦略・人事政策の関係性について理解します.
2.組織で幹部クラスとして活躍するための経営観・事業観を醸成します.
3.1つの事象から,何が本質的な課題なのかをつかむ、コンセプチュアル(概念化)スキルを醸成します.
本コースでは,理解度・課題点,ポイント等を常に確認しながら着実に進めて行きます.
科目目的
個人のキャリア開発戦略と経営戦略とは構造的に似ているといえます。
企業は、いわば戦略的に構築した、良質で強い企業文化をベースに、ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスなどを定め、それらにフィットした戦略を構築することで、戦略の実現、具現化を目指します。戦略を実現する上で最重要の経営資源である人財の獲得戦略も、それに基づいてシステマチックに進めていく必要があります。優良企業ほど、自社の有する文化やミッション、ビジョン、バリュー、パーパスに合わない人財は採用しません。人数合わせ、安易な穴埋めのための人財採用はせず、換言すれば、自社の文化に合わない人間は決して採らないことを徹底しています。
就職する側も、自らが属したい組織の文化に合うかどうかをよく見極めて、実際にそこに入って自由自在に活躍できるかどうかをシミュレーションして、よく見極めたうえで慎重に組織を選別する必要があります。
これまでの日本企業は、長期雇用を前提とした新卒一括定期採用を軸に、人財獲得戦略を真正面から据えてきており、欧米で主流のジョブ型採用方式よりも、組織のメンバーの一員となる成員を加えるための、メンバーシップ型採用(何の仕事をアサインするかではなく、組織にぴったり合う仲間を組織に加えて、ゼネラリストとして幅広い仕事の経験をさせる)であったので、キャリアに関しては企業側が主導権を持って個人のキャリアが決まっていくことが多く、社員が主体的にキャリアをデザインしていける余地は小さかったといえます。
対する欧米企業も、企業人事部が主導してキャリアを構築していくというよりは、日本とは違って大学・大学院での専攻や専門に関係する資格の取得等により、自らのジョブが半ば自動的に決まるので、自ら希望してもキャリアを実際に開始してからジョブの方向性を大きく変えるキャリアチェンジは非常に難しく、自律的なキャリア開発とは程遠い面がありました。
日本企業は近年、社会構造の変化や若年者気質の変化(大卒3年内退職約32%)もあり、入社後のミスマッチのリスクが相対的に低いジョブ型の採用を志向し始め、当初から就職者の希望の職務に近い職務を選べるような人事政策が強まり、企業主導によるキャリア形成ではなく、自律的かつ個人の自己責任によるキャリア開発が可能となる土壌が整えられつつあります。たとえメンバーシップ型採用で、職務無限定の総合職としての採用であっても、かつてのように、完全な企業都合による全国転勤命令等ではなく、自らが希望するエリアのみの地域限定型人事異動の仕組みも多くなってきました。
日本企業は従来から「遅い選抜による総エリート体制」が建前の人事政策でしたが、これまでのように、さまざまな業務を経験する中で、職務適性をゆっくりと見出すという時間的余裕は短縮されつつあります。すなわち、単線型人事(皆が一本の人事政策の下で人事運用される)による遅い選抜から、個々人のキャリア開発を見据えた上での入社時からの複線型人事(⇔単線型人事)を採り入れることが普通になってきました。
米国のシリコンバレーに在るDX(デジタルトランスフォーメーション)企業等に属する社員は、日本の従来的な総エリート候補の仕組みに近い形でのさまざまなローテーションを経験する完全な総エリート体制の下、高い報酬と引き換えに、Up or Out(昇格か退職か)の厳しい雇用慣行下での緊張感のある労働を強いられています。彼らは各々の職務の報酬の市場レートが決まっているので、少しでも高い報酬を求めての転職が普通であり、企業の側も市場価値連動型の報酬を常に用意せざるを得ません。反面で、米国では解雇が比較的自由で、特段の解雇事由も必要なく社員を解雇出来るので、日本的なメンバーシップ型採用のように長期的に身分が安定しているわけではない面があります。
強い人事権の下での長期雇用を前提とし、社内で長期的に教育・育成されていくことを前提に、企業主導での人事ローテーションの下でキャリア開発を長期的に進めていく日本型の雇用を選ぶのか、新卒者には不利な専門的なジョブを全面に据えた上で、欧米エリートのように常にUp or Out(昇格か退職か)の緊張感の中で米国のシリコンバレーを渡り歩いていくような雇用タイプが良いのかは、模倣困難性の高い個人能力(模倣困難性の高いスキルのレベル、資格やTOEICスコア、クラブ経験、バイト、他者と差別化された唯一無二のガクチカ経験等)をベースに、自分をどこにポジショニングするのが他の優良学生と比して、比較競争優位となるのか、自分の個人能力のどこに強みがあり、どこを効果的にアピールすることが、ベストのポジションを取れるのかなどを、相手方組織の文化的特性、ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスに根差した経営戦略・人事政策とどうフィットするのかなどを総合的かつ俯瞰的に見極めて、自律的に自らの手でキャリアを選択していくような唯一無二のキャリア戦略を見据えていく必要があります。
そのためには、自分を常に強く牽引してくれるような有力者(キーマン)・後援者を多数(複数)戦略的に配備しておくことが、唯一無二のキャリア実現のための1番の近道となります。
本コースの受講生は,自己の強み(コンピテンス)を確認し,それを意識しながら,各自のゴール(到達目標)を目指します.また今後自分が,組織内でどのように振る舞い,行動していくべきかを考え始める契機とすることを最大の目的とします.
最終回に提出してもらうレポートでは,「自分の強みを今後どう活かしていくか」というキャリア開発の指針も含めて、総括的にコメントして個々人にフィードバックします.
到達目標
ゴール(到達目標)は,各自のニーズに応じたものになりますので,各自で到達目標は異なります.
1.組織文化とミッション・ビジョン・バリュー・パーパス、組織戦略・人事政策の関連性について理解します.
2.組織で幹部クラスとして活躍するための経営観・事業観を醸成します.
3.1つの事象から,何が本質的な課題なのかをつかむ、コンセプチュアル(概念化)スキルを醸成します.
4.将来のキャリアプランをどう実現させるかを考える契機とします.
5.課程での研究を早期に軌道に乗せるようにします.
授業計画と内容
1.「戦略・政策」・「組織文化・風土」・「人事政策(採用・教育・評価・報酬・格付・配置・異動等)」・「リーダーシップ」・「キャリア開発」等の切り口から,まずは日本企業・欧米企業の雇用慣行の違いを理解したうえで、現実の組織を題材にして、その組織の戦略や人事政策を考察していきます.
2.以下のような組織を題材に採り上げます(例・順不同).
GAFA(グーグル・アップル・FB[Meta]・Amazon),ソフトバンク,楽天,サムスン,日立,パナソニック,ソニー,富士フイルム,花王,アサヒビール,サントリー,トヨタ,日産,ホンダ,J&J,マクドナルド,金融法人,公務員組織,コンサルティングファーム,ベンチャー企業等.
3.受講者の状況・要望等も勘案して進めます.
第1回 オリエンテーション
第2回 グローバル企業の株式時価総額(企業価値)-エクセレントカンパニ-とは-
第3回 組織文化とミッション・ビジョン・バリュ-,パーパス、経営戦略
第4回 東証プライム企業社員の意識調査からみた組織文化(戦略活性度・組織活性度)の研究
第5回 日本と欧米の人事・雇用慣行の研究
第6回 日本と欧米の人事・雇用慣行の研究
第7回 日本と欧米の人事・雇用慣行の研究
第8回 経営戦略・人事政策の研究
第9回 経営戦略・人事政策の研究
第10回 経営戦略・人事政策の研究
第11回 経営戦略・人事政策の研究
第12回 経営戦略・人事政策の研究
第13回 経営戦略・人事政策の研究
第14回 今後のキャリア指針・まとめ
授業時間外の学修の内容
授業終了後の課題提出/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
1.キャリア開発支援(個人面談等)は,本コース(授業)修了後も適時行います.
課程修了後も可能です.
2.連絡先
h-sugaya@tamacc.chuo-u.ac.jp(メール)・LINEなど
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 20 | 最終回に成果レポートを提出していただきます(A4 1枚以上). |
平常点 | 80 | コース(授業)への取り組み姿勢、貢献を最重視します. |
成績評価の方法・基準(備考)
レポート(最終回に提出)の返却時に,日常の取り組み姿勢を観て,「自分の強みを今後どうキャリアに活かしていくか」というキャリア開発指針も併せて,個別にフィードバックします.
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
1.疑問点等を後に持ち越さないよう,理解度を常に確認しながら進めて行きます.
2.レポート(最終回に提出)は,「自分の強みを今後どう活かしていくか」という将来のキャリア開発の指針も含めて総括的にコメントし,後日各人にフィードバックします.
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)/ディスカッション、ディベート/グループワーク/プレゼンテーション/その他
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
全回対面形式を採ります.
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
適宜,必要に応じて活用します.
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
大手金融(1988年~2000年)1997年課長
早稲田大学(2000年~2002年)国際経営学研究
大手ヘルスケア(2002年~2009年)2005年部門長
中央大学(2003年~)総合政策研究,政策企画(2007年~)
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
経営学のフレームワークで、実践の場においてどのように政策として実現・実行するかを考察していきます.
テキスト・参考文献等
1.特定のテキストは定めません.毎回必要なレジュメを配布します.
欠席時は、翌週に渡します。
2.各人の研究志向に合わせて,必要な文献等を適宜紹介します.
その他特記事項
1.各人の研究分野・興味に留意して進めます.
2.必要に応じて,補講を行なうことがあります.
3.集中力維持のため,毎回適時リフレッシュタイム(休憩)を取ります.