シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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経営リスクマネジメント | 2024 | 後期 | 土1 | 総合政策研究科博士課程前期課程 | 後藤 茂之 | ゴトウ シゲユキ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
PG-ER5-201L
履修条件・関連科目等
本講義のテーマである「経営リスクマネジメント」は、企業が現実の社会・経済で活動する中で直面する様々なリスクへの対応を扱っています。今社会環境は大きく変わろうとしています。
国連の持続可能な開発目標(SDGs)が今後の社会が持続的に発展していくために解決しなければならないグローバルの課題を提示しました。また、地球温暖化の進展や生物多様性の喪失が危惧されているように我々の地球環境は大きく変化しています。このような環境変化の中で、企業は、環境・社会・企業統治(ESG)といった要素を重視して経営を行わなければなりません。これらの変化が生み出す新たなリスクへの適切な対応ができなければ企業は存続ができません。
リスクマネジメントを実践していくためには、経営、経済、商学など企業活動に関わる学問、あるいは企業が活動の場としている社会に関わる幅広い学問領域(社会学、環境学など)の知見が必要となります。
既にこれらの領域での学習経験があればそれを参考にすることが可能だと思われます。ただ授業ではこれらの領域に関わる基礎的な項目にも触れながら進めていきます。その中で、これらの知見にふれていきますので、前もって学習しておく必要はありません。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
産業革命以降、資本主義経済は大きく発展しました。過去50年の間に世界の人口は2倍になり、CDPは5倍になったのです。しかし、それと同時に、経済発展の原動力になった生産性の向上は、例えば化石燃料の燃焼に伴う地球温暖化に代表される地球環境を悪化させました。また、人口増加に伴う居住や食料供給の増加のための土地改変(森林の伐採による農地の拡大や都市化の拡大など)が生態系を大きく悪化させた結果生物多様性の喪失が進行しています。これら今日の社会が抱える解決しなければならない課題として、国連から持続可能な開発目標(SDGs)が提示されています。
このような流れを踏まえて企業経営にとって、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)は、必須の検討事項となっています。
同時に新たなリスクとして、サイバーリスク、気候変動リスク、新型コロナ・パンデミックリスクにさらされ、企業活動には不確実性がますます拡大しています。
本講義のテーマである「経営リスクマネジメント」は、企業が社会に付加価値を提供し、価値創造に向けて活動を続けていく中で、その価値を阻害するリスクに対してどのように対処するか、そして倒産の危機を回避し、持続的成長をいかに維持していくかを検討する実学といえます。
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企業も生き物です。われわれの人生と同様、時代の変化を先取りし、ビジネスモデルを変革していかなければなりません。
本講義では、リスクマネジメント論の基礎を学ぶとともに、現代社会が直面している脅威の本質を理解し、新たな不確実性に企業はどのように対処していけばよいのかを検討します。企業経営も皆さん一人ひとりが人生を生き抜く際の生活経営と類似しています。その意味で皆さんの普段の意思決定とも関連付けながらこれらの課題に対し一緒に考えながら、リスクマナジメントを学んでいきましょう。
科目目的
本授業は、「経営リスクマネジメント」について必要となる理論を理解し、それをいかに使っていくか、実践的知識を身につけることを目的にしています。
現在多くの企業が直面している課題である、気候変動やサイバーセキュリティ、感染症といった具体的な問題について、企業にとってのリスクと機会について一緒に考えていきます。
講義の中では、過去の具体的な事例を具体的に検討する機会を作っていきます。私のこれまでの長い実務の経験も踏まえてリスクマネジメントの意義や対応についてもお話したいと考えています。
講義終了時には、受講者がリスクに関する自分なりの考え方を持ち、リスクに対し自らアプローチしうる基礎力を身につけられることを目標としています。
到達目標
現代の企業にとって、リスクマネジメントは、不可欠な知見です。
企業活動は、将来に対して人・物・金・情報を投入して、新たな価値を創りだす活動です。しかし、将来は誰にも正確に予測できません。どんなに綿密に戦略を立てたとしても、その意図通りに事が運ばないことも多いのが実情です。つまり、リスクが常に存在するわけです。このようなリスクにいかに対応すればよいのかを学んでいきます。
本講義「経営リスクマネジメント」では、現実の企業の経営管理について理解した上で、リスクマネジメントの意義と体系について学ぶことにより、企業活動における実践的な知見を身に着けることを目的にしています。
実社会では様々なリスクに直面することになります。講義終了時には、受講者がリスクに関する自分なりの考え方を持ち、企業の業務に携わった際にも、リスクに対し自ら実践的に対応していける基礎力の構築を目標としています。
授業計画と内容
企業活動は、将来に対して人・物・金・情報を投入して、新たな価値を創りだす活動です。しかし、将来の具体的なシナリオは誰にも正確に予測できません。今日企業が経験している脅威は、サイバー攻撃、気候変動、感染症といった問題です。このような伝統的なリスクとは異なるリスクに対して企業はいかに合理的に意思決定し、対処すべきなのでしょうか。
リスクマネジメントを実践するためには、リスクの概念を正しく理解し、合理的に意思決定し行動しなければなりません。今日では、行動経済学などによって、不確実性に直面したときに人が陥りやすい認知や意思決定の傾向についても研究が進んでいます。講義では、このような現実的な意思決定や行動についても考えていきます。
第一回 ガイダンス(講義の目的・不確実性のマネジメントの意味の説明)
第二回 リスクマネジメント論(その意義と企業経営との関係の説明)
第三回 経営管理の失敗事例の検討(エンロン事件を題材に)
第四回 不確実性の意思決定と組織文化(リスクに対する組織の行動)
第五回 SDGsと企業の戦略論、価値創造への影響
第六回 リスク社会の進展と企業経営
第七回 長期的視点から見た企業価値追求と非財務情報(ESG)の開示
第八回 自然災害と保険(リスクマネジメントの一般的な手段である「保険」の仕組みと効用を通じてリスク処理の意味を考察)
第九回 気候変動問題をいかにリスク管理するか
第十回 生物多様性問題にいかに対応するか
第十一回 サイバー攻撃リスクへの対応
第十二回 感染症とリスクマネジメント(新型コロナへの対応を振り返って)
第十三回 社会の価値観の変化と企業の社会的責任と倫理
第十四回 戦略、リスク、倫理の統合管理(SDGs、ESG時代における企業の社会的責任と、気候変動、生物多様性、感染症、サイバーリスクといった新たなリスク社会における経営管理の強化のまとめ)
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
講義の初めに前回の講義の質問を受けつけますので、復習時の疑問点などを解消してください。
また、事業中にはリスクに関連する疑問については、幅広く受け入れるつもりです。直接授業で触れられていない事項であっても、遠慮なく質問をして疑問を解消してください。
また、適宜内容の理解を確認するため、あるテーマに関するレポートや、理解を深めるために事例検討における質問や小レポートの提出を課します。その内容も踏まえて、全体の理解度を確認しながら講義を進めていきますので、安心して受講ください。
授業の終わりには、質疑の時間を設ける予定です。
なお、最初の授業におけるガイダンスで、授業の進め方や、質問や相談などの連絡方法などをお伝えする予定です。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 50 | 14回の授業が終了した段階で、期末提出レポートの提出を求めます。A4 3~4ページ程度で自分の考えをまとめてもらう予定です。 |
レポート | 25 | 小レポートを、授業内容の区切りのよい段階で、理解度を確認するために課題として提示します。A4 1~2枚程度に自分の考えをまとめてきて発表してもらいます。発表内容については、授業の中でコメントをし、留意点や課題を適宜指摘します。 |
平常点 | 25 | 出席および議論における積極性と発言内で評価します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
成績評価は、次の通りです。
(100―90点)、(89―80点)、(79―70点)、(69―60点)、(59点以下、不合格)
小レポートについては、授業の中で要旨を発表してもらい、理解度を確認し、コメントをしたいと考えています。
また他の受講者との意見交換も重要だと考えています。この中で出てきた重要な論点があれば、授業で取り上げたいと考えています。
このように自分の考えをまとめること、ディスカッションの中で多面的に考察するといった経験を通じて、期末レポートの中に成果として反映されることを期待しています。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/プレゼンテーション
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
対面授業とライブ型オンライン授業を併用する形で実施します。
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
1977~2015年、三井住友海上火災勤務。損害査定業務、国際業務、海外駐在員、経営企画、リスク管理に関する業務を経験。
2015年~現在、有限責任監査法人トーマツ勤務、コンサル業務に従事。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
保険会社の業務はまさにリスク管理の代表的な手段である保険サービスを扱うものであり、授業でもそのときの経験談についても話す機会があるものと考えています。
コンサル業において、最近はリスク管理に関わる依頼が多くなっています。この経験も授業の中で反映していたいと思っています。
テキスト・参考文献等
テキスト
後藤茂之『リスク社会の企業倫理』中央経済社、2021 年
参考文献
後藤茂之『ESGリスク管理』中央経済社、2023年。