シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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ヨーロッパ統合とEU法 | 2024 | 後期 | 木4 | 総合政策研究科博士課程前期課程 | 庄司 克宏 | ショウジ カツヒロ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
PG-IS5-201L
履修条件・関連科目等
総合政策学部の「ヨーロッパ統合と法Ⅰ」および「ヨーロッパ統合と法Ⅱ」を、本科目の受講開始時までに学修していることが不可欠である。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
EUを取り巻く国際関係を踏まえながら、EU法政策の応用的授業を行う。EUは、物・人・サービス・資本の自由移動を意味する「域内市場」(単一市場)を完成する中で、その政策分野を環境政策や社会政策などの関連分野にも広げることにより、域内市場は単なる市場統合ではなくEUガバナンスのインフラを構成するようになっている。域内市場による経済的繁栄は、周辺諸国のEU加盟という拡大をもたらした。また、EUは単一通貨ユーロを擁するユーロ圏を包含している。さらに、EUは域内市場とは別に(それとも関連しつつ)、域内国境管理の廃止、対外国境管理、共通難民庇護政策、共通移民政策、警察・刑事司法協力などを内容とし、第三国国民をも対象とする「自由・安全・司法領域」を有するに至っている。
しかし、これらのサクセス・ストーリーの一方で、EUは統合の限界に直面しているようにも思われる。たとえば、第1にウクライナなどの旧ソ連諸国や西バルカン諸国のEU加盟をどのように進めるかという拡大の課題がある。他方で、拡大に対応して機構改革などEU統合の深化が不可欠となる。とくに加盟条件であるコペンハーゲン基準に含まれる人権・民主主義・法の支配について、EU加盟後に司法権の独立を侵害する形でハンガリーやポーランドが違反していることを踏まえ、この点の是正が不可欠である。第2にEUは2010年代前半にユーロ危機に直面し、財政同盟がないまま通貨同盟を進めた弱点をが露呈したが、依然として克服されていない。第3に2015年欧州難民危機や最近のCOVID-19パンデミックにより、域内国境管理の復活や共通難民庇護政策(とくにダブリン規則)の失敗により「自由・安全・司法領域」も立て直しが迫られている。
本授業では、これらの課題に対してEUがどのように取り組もうとしているのかを、EUレベルの政策形成やEU司法裁判所の判例法から考察する。
なお、2回目以降の授業では、事前にEU法判例(英語)1件を課題として要約の提出を求める。
科目目的
欧州連合(EU)は、複数の主権国家がその基本的形態を維持したまま、主権を共有することにより、どこまで協力を深めることができるのかという前例のない「実験」を行っている。
この科目は、このようなEUの超国家的な営みについて、域内市場における4つの自由移動と各国の税制や環境規制などとの関係、Brexit(イギリスのEU離脱)およびその後の英EU関係、ハンガリーやポーランド法の支配原則違反に対するEUの対応、ユーロ圏における財政同盟の可能性、シェンゲン協定やダブリン規則の改正などを事例として検討することにより、EUという「実験」が国際社会に対してどのようなインプリケーションを有するのかについて考えることを目的とする。
到達目標
本科目を履修することにより学生に期待される到達目標は、第1にEUの法と政策に関する基礎的な概念と理論を習得することである。第2にEUの法と政策がグローバルな関係においてどのような影響力を持っているのか、また、それはなぜなのかを事例研究を通じて理解することである。第3に法と政策の観点から、EU以外の国際機組織や国際協力枠組みとの比較を行うことができるようになることである。
授業計画と内容
第1回 EUの法制度および政策分野
EU法判例の読み方の解説
第2回 域内市場法における自由移動と各国環境規制の関係と調整
EU法判例要約の学生報告と教員コメント
第3回 域内市場法における自由移動と各国税制の関係と調整
EU法判例要約の学生報告と教員コメント
第4回 欧州統合の方程式とその限界
EU法判例要約の学生報告と教員コメント
第5回 Brexit(1)英EU交渉プロセス
EU法判例要約の学生報告と教員コメント
第6回 Brexit(2)イギリスのEU離脱協定 (北アイルランド議定書を含む)
EU法判例要約の学生報告と教員コメント
第7回 Brexit(3)英EU貿易協力協定
EU法判例要約の学生報告と教員コメント
第8回 ユーロ危機と財政同盟
EU法判例要約の学生報告と教員コメント
第9回 単一通貨ユーロと2速度式欧州
EU法判例要約の学生報告と教員コメント
第10回 加盟国の法の支配原則違反とEUの対応(1)ハンガリーの事例
EU法判例要約の学生報告と教員コメント
第11回 加盟国の法の支配原則違反とEUの対応(2)ポーランドの事例
EU法判例要約の学生報告と教員コメント
第12回 自由・安全・司法領域(1)シェンゲン協定
EU法判例要約の学生報告と教員コメント
第13回 自由・安全・司法領域(2)欧州共通難民庇護政策 と2015年難民危機
EU法判例要約の学生報告と教員コメント
第14回 総括・まとめ
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
事前に課題として提示するEU法判例の要約を行うことが求められる。
1週間あたり4時間の学修を基本とする。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 50 | EUの法と政策についての基礎知識を理解したうえで、EUが直面する課題にどのように取り組んでいるかを「主権の共有」という観点から説明できるかどうかを評価する。 |
レポート | 35 | 事前に提示するEU法判例(英語)の要約 |
平常点 | 15 | 質問、応答、コメント、反論などによる授業への参加度を基準とする。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
プレゼンテーション
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキスト
庄司克宏著『新EU法 基礎篇』岩波書店、2013年
庄司克宏著『新EU法 政策篇』岩波書店、2014年
庄司克宏著『はじめてのEU法 第2版』有斐閣、2023年
参考文献
庄司克宏著『ブレグジット・パラドクス―欧州統合のゆくえ』岩波書店、2019年
庄司克宏著『欧州ポピュリズム』ちくま新書、2018年
アニュ・ブラッドフォード著、庄司克宏監訳『ブリュッセル効果』白水社、2022年
G.マヨーネ著、庄司克宏監訳『欧州統合は行きすぎたのか(上)(下)』岩波書店、2017年
庄司克宏編『EU環境法』慶應義塾大学出版会、2009年
庄司克宏著『欧州連合 統治の論理とゆくえ』岩波書店、2007年