シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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【通教 通信授業】経済原論 | 2024 | その他 | ー | 通信教育課程 | 高島 浩之 | 1・2年次配当 | 4 |
科目ナンバー
JD-EO1-405L
履修条件・関連科目等
履修条件:通信教育課程の学生対象
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
仮に誰も働かなくなってしまうとすると、言いかえるとあらゆる労働が停止したとすると、人類はたちまち死滅してしまうということは、誰にでも分かることである。この自明のことをはっきりと認識することが経済学の出発点となる。人間は絶えず自然に働きかけ、自然を人間の生存に適したものに作りかえ、自然の果実を消費することによって生きている。この活動がすなわち労働であり、労働は人類生存の基本条件なのである。
ところでその労働は、人間にとってどういう意味を持つものであろうか?アダム・スミスという人は『諸国民の富』という経済学の最初の古典を書いた人として有名であるが、そのスミスは労働を人間が財貨を得るためにその代償として支払わなければならない「労苦と骨折」と定義した。何か「効用(utility)」を得るために負わなければならない「非効用(disutility)」というように定義する経済学者たちもいる。労働がそういう面を持っていることは確かであろう。特に或る一定時間以上働かされるとなると、本当に労働というものはいやなものである。しかし、労働というものは、もともとそういうものであろうか? それがなくては生きていけないが、それなしに生きられたら極楽だというようなものにすぎないのだろうか? そうではない、労働は本来は人間にとってもっと積極的なそして本質的な意味を持っているのだ、と答えた人がいる。それがもう一人の偉大な経済学者カール・マルクスである。マルクスという人は資本主義社会をひっくり返すことを専門にしていた人だというように思って、毛嫌いする人も多いようだが、しかし案外健康な考え方をする人であったように思う。人間とか社会とかについて深く根本的に考えるという点では、アダム・スミスなどよりも優れていたといえる。そのマルクスは、労働について次のように言っている。すなわち、人間は労働することによって動物と区別される存在に、人間的存在になるのだと。これは新鮮な響きを持つ言葉であり、思想ではないか。彼の言うところをもう少し詳しく聞いてみよう。
マルクスは、人間の労働は三つの特色をもっているという。第一には、動物の本能的な所作と異なって人間は何か目的を意識した労働を行う。例えば、大工が家を建てる場合、まずその家を設計する。つまり、建築労働に取りかかる前に、彼はまずどういう家を作るかを頭の中に想い描く。頭の中で家を建てる。そうしてから、建築労働の結果として家ができる。このように、はじめに目的として設定し意識したものが労働の結果として出てくる。これを目的意識性というように言うが、これが人間労働の第一の特色である。蜂や蜘蛛は下手な大工や機織りが赤面するほどうまく巣を作るが、巣を作る蜂や蜘蛛の本能的な(自然の営みの一部であるにすぎない)所作とくらべて、人間の労働が優っている点は、目的意識的だという点にある。こうマルクスは論ずる。人間の労働の第二の特色は、道具とか機械とかそういうような物──これを労働手段というが──を、作りそして用いるという点にある。人間が立って二本の足で歩き始めると、前肢が手になる。ここから、人間の自然からの独立が始まる。道具はこの手の延長であり、それのさらに発展したものが機械である。こういう道具やその発展したものとしての機械を、人間は自分で作りそして用いる。これが人間の労働の第二の特色である。人間は素手で自然に働きかけるのではなく、労働手段を使って自然に働きかけるのである。いろいろな機械などの労働手段を作ったり、その労働手段を使って、自然に働きかけたりすることは、自然が持っている、或いはそのさまざまな営みを支配している法則を意識的に利用するということにほかならない。これを技術という。人間労働の第二の特色は、言いかえると、技術性があるということになる。目的を実現するために自然の諸法則を利用する。こういう労働の営みの中で、人間は次第に自然から独立して人間的存在になってゆくのだというのがマルクスの考えである。第三の特色は、人間の労働は何らかの形で社会的労働として行われる、というところにある。ここがばらばらにではなく社会的に組み合わさった形で、労働する、すなわち自然に働きかける。この社会的労働を通じてこそ人間は社会的存在になるのだ、というのがマルクスの考え方である。こういう三つの特色を持った労働によって、人間は自然を絶えず作りかえると同時に人間自身を作りかえてゆく。人間はそれ自体自然の一部であるが、その自分自身の自然のなかに眠っている諸能力が労働そのものの中で目覚め発展してくる。労働というものは本来はそういうものであった。その労働が資本主義的な経済システムのもとでは、その本来のものと違ったものになる。極言すれば人間が「生きた労働用具」となる。それがどうしてであるか?こういうように問題を立て、これを順を追って解き明かしてゆくのが経済学という学問であり、その基礎理論を説くのが、「経済原論」である。
科目目的
経済体制が維持されるためには、生産財と消費財が毎年規則的に生産され、経済活動に不可欠な労働力が正常な形で再生産されていることが必要である。
資本主義経済では、生産財と消費財の再生産が資本の運動を介して達成される。この生産財・消費財の継続的生産が如何になされているかの解明を通して、資本主義の経済構造とその運動法則を理解する。
到達目標
「経済原論」は、社会体制分析の学としての経済学の全体系の根幹部分をなすものであり、それは歴史的社会としての資本主義社会の経済構造とその運動法則を原理的かつ体系的に明らかにすることを課題とします。この授業を通して、学生が資本主義経済の構造を理解するとともに、現在の経済問題に関する諸課題を解決する方策を提案できるようになることを目標とします。
授業計画と内容
・商品の二要因と労働の二重性との関連を学ぶ。
・商品の交換過程で貨幣が成立する必然性を学ぶ。
・貨幣の機能について学ぶ。
・貨幣の資本への転化を学ぶ。
・剰余価値の生産方法について学ぶ。
・資本関係の再生産について学ぶ。
・資本蓄積と雇用について学ぶ。
・資本の循環について学ぶ。
・資本の回転について学ぶ。
・単純再生産の均衡条件について学ぶ。
・拡大再生産の均衡条件について学ぶ
・費用価格と利潤率について学ぶ。
・価値の生産価格への転化について学ぶ。
・生産力の発展と利潤率の傾向的低下について学ぶ。
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
経済原論を学ぶ者は、資本主義経済の歴史的運動法則の解明を課題とした理論家たちの学説にも関心を持つ必要がある。経済学説史として、アダム・スミス、リカード、マルサス、マルクス、J.S. ミルなどの思想に興味・関心をもてば、経済原論の課題を明確に自覚することができる。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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その他 | 100 | 試験(科目試験またはスクーリング試験)により最終評価します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
【通信教育課程はなし】
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
【通信教育課程はなし】
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
【通信教育課程はなし】
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
通信教育課程 在学生サイト 教科書一覧を参照
https://sites.google.com/g.chuo-u.ac.jp/tsukyo-current/textbook?authuser=0
その他特記事項
【通信教育課程はなし】