シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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フランス文学演習(3) | 2024 | 通年 | 木3 | 文学部 | 小室 廉太 | コムロ レンタ | 3・4年次配当 | 4 |
科目ナンバー
LE-LT3-D606
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
昨年度に引き続き、現代フランス文学を代表する作家であり、2022年度ノーベル文学賞受賞者のアニー・エルノー Annie Ernaux(1940-)をとり上げます。
今年度は2011年に発表された "L'autre fille"(『もう一人の娘』) を熟読します。本作は作者が生まれる前に亡くなった姉(「あなた」"tu" )への手紙という形式を用いた物語です。本作を通じて自伝や伝記、フィクションの定義についても考察します。
明瞭なフランス語で記された本作を読むことで、フランス語読解の技術や、日常生活で使われる語彙も自然に学んでいける筈です。単に訳すだけではなく、日本語表現についても考えていきましょう。
科目目的
現代フランス文学を読むことで、フランス語の読解能力を高め、同時に語彙を習得します。
また、作品内容を通じて、現代フランス社会についても考察します。
到達目標
フランス語の基礎文法を復習しつつ、辞書やインターネットなどを活用して文学作品を精読する能力を習得します。
授業計画と内容
毎回おおよそ3~4ページを3、4名に担当してもらい、1年で1冊を読み終える予定です。
履修者の人数によりますが、皆さんには前後期それぞれ3回の訳文発表を担当してもらう予定です。
以下に毎回の授業進行予定と内容を示します。なお、「あなた」と記されているのは、原文ではtuです。
【前期】
第1回 授業ガイダンス、アンケート/エルノーの生涯と作品
第2回 pp11-14 2枚の写真/2つの墓
第3回 pp14-17 家族手帳/秘密/1950年のヴァカンス
第4回 pp17-20 母とル・アーヴルから来た女性の会話/「もう一人の娘」の死
第5回 pp20-24 会話の光景/過去文における現在形/チェーザレ・パヴェーゼの命日/「一人っ子」
第6回 pp24-26 「私」の信仰心/両親に対する愛情/不在の「あなた」との比較/母と「私」の関係
第7回 pp27-30 “floué(e)” / “dupe” /書くことの二重性/幼少時に記した物語/完璧な幸福のイメージ
第8回 pp30-33 母による「あなた」の話/母の意図:語ることによる悲しみの克服
第9回 pp35-38 「私」の物語/「あなた」と「私」の共通点:体の弱さ/「私」の破傷風と母の信仰
第10回 pp38-41 「私」の幼少時の記憶/「あなた」と「私」の物語:順序と記憶/破傷風と死
第11回 ppp41-44 「あなた」の死と「私」の生の関係性/生きる理由:書くこと/「あなた」の写真
第12回 pp44-49 「あなた」の幸福と死/「私」の死への思い/レゼールのデッサン/母の献身
第13回 pp49-53 「私」の母への思い/「あなた」の母と「私」の母:異なる側面/将来について
第14回 【前期授業のまとめ】
【後期】
第1回 前期レポート解説 pp53-55 「私」に隠された「あなた」/「あなた」の名前/おさがりの鞄
第2回 pp56-58 書くことの源泉/「あなた」のことを両親に尋ねなかった理由
第3回 pp59-62 沈黙/1983年:痴呆症の母の記憶/1965年:父の言い間違え/1952年:父の怒り
第4回 pp62-66 墓の彼方の回想/完璧な、神話としての「あなた」/聖女としての「あなた」の写真
第5回 pp66-69 不可能な物語/映像と音声なき死者/書くことで埋められる空白/両親の心配と苦悩
第6回 pp69-73 リールボンヌからの手紙/「あなた」の死/「私」の心情/「私」の思春期
第7回 pp73-75 「私」の生への欲望/「一人っ子」であるということ/「あなた」の年齢/身代り
第8回 pp75-78 書くこと:「あなた」の再生/ “tu” の用法/「私」の苦悩と幸福/キリスト教の告白
第9回 pp78-84 「あなた」を探して/父とその姪、そして「あなた」の写真
第10回 pp84-87 写真の背景/1937年、ル・アーヴル/リールボンヌのカフェ兼住宅のイメージ
第11回 pp87-89 リールボンヌの様子/「あなた」と「私」の聞いた子守歌/「あなた」と「私」
第12回 pp90-93 数年前のリールボンヌ再訪/昨夏のリールボンヌ再訪/かつての店舗兼住宅の内部
第13回 pp94-97 生と死の部屋/ピーターパン/墓の購入/「もう一人の娘」/「あなた」への手紙
第14回 【年間授業の総まとめ】 後期レポート解説
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
【予習:3時間】
テキストの指定箇所の訳を、毎回数人の学生に担当してもらいます。訳文発表は平常点として加算します。担当しない学生も、各自訳文を考えてきてください。毎回「訳しきれないこと」について質問する予定です。
【復習:1時間】
未知の単語や表現を語彙集にまとめてください。
授業を聞いた上で個人訳を作成しましょう。また、訳文担当者には日本語訳をmanabaに提出してもらい、クラス全員が閲覧できるようにします。年間の授業終了時には一冊の訳文が出来上がる予定です。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 70 | 各学期末にエルノーの作品の訳文と、その文章についてのレポートを提出してもらいます。 |
平常点 | 30 | 授業出席回数と、授業の参加度(発表)により評価します。欠席は減点になるので注意してください。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
タブレット端末/その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
コロナ禍などでオンライン授業になった場合:
manabaを通じて訳文発表と質問回答をしてもらう予定です。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
【テキスト】
テキストは以下のものを生協から購入してください。
Annie ERNAUX, "L'autre fille", Gallimard, 2011 (Gallimard-Folio, 2023) ISBN : 978-2-07-301684-3
【参考文献】
次のエルノー作品のなかで、本作の内容が描かれています。
Annie ERNAUX, "La Place", Gallimard, 1983 (邦訳:アニー・エルノー 堀茂樹 訳 『場所』 早川書房 1993年)
Annie ERNAUX, "Une femme" Gallimard, 1988 (邦訳:アニー・エルノー 堀茂樹 訳 『ある女』 早川書房 1993年)
次にあげるものは自伝に関する参考文献です。
Philippe LEJEUNE, "Le pacte autobiographique", Seuil, 1975(邦訳:フィリップ・ルジュンヌ 井上範夫、花輪光、住谷在昶 訳 『自伝契約』 水声社 1993年)
三浦雅士 『出生の秘密』 講談社 2005年
【その他】
エルノーの原作はこの数年、数多く映画化されています。テキストには直接関係ありませんが、機会があれば映画館やDVDで見てください。
"J'ai aimé vivre là" (2020)
"Passion simple" (2020)
"L’événement" (2021)
その他特記事項
参考URL
研究者によるアニー・エルノーサイト:未発表エッセイなどが公開されています。(英語・フランス語)
https://www.annie-ernaux.org/fr
フランス公共ラジオチャンネル France Culture のアニー・エルノー特集ページ(フランス語)
https://www.franceculture.fr/personne/annie-ernaux
フランス公共ラジオチャンネル France Culture の2021年エルノーインタビュー映像(フランス語)
https://www.youtube.com/watch?v=NjuyQNPo-Y8
語文コースHP https://sites.google.com/g.chuo-u.ac.jp/futsubun-gobun/
語文コースブログ https://chuo-bun-futsubun-gobun.blogspot.com/