シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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日本語教育B | 2024 | 後期 | 土2 | 文学部 | 木谷 直之 | キタニ ナオユキ | 1・2年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-JA1-A303
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
国内外の日本語教室で実際に日本語がどのように学ばれ、教えられているのかを教材・教具や教授法の面から概観します。主要な教授法の背景にどのような理論があるのか、言語学や教育心理学、認知言語学、第二言語習得研究などの視点から紹介します。そして、日本語教育研究がどのように行われているか、研究と実践の連携に焦点を当てて考えます。
科目目的
大きく2つの目的があります。
①さまざまな教授法理論がどのように生まれてきたのか、実際の現場でどのように用いられてきたのか、どのような長所・短所を持っているのかなど、これまでの日本語教育を支えてきた教授法理論について基礎知識を得ること。
②「第二言語習得研究」がこれまで明らかにしてきたことを知り、その知見が実際の教育現場でどのように活用されているかを知ること。
到達目標
以下の4点を到達目標とします。
①学生の皆さんがさまざまな外国語教授法の理論的背景と実際の方法を知り、日本語教育の現場で日本語がどのように教えられてきたかを自分の言葉で説明できるようになること。
②学生の皆さんが講義を通して学んだ教授法の考え方を用いて、自分自身の外国語学習経験を批判的に分析・考察できるようになること。
③学生の皆さんが「第二言語習得研究」がこれまで明らかにしてきた重要な知見を知り、自分自身の外国語学習経験を「第二言語習得」の観点から批判的に分析・考察できるようになること。
④日本語教育に関連して、どのような調査研究が行われ、その結果、どのようなことが明らかにされてきたかを知り、外国語学習・教授の分野に興味関心を持つこと。
授業計画と内容
第1回:導入・日本語を教えるということ
第2回:第一言語習得(First Language Acquisition)の研究
第3回:第一言語習得の研究に影響を受けた教授法‐外国語教授法の歴史的変遷‐
第4回:オーディオリンガル・メソッド(1)‐理論的背景‐
第5回:オーディオリンガル・メソッド(2)‐練習方法‐
第6回:コミュニカティブ・アプローチ(1)‐理論的背景‐
第7回:コミュニカティブ・アプローチ(2)‐教授技術と授業設計‐
第8回:教材分析 ‐代表的な日本語教科書を分析し、練習方法や教室活動の実際を知る‐
第9回:評価方法、特にパフォーマンス評価の方法を考える
第10回:自然習得と教室習得
第11回:第二言語習得理論(1)‐中間言語‐
第12回:第二言語習得理論(2)‐5つの仮説‐
第13回:第二言語習得理論(3)‐インプットからアウトプットへ‐
第14回:第二言語習得理論(4)‐授業設計のガイドライン‐
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 70 | レポートのテーマは2つあります。テーマの詳細は、授業の中で連絡します。 レポートの評価では、講義の中で紹介した外国語教授法の理論や実際の教授法の観点から、自分自身の外国語学習の経験を批判的に分析・考察し、まとめることができているかどうかを評価します。いろいろな教授法理論を説明するだけでなく、その考え方を使って自分自身の外国語学習経験(教えたことがある人は教授経験)を考察できているかどうかが評価のポイントになります。 |
平常点 | 30 | 毎回の授業のあとで、リアクションペーパーの提出を課します。リアクションペーパーには、①講義を受けて新しく知ったこと、自分の経験と関連付けて気が付いたこと/発見したこと、特に興味を持ったこと、②講義の内容について疑問に感じたこと、質問したいことの2点について自由に書いてもらいます。リアクションペーパーの記述内容から、講義の理解度、授業への参加度などを総合的に評価します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
私は国際交流基金(日本語国際センター)で25年余り仕事をしています。
国際交流基金は、日本と海外の国々との文化交流を支援・促進するための独立行政法人です。
国際交流基金は、大きく、①文化芸術交流、②日本語教育、③日本研究・知的交流の3つの交流事業に携わっています。
私は専任講師として、②の日本語教育事業に携わってきました。私が所属していた国際交流基金日本語国際センターは、世界のさまざまな国や地域で日本語を教えている日本語教師(多くはノンネイティブ教師)を日本に招聘し、日本語と日本語教授法を中心とした教師研修を行っています。年間、400人以上の海外の日本語教師が日本を訪れ、短い研修で1か月、長い研修では6か月間、日本で研修を受けています。ただし、2020~2021年度は、世界的なコロナ・ウィルス感染拡大のため、訪日研修が実施できず、代わりにオンライン型の研修事業を期間と内容を変え行ってきました。
また、国際交流基金は、海外での日本語教育支援のため、30余の海外センターおよび会議事務所を持っています。私はこれまでエジプト(カイロ大学)、英国(ロンドン日本文化センター)、インドネシア(ジャカルタ日本文化センター)に赴任し、計8年半ほど海外で、主に高等教育段階の日本語教育支援と、初中等教育段階のノンネイティブ日本語教師に対する研修事業の仕事をしてきました。
国際交流基金退職後は、多文化共生センター東京の日本語講師として、海外の中学校を卒業し日本の高校への進学を希望している外国人生徒の日本語および教科(特に数学と英語)の学習支援の仕事をしています。海外の多様な学習環境のもとで小学校・中学校時代を過ごしてきた生徒たちが、日本の高校に進学するためには、日本語や各教科の学習だけではなく、日本の学校生活や学校文化、日々の生活習慣等についても学び慣れていくことが必要です。
「日本語教育B」では、その実務経験から得た知識や情報、経験を活かしながら、講義を進めたいと考えています。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
私の実務経験と授業内容との関連は、以下の2点です。
まず、私は職務上、海外の日本語教師の皆さんと直接、いろいろなやりとりをする機会が多く、その中で海外の日本語教育の現場でどのような教材や教具、教授法が用いられているか、そして、その教授法にどのような課題や問題点があるかについて情報・意見交換をしています。また、私自身がさまざまな学習背景を持つ学習者に日本語を教えてきた教授経験の中で、諸々の教授法のいい点、足りない点等について考えてきました。それらの経験を踏まえて、実際に日本語教育の現場で日本語の教え方と学び方について、どのような試行錯誤が行われているのかを講義の中でお話ししたいと思っています。
次に、私は、海外の職場で仕事をする中で「第二言語習得研究」に興味を持ち、大学や大学院の学生に研究指導する中で、第二言語習得研究の成果を現場の教え方にどのように活かしていけばいいかについて考えてきました。私がずっと携わってきた教師研修の授業やワークの中でも第二言語習得研究の知見を活かした教え方について、学生や同僚の教師とディスカッションを重ねてきました。日本語教育Bの講義では、第二言語習得研究でこれまでの重要な知見を紹介・説明し、それらが現場でどのように活用されているかについても、具体的な例を交えながらお話したいと考えています。
テキスト・参考文献等
参考文献等は授業時に随時紹介します。