シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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ドイツ文化講義(2)(4)/ドイツ文化講義(2)(4)(6) | 2024 | 後期 | 月4 | 文学部 | 高橋 慎也 | タカハシ シンヤ | 1~3年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-DT1-C514,LE-DT1-C516
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
前期に引き続き、日本とドイツ語圏・欧米の著名な演出家・振付家による舞台作品のシーン分析を通して、それぞれの演出法の特徴について解説します。後期の授業ではオペラ『松風』、『静かな海』、『トリスタンとイゾルデ』、音楽劇『Mea Culpa(私の贖罪)』を例として、オペラと音楽劇の演出方法について解説します。これらの舞台はすべて、愛と死の関係を主題としています。愛の成就を死の中に見出す「愛の死(Liebestod)」とは、ワーグナーが自身の楽劇『トリスタンとイゾルデ』で表現した愛の完成形です。この「愛の死」を肯定的に捉えるのではなく、超越すべき理念として批判的に提示する演出についても解説します。
オペラ『松風』は世阿弥の能楽版を原作とするドイツ語オペラです。作曲は細川俊夫、振付はサシャ・ヴァルツ、舞台美術は塩田千春です。ヴァルツは現代ドイツのタンツテアターの代表的な振付家です。オペラ『松風』は台本、音楽、ダンス、美術が統合された総合芸術作品となっています。このオペラでは原作とは異なり、ダンサーの一人が神道の巫女として登場しています。また原作の特徴である鎮魂だけでなく、女性差別に対する批判も盛り込まれています。このオペラは2012年の初演の後にも再演されており、国内外の劇評は総じて肯定的です。
オペラ『静かな海』の脚本は観世元雅作『隅田川』と森鴎外『舞姫』を原作として作られ、東日本大震災と福島原発事故の犠牲者の鎮魂劇となっています。作曲は細川俊夫、脚本と演出は平田オリザ、舞台美術は杉山 至が担当しています。このオペラは2015年の初演後は再演されないままで、演出に対する劇評はやや否定的です。
ワーグナー作曲・ミュラー演出『トリスタンとイゾルデ』は1993年の初演当時に賛否両論に晒されました。「愛の死」を歌い上げた後のイゾルデの演出が実に大胆なものだったからです。シュリンゲンジーフ演出の『Mea Culpa(私の贖罪)』では「愛の死」を歌う歌手に独創的な変更を加えています。ミュラー、シュリンゲンジーフ共に、ワーグナーの創作意図を批判的に継承していると捉えることができます。
このように同じ作品であっても演出家によってその演出意図と表現方法は大きくことなります。その背景にはそれぞれの歴史観、世界観、さらには死生観の相違があります。この授業ではこれらの相違点についても解説していきます。
科目目的
〇 ドイツ語圏の舞台芸術の上演史に関する基礎的知識を修得する
〇 ドイツ演劇学の基礎的概念を修得する
〇 日本とドイツ語圏の演劇観の相違、演出コンセプトの相違について考察を深める
到達目標
〇 ドイツ語圏の舞台芸術の演出法に関するレポートを執筆できる
〇 ドイツ演劇学の基礎的概念に関するレポートを執筆できる
〇 日本とドイツ語圏の演劇観の相違、演出コンセプトの相違についてレポートを執筆できる
授業計画と内容
1) 授業紹介と教材作品紹介
2) 世阿弥作・サシャ・ヴァルツ振付オペラ『松風』:脚本分析、振付分析
3) 世阿弥作・サシャ・ヴァルツ振付オペラ『松風』:舞台装置分析、劇評分析
4) 世阿弥作『松風』能楽版の舞台分析
5) 平田オリザ作・演出オペラ『静かな海』:脚本分析、振付分析
6) 平田オリザ作・演出オペラ『静かな海』:舞台装置分析、劇評分析
7) 『静かな海』、森鷗外『舞姫』、能楽『隅田川』の間テキスト性:
8) ワーグナー作曲・ハイナー・ミュラー演出『トリスタンとイゾルデ』の演出分析:第一幕、第二幕
9) ワーグナー作曲・ハイナー・ミュラー演出『トリスタンとイゾルデ』の演出分析:第三幕
10) ワーグナー作曲・ハイナー・ミュラー演出『トリスタンとイゾルデ』におけるミュラーの歴史観、女性観
11) クリストフ・シュリンゲンジーフ演出『Mea Culpa(私の贖罪)』:脚本分析、振付分析
12) クリストフ・シュリンゲンジーフ演出『Mea Culpa(私の贖罪)』:舞台装置分析、劇評分析
13) 現代の日本とドイツ語圏の舞台芸術交流:ドイツ統一と福島原発事故の影響
14) 授業のまとめ
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 50 | 設問に対応した解答の達成度 |
レポート | 30 | ショートレポートの課題に対する記述内容の充実度 |
平常点 | 20 | 授業課題全体に対する授業態度 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキスト
必要に応じてコピーをmanaba上で提示ないし配布する
参考文献:
1) ハンス=ティース・レーマン著『ポストドラマ演劇』 同学社
2) エリカ・フィッシャー=リヒテ著:『演劇学へのいざない』 国書刊行会
その他特記事項
4回以上欠席した場合の成績は不可となります。