シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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美術史美術館演習 | 2024 | 通年 | 水5 | 文学部 | 渡辺 眞弓 | ワタナベ マユ | 3年次配当 | 4 |
科目ナンバー
LE-HR3-D155
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
この授業では、フランスをはじめとした世界各国に目を向けて、アートシーンを取り巻くアクチュアルな動向を追い、アートと人との関係性に着目しながら、アートが社会に果たす役割を探求することを目指します。
前期授業は、美術館やパブリックアートなどがある「アートに出会える街」(立川を予定)に訪れて、フィールドワークを行います。事前準備では地域の歴史や市政について調べ、プロジェクトの企画には欠かせない「ステークホルダー」を作ります。そしてフィールドワークでは、アートを取り巻く様々な人・モノ・コトの関係性に着目しながら、情報を収集します。同じグループのメンバーと対話を重ね、その場所の空気感を肌で感じる経験は、論文や専門書を読むのとは一味違った学びの機会となるでしょう。その後の授業では、フィールドワークと関連する様々なケーススタディを講師が紹介し、グループディスカッションを行います。他者との対話を重ねることで、実体験と専門的な知見を結びつけながら論理的に思考する力を身につけてください。
後期授業では、「アートは社会の課題を解決するか?」という問いを掲げた媒体(メディア)を想定して、特集記事のデモ版をグループごとに作成します。具体的には、社会的課題に直接働きかけたり、より良い社会モデルの構築を目指そうとする現代のアートシーンの潮流に注目するような内容の記事を書いてもらうことを想定しています。講師が提案するいくつかのテーマごとにグループに分かれ、記事を作成してもらいます。
【記事の例】
・フィールドワーク先(展覧会、アートプロジェクト等)のレビュー
・フランスのアートシーンの事例紹介
・美術作品の紹介(現代の視点から)
専門的な知識をインプットするだけでなく、その研究成果を社会一般に向けて(美術に関心のない人も含まれます)発信してゆく方法を実践的に学びましょう。授業を通して、あなた自身が主体となって、アートを通して社会的課題に働きかけ、解決するための糸口を見つけてください。
科目目的
日々変貌していくアートシーンと、それを取り巻く社会状況をとらえることが第一の目標です。
私たちの社会の中でアートがどのような役割を果たすべきかについて、批評的な視点を持って主体的に考察し、言語化し、他者に共有する力を身につけたいと思います。
また美術史美術館コースのカリキュラムの中では、3年次から始まるゼミでの学修をさらに豊かにするための知識と考え方を獲得することが目的です。
到達目標
①美術館やアートプロジェクトに関する基礎的な情報収集の仕方を学び、最新情報にアクセスする習慣を身に付けましょう。アートシーンの状況は日々めまぐるしく変化します。常にアンテナを張って情報収集を行い、知識の引き出しを増やしてください。
②美術館以外の展示の場(芸術祭、ギャラリー、画廊、オルタナティヴスペースなど)に足を運び、また美術館等が主催するワークショップや学習プログラムにも積極的に参加しましょう。絵画や彫刻などのファインアートのみならず、建築・ファッション・デザイン・演劇など、時代・国・ジャンルを問わず様々な表現に触れてください。
③多角的な観点から課題に取り組み、自分自身の考えを論理的に組み立てて、他者にわかりやすく説明ができるようになりましょう。授業のディスカッションに備えて事前学習を行っておくことで深い議論が行えます。
授業計画と内容
【前期】
1. イントロダクション:「アートがある街」の歩き方
2. フィールドワークに向けた事前準備①:情報収集・ステークホルダーを作成する
3. フィールドワークに向けた事前準備②:調査計画を立てる
4. フィールドワーク:「ファーレ立川」「Green Springs」を歩く
5. フィールドワークのふりかえり①:ディスカッション
6. フィールドワークのふりかえり②:発表
7. 「パブリック」とは何か?
:クリストとジャンヌ=クロードのパブリックアート《包まれた凱旋門》と比較して
8. 表現の自由と社会的倫理:撤去された野外彫刻を例に挙げて
9. 地域コミュニティとアート
10. アートとコミュニケーション① ニコラ・ブリオー「関係性の美学」
:パレ・ド・トーキョーの事例を中心に
11. アートとコミュニケーション② クレア・ビショップ「敵対と関係性の美学」
:ドクメンタの事例を中心に
12. アートとコミュニケーション③:ソヴィエトの非公式芸術家集団「集団行為」を例に挙げて
13. ウィリアム・モリスの眼から「立川」を観察してみよう
14. 前期のまとめ:アートと人の関係性
【後期】
15. イントロダクション:アートは社会的課題を解決するか?
16. 企画会議1:ターゲット層の設定、内容の検討、収集する情報の選定
17. 企画会議2:執筆担当者の割り振り、フィールドワーク先の事前調査
18. 準備1:フィールドワークのふりかえり
19. 準備2:フランスのアートシーンの事例研究
20. 準備3:美術作品の事例研究
21. 校正ルールの確認、原稿作成
22. ラフ提出、講師からのフィードバック
23. 校正(文字校正、出典の確認等)
24. 発表準備
25. 記事公開1:エコロジー、障がいと福祉
26. 記事公開2:移民・難民、ポリティカル・コレクトネス
27. 記事公開3:グローバリゼーション、ジェンダー
28. まとめ:アートが社会に果たす役割を再考する
※フィールドワークの行き先・日程等詳細は、授業内でお知らせします。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
▶︎新型コロナウィルスの感染状況にもよりますが、可能であれば展覧会を多く鑑賞してください。
▶︎文学部生が利用できる優待入館制度「国立美術館キャンパスメンバーズ」制度を利用しながら、
自主的な美術館訪問を積極的に行って下さい。
http://www.campusmembers.jp/
▶︎美術館以外の展示空間(パブリックアート、ギャラリー、画廊、オルタナティヴスペース等)にも積極的に足を運んでください。
▶︎美術館が主催する教育普及プログラムや、アートプロジェクト等にもぜひ参加してください。
※最新の展覧会やアーティストの情報などを、授業の中で可能な限り紹介します。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 40 | ・レポート、記事作成の目的に対して文章が練られているか ・筆者の主張が明確に述べられているか ・日本語のミスは無いか、適切な言葉が用いられているか ・学術的な形式に則っているか ・引用は適切に行われているか、剽窃は無いか ・図版の取り扱いは適切か |
平常点 | 20 | ・授業に出席し、積極的に参加しているか ・授業内容を理解しているか |
その他 | 40 | ディスカッション、発表 ・グループでの共同作業や事前の準備(原稿、発表構成等)、共同作業を進める上で必要なコミュニケーションは十分か ・積極的にディスカッションへ参加しているか |
成績評価の方法・基準(備考)
欠席が5回に達した場合、出席していても受講姿勢に著しく問題がある場合は、原則として理由に関わらず「不可」とします。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
発表に対するフィードバックは授業時間内に質疑を通して行います。
レポートの講評は厳選してmanabaで個別に行います。
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/グループワーク/プレゼンテーション/実習、フィールドワーク
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
タブレット端末/その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
PPTでの発表のため個人PC使用を推奨します。大学で発表を行う場合には大学のwindowsPC借用が可能です。
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
多摩美術大学美術館学芸員。2018年4月から宇都宮美術館で勤務し、2019年11月から多摩美術大学美術館で勤務(2023年3月〜休館中)。これまで企画を担当した主な展覧会は、宇都宮美術館コレクション展「僕らが消えても、世界はつづく?」(2019年)、多摩美術大学美術館企画展「寺田小太郎 いのちの記録 ―コレクションよ、永遠に」(2021年)、「そうぞうのマテリアル」「テキスタイルのチカラ」(2022年)。美術館学芸員の仕事としては展覧会企画のほか、アーティストと協同したワークショップや対話型鑑賞会の開催など、主にラーニングプログラム(教育普及事業)を担当してきた。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
美術館の企画展覧会づくり全般や展示カタログ制作など、学芸員の領域について実務経験から解説し、美術館という現場からの最新情報を紹介します。
美術史の研究で修士号も取得しているため、美術史の補足説明も可能です。
テキスト・参考文献等
【主要文献】
・北川フラム、ファーレ立川アート管理委員会『ファーレ立川パブリックアートプロジェクト―基地の街をアートが変えた』現代企画室、2017年
・Nicolas Bourriaud, L’esthétique relationnelle, Presses du réel,1998.
・クレア・ビショップ(星野太 訳)「敵対と関係性の美学」『表象05』表象文化論学会、2011年
・アート&ソサイエティ研究センターSEA研究会『ソーシャリー・エンゲイジド・アートの系譜・理論・実践 芸術の社会的転回をめぐって 』 フィルムアート社、2018年
【主要webサイト】
・artscape(https://artscape.jp/index.html)
・美術手帖(https://bijutsutecho.com)
・ネットTAM(https://www.nettam.jp)
※授業ではテキストを使用せずに、レジュメ等の配布資料を行います。
※その他については授業の中で適宜紹介します。