シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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西洋史演習(2)A(6)A/西洋史演習(2)(5)(前期) | 2024 | 前期 | 金4 | 文学部 | 白川 耕一 | シラカワ コウイチ | 3年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-WH3-H823,LE-WH4-H923
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
題目「第2次世界大戦後のアメリカ社会とホロコーストの歴史(1)」
歴史家トニー・ジャッドは、2005年の著書において、「ヒトラーの死から60年、彼の戦争とそれがもたらした諸結果は歴史となりつつある。ヨーロッパの戦後は長く続いたけれども、それが最終的に結末を迎えようとしている」と書いています。しかし、彼の言葉とは裏腹に、第2次世界大戦像をめぐる論争が21世紀のヨーロッパ各地で噴出し、「過去の克服」は複雑な様相を呈しています。
第2次世界大戦をめぐる記憶において、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害と殺害(ホロコースト)はますます重みを増していますが、それはなぜそうなったのでしょうか。本演習では、第2次世界大戦中に発生したユダヤ人殺害(ホロコースト)とアメリカ社会との関係を扱います。ヨーロッパで発生したホロコーストは、アメリカ人にとっては縁遠い存在です。その事件が、事件発生から時間が経過するにつれて、重みを持ち始めたのです。なぜでしょうか。
この数年間の演習では、デボラ・リップシュタット『予想もできないこと』、ローレル・レフ『「タイムズ」紙によって隠された』を読み、ユダヤ人迫害に関する米国ジャーナリズムの在り方を検討してきました。今年度は、ピーター・ノヴィック『アメリカ人の生活の中のホロコースト』を読み、ユダヤ人殺害が戦後のアメリカ社会で時代によってどのように受け止められていったのかを検討します。
科目目的
(1)ノーヴィックの著書を通じて、グローバル化した社会における過去の記憶の形成・変容について学びます。例えば、第2次世界大戦中のユダヤ人殺害は加害者のドイツ人、被害者のユダヤ人にとってのみに重視される事件ではありません。その殺害とは無関係のアメリカにおいて、重視される歴史的事件になっていきます。他者の歴史をあたかも自らの歴史のように考える現象が発生しています。それは自然発生的なものではありません。本演習では、アメリカにおけるホロコーストの歴史を例に、グローバル化した社会における記憶の形成と変容を学びます。
(2)本演習では、英語の専門文献を正しく読み、内容が伝わるように報告し、討論することを学びます。前期においては、輪読形式でテキストを読み進めます。その際、テキストを読み進める上での専門知識を共有します。
到達目標
(1)英語専門文献を正しく読み、理解し、口頭で報告することができる。
(2)未知の概念を調査する手法を身につけ、正しく調査することができる。
(3)第2次世界大戦の記憶の忘却・想起・変容を、政治・文化などと関係づけながら説明することができる。
授業計画と内容
最初の5回程度は、専門文献の読解に慣れるために、「序章」を輪読形式で1人2~3文ずつ逐語的に翻訳していただき、人1回あたり2~3頁程度読み進む予定です。授業進度は調整します。テキストの講読に合わせて、適宜、教員が専門用語の解説や研究状況の紹介をおこないます。
講義計画
第1回 はじめに。演習についてのガイダンス
第2回 第1章「大体のところは知っている」(1)ドイツにおけるユダヤ人迫害に対するアメリカ社会の反応
第3回 第1章「大体のところは知っている」(2)第2次世界大戦勃発後、ユダヤ人に対する関心低下
第4回 第1章「大体のところは知っている」(3)信用されないユダヤ人殺害の情報
第5回 第2章「俺たちの兄弟がもっと同情していれば」(1)アメリカのユダヤ人
第6回 第2章「俺たちの兄弟がもっと同情していれば」(2)アメリカの戦争とアメリカ・ユダヤ人
第7回 第2章「俺たちの兄弟がもっと同情していれば」(3)ホロコーストとアメリカのユダヤ系ジャーナリズム
第8回 第2章「俺たちの兄弟がもっと同情していれば」(4)ヨーロッパ・ユダヤ人に対する救助活動
第9回 第2章「俺たちの兄弟がもっと同情していれば」(5)アメリカ・シオニズムの動き
第10回 第3章「ユダヤ人を見捨てる」(1):ユダヤ人は見捨てられたのか?―戦後の論争―
第12回 第3章「ユダヤ人を見捨てる」(2):ドイツ・ユダヤ人に対するアメリカ政府の支援(第2次世界大戦前)
第13回 第3章「ユダヤ人を見捨てる」(3):アメリカ政府による救助活動(第2次世界大戦中)
第14回 テキストの内容理解および読解力に関する試験
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
十分に予習した上で演習に参加してください。英文を直訳しただけでは、内容理解にまで至らない場合が多いように思います。翻訳が難しい語句については、できる限り「参考文献」欄の書籍を参照して、定まった訳語(機関名、人名)を使ってください。
事件としてのユダヤ人迫害および殺害の過程については、芝健介『ホロコースト』を参照してください。石田勇治、高橋秀寿、橋本伸也、芝健介『ニュルンベルク裁判』らの文献は、ドイツにおけるホロコーストの記憶に対する向き合い方(「過去の克服」)についての概観を得るために、きわめて有益です。演習の進度やテーマにあわせて、一読することを強くお勧めします。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 35 | 最終授業にてテキストの内容理解及び読解力に関する試験を行う。 |
平常点 | 65 | テキストの予習状況を主として授業への能動的な参加と貢献度を評価する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
(1)テキスト
Peter Novick, The Holocaust in American Life, Mariner Book: Boston, New York 2000の第1章から第3章までを扱う予定です。テキストは教員が準備します。
(2)参考文献
有賀貞他編『世界歴史大系 アメリカ史2』(山川出版社 1993年)
石田勇治『過去の克服』(白水社 2002年)
石田勇治他編『想起の文化とグローバル市民社会』(勉誠社 2016年)
木村靖二/柴宜弘/長沼秀世『世界大戦と現代文化の開幕(世界の歴史 第26巻)』(中央公論新社 1997年)
紀平英作/ 亀井俊介『アメリカ合衆国の膨張(世界の歴史 第23巻)』(中央公論新社 1998年)
芝健介『ホロコースト』(中公新書 2008年)
芝健介『ニュルンベルク裁判』(岩波書店 2015年)
高橋秀寿『ホロコーストと戦後ドイツ―表徴・物語・主体―』(岩波書店 2018年)
橋本伸也『記憶の政治―ヨーロッパの歴史認識紛争』(岩波書店 2016年)
丸山直起『ホロコーストとアメリカーユダヤ人組織の支援活動と政府の難民政策』(みすず書房 2018年)
油井大三郎/遠藤泰生編『浸透するアメリカ、拒まれるアメリカ―世界史のなかのアメリカニゼーション』(2003年 東京大学出版会)
吉田徹『アフター・リベラル―怒りと憎悪の政治』(講談社現代新書 2020年)
ノーマン・G. フィンケルスタイン (立木勝訳)『ホロコースト産業―同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』(三交社 2004年)
リチャード・ブライトマン(川上洸訳)『封印されたホロコーストーローズヴェルト、チャーチルはどこまで知っていたのか』(大月書店 2000年)
レニ・ブレンナー(芝健介訳)『ファシズム時代のシオニズム』(法政大学出版局 2001年)
Flanzbeum, Helene (ed.), Americanization of the Holocaust, The John Hopkins UP 1999.
Kushner, Tony, The Holocaust and the Liberal Imagination. A Social and Cultural History, Blackwell Publishers, 1994.
Leff, Laurel, Buried by the Times: The Holocaust and America's Most Important Newspaper, Cambridge UP, 2006.
Lipstadt, Deborah E., Holocaust. An American Understanding, Rutgers UP 2016.
Wyman, David S., The Abandonment of the Jews. America and the Holocaust 1941-1945, Pantheon Books 1984
その他特記事項
取り上げる研究者は開講後に変更する可能性があります。