シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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原典講読 | 2024 | 通年 | 水4 | 文学部 | 飯盛 元章 | イイモリ モトアキ | 2年次配当 | 4 |
科目ナンバー
LE-PE2-J109
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
この授業では、カンタン・メイヤスーの『有限性の後で』(Aprés la finitude)第3章をフランス語で読みます。
メイヤスーは、あらゆることはたまたまそうなっているにすぎない、と主張します。あるものが現にこのように存在していることには、いかなる理由も存在しない。すべては偶然である。これがメイヤスーの中心的な主張です。
たとえば、あなたがいまシラバスを読んでいることも、大学というものが存在することも、人類が知性をもっていることも、地球上に生命体が存在することも、ある物理法則が存在することも、矛盾律が妥当することも、すべては偶然そうなっているにすぎない。そのようにメイヤスーは考えます。
しかも、たんにあらゆることがいま偶然的に存在しているというだけでなく、いま成立しているあり方がつぎの瞬間にまったくべつのあり方に変化してしまってもおかしくはない、とメイヤスーは主張します。すべてはたまたまそうなっているにすぎないのだから、突然まったく異なるあり方に変わったとしてもおかしくはない、というわけです。
メイヤスーにしたがえば、物理法則でさえもたまたま成り立っているにすぎず、突然いかなる理由もなしにべつのあり方に変化しうる、ということになります。もっと言えば、矛盾律のような論理法則がべつのあり方に変化することさえありえます。さらには、物質と精神という哲学における二大属性とはべつの、想像もできないまったく新たな属性がとつじょ生じることだってありえます。すべてが偶然的であるこの世界においては、原理的にどんな変化でも起こりうるのです。
メイヤスーは、世界そのもののこうした根源的な偶然性を主張します。『有限性の後で』第3章では、メイヤスーのこの主張が積極的に示されています。
科目目的
哲学のフランス語文献を正確に読み解く能力を身につけること。
① まずは、文法にしたがって正確な日本語に訳せるようになることを目指します。代名詞がなにを受けているのか、関係代名詞はどこに係るのか、といったことに気をつけて訳してください。
② そのうえで、この文章によって著者がいったいなにを言おうとしているのかを、自分自身の言葉で説明できるようになることを目指します。
到達目標
単位修得のためには、少なくとも上述の「科目目的」の①をある程度達成することが必要になります。①を達成しつつ、さらに②の達成を目指していきましょう。(とはいえ、テクスト読解において、①と②は相互に連関しています)
授業計画と内容
初回は、テクスト読解に必要な前提となる内容について講義をおこないます。
その後、数回をかけて、『有限性の後で』第1章と第2章について発表をしてもらいます。担当者には、担当箇所を邦訳で読み込み、内容について発表をしてもらいます。全員で疑問点などを挙げながら議論をし、第3章にいたるまでの論点を把握するようにします。
第3章以降は、フランス語でじっくりと読んでいきます。担当者には、フランス語の訳読をしてもらいます。毎回、前回の内容の復習をしつつ、ゆっくりとフランス語のテクスト読解をしていきます(前回の内容の振り返りは、前回の担当者にやってもらいます)。フランス語の文法などもていねいに確認していくので、おそらく毎回1ページ強ぐらいのペースで読み進めていくことになると思います。
※フランス語未習の学生は、後期から訳読発表を担当してもらいます。その間にフランス語初級の勉強をしてください。
第01回 イントロダクション(授業の形式、メイヤスーについて)
第02回 『有限性の後で』第1章前半 まとめと議論
第03回 『有限性の後で』第1章後半 まとめと議論
第04回 『有限性の後で』第2章前半 まとめと議論
第05回 『有限性の後で』第2章後半 まとめと議論
第06回 pp. 81-82
第07回 pp. 82-83
第08回 pp. 84-85
第09回 pp. 85-86
第10回 pp. 87-88
第11回 pp. 88-89
第12回 pp. 90-91
第13回 pp. 91-92
第14回 pp. 93-94
第15回 pp. 94-95
第16回 pp. 96-97
第17回 pp. 97-98
第18回 pp. 99-100
第19回 pp. 100-101
第20回 pp. 102-103
第21回 pp. 103-104
第22回 pp. 105-106
第23回 pp. 106-107
第24回 pp. 108-109
第25回 pp. 109-110
第26回 pp. 111-112
第27回 pp. 112-113
第28回 p.p 114-115
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
全員が次回の授業で読む箇所の単語を調べ、構文を確認しておくこと。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 70 | 出席者には訳読を担当してもらいます。この訳読の発表をレポートとみなします。 ①単語の意味や文法事項をとれているか、②文章の哲学的な内容を整合的に理解しているか、という点をチェックします。 |
平常点 | 30 | 授業の終わりに、毎回コメントフォームに意見を書いてもらいます。 基本的に、自らの意見とその理由が説得力のある形で書かれているかどうかをチェックします。もちろん、授業内容の疑問点などを自由に書いてもらっても構いません。 |
成績評価の方法・基準(備考)
出席率が70%に満たない場合は単位習得を認めない。
ひとつのテクストを続けて読んでいくので、あまり欠席が続くと内容が理解できなくなってしまいます。全授業回数の70%は出席してください。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
毎回、Googleフォームをもちいてコメントを書いてもらいます。みなさんが書いてくれたコメントに対して、つぎの回に教員が解説をします。
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/プレゼンテーション
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
① 担当者に翻訳を発表してもらいます。
② テクストの内容についてそのつど質問を受け付け、議論をします。
どんな細かい点でも、なにか気づいたことがあれば発言(書き込み)をしてください。みんなで思ったことを述べあい、対話をすることによって、テクストに書かれた哲学的内容をより深く発展させていくことができます。
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
[テクスト]
Quentin Meillassoux, Après la finitude: Essai sur la nécessité de la contingence, Paris: Seuil, 2006.
[参考文献]
カンタン・メイヤスー『有限性の後で―偶然性の必然性についての試論』千葉雅也ほか訳、人文書院、2016年。
飯盛元章「ポスト・ヒューマニティーズの思想地図と小事典」『現代思想』2019年1月号所収。