シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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現代論理学 | 2024 | 通年 | 水1 | 文学部 | 青木 滋之 | アオキ シゲユキ | 2~4年次配当 | 4 |
科目ナンバー
LE-PE2-J212
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
近年、「論理的思考能力」という文言が中教審や経団連の文章に頻繁に現れるようになり、本屋に行けば社会人向けの「ロジカルシンキング」の本がズラっと並ぶようになった。こうした巷で言われる「ロンリ(ロジカル)」の意味は実に雑多だが、その基礎にあるのが論理学である。
この授業では、前期で形式論理学、後期で非形式論理学を扱う。大きな違いは、前者が記号的(ゆえにシンタックスでの扱いが可能)であるのに対して、後者では当該議論についての知識や、日常陥りがちな誤謬といった、自然言語による人間推論の"泥臭さ"が介在するところである。日常生活においては、形式論理的な形で推論が現れることはまずないので、非形式論理の方が役立つことが多い。しかし、非形式論理は形式論理を背景としており、まずは基礎固めとして形式論理に習熟するところから始めたい。
前期の形式論理学では、命題論理および述語論理、後半では非古典論理を扱う。後期の非形式論理では、議論の構造、議論への反論、論理的誤謬のほか、心理的バイアスといった関連分野も扱う。
前半・後半ともに、問題を多く解いてもらう予定である。題材としては、公務員試験の問題やGMATのcritical reasoningといった実用的な問題も取り上げ、論理学の応用力涵養に努めたい。
科目目的
論理的思考の基礎、原則となる論理学を学び、厳密に考える能力を養う。それによって、他の学問や日常的な場面での推論や議論においても、しっかり考えられるようになる土台を築くことを目的としたい。
到達目標
前期では、命題の真偽と推論の妥当性とを区別することに始まり、命題論理での真理表の導入、真理値の計算(真理表および意味論的タブローによる解法)、述語論理での量化子の考え方、といったものを通覧する。いずれも、受講者が日本語から人工言語への翻訳を行い、実際に使いこなせるようになることを目指す。前期の後半では、多値論理や様相論理といった非古典的な論理学を扱いながら、現代論理学の広がりを見ていく予定である。
後期では、自然言語での文章を扱いながら、議論を構成する主張と根拠との区別、ワラントの推定、裏付けや確からしさといった、議論の基本構造を把握することを目指す。その上で、誤謬的な議論に現れるワラントの特徴や、人間が陥りがちなたくさんの誤謬のタイプ、その背景となる心理的なバイアスについて学ぶことで、正しい議論を行う上での障害についても学習する。
論理学は数学と似て、例題や問題演習を通じて、実際に手を動かして理解していく側面が大きい。前期後期ともに、毎週宿題を出すので、必ず次の授業開始時に提出すること。宿題をこなさないと、授業についていけなくなるので注意。
授業計画と内容
【前期】形式論理
第1回 イントロダクション
第2回 論理的な正しさとは、真理表の導入
第3回 妥当性・トートロジー・矛盾
第4回 タブローによる解法(1) 背理法による矛盾の証明
第5回 タブローによる解法(2) 妥当性・トートロジーの判定
第6回 述語論理(1) 量化子の導入
第7回 述語論理(2) タブローによる解法
第8回 ヴェン図による解法
第9回 命題論理の公理系(1) 公理系という考え方
第10回 命題論理の公理系(2) 意味論的トートロジーを公理系で定理として証明する
第11回 命題論理の完全性 トートロジーと定理が外延で一致することの証明
第12回 多値論理 二値論理、ファジー論理
第13回 様相論理 様相演算子の導入、可能世界意味論
第14回 前期まとめ
【後期】非形式論理
第1回 前期振り返り、演繹的推論と帰納的推論の違い
第2回 論証を見分ける 「なぜなら」の構造
第3回 言葉の定義 内包的定義、外延的定義、操作的定義など
第4回 トゥールミンの議論モデル(1) 主張・根拠・ワラント
第5回 トゥールミンの議論モデル(2) 様々な帰納的推論
第6回 トゥールミンの議論モデル(3) 裏付け・反駁
第7回 GMATを用いた問題演習
第8回 論理的誤謬(1) 前件否定、後件肯定など
第9回 論理的誤謬(2) 対人論法など
第10回 論理的誤謬(3) 相関と因果の違いなど
第11回 バイアス(1) 確証バイアスなど
第12回 バイアス(2) 同調バイアスなど
第13回 バイアス(3) 四分割表の活用など
第14回 後期まとめ
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
特に前期の形式論理では、順を追って説明していくので、分からない箇所は放置せずに復習をすることが必要です。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 52 | 前期および後期の授業後に、定期試験を課します。 |
平常点 | 48 | 毎回の授業後に、宿題を出します。次の授業開始時に提出すること。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキストは使用せず、プリントを配布する。主に参考にしている論理学の教科書・題材は以下のものだが、適宜他の文献や教科書も参照・紹介していく予定である。
戸田山和久『論理学をつくる』, 名古屋大学出版, 2000
W.C.サモン『論理学』, 培風館, 1987 [原著は3版, 1984]
Graham Priest, An Introduction to Non-Classical Logic (2nd edition), New York: Cambridge University Press, 2008
Stephen Toulmin / Richard Rieke / Allan Janik, Introduction to Reasoning (2nd edition), New York: Macmillan, 1984
Douglas Walton, Informal Logic (2nd edition), New York: Cambridge University Press, 2008
ロバートJ.グーラ『論理で人をだます法』, 朝日新聞社, 2006
サザーランド『不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100』, 阪急コミュニケーションズ, 2013
鈴木宏昭 『認知バイアス 心に潜むふしぎな働き』, 講談社ブルーバックス, 2020
伊勢田哲治ほか編『科学技術をよく考える クリティカルシンキング練習帳』, 名古屋大学出版, 2013