シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
英語読解 | 2024 | 通年 | 木2 | 文学部 | 太田 稔 | オオタ ミノル | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-EN1-SE11
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
この授業では、Julia Annas(ジュリア・アナス)の"Ancient Philosophy"(『古代哲学』)という本の一部を読みます。この本は、オックスフォードから出ているVery Short Introductionシリーズの一つで、第一線の古代哲学研究者が、古代哲学の初学者に向けて、古代哲学の導入・紹介を行うというものです。授業には予習として特定範囲の訳読が課されます。
古代哲学というと、まずもってソクラテス、プラトン、アリストテレスという名前などが思い出されるのではないでしょうか。ストア派や古代懐疑主義、新プラトン主義などがさらに思い出されるならば、なお素晴らしいです。しかし、そこで思い出される古代哲学の印象は、「大切かもしれないけど、現代ではもはや通用しないもの」といったものかもしれない。本書においてアンナスは、古代哲学がわれわれにとってとても近しい存在であることと同時に、遠い存在であることを論じる。不用意に称賛するのではなく、古代哲学に従事する際の(これはあらゆる研究における基礎的な姿勢だけれども)注意点を、具体的に示してくれます。われわれは本書の第一章と第五章の読解を通じて、古代哲学が、それを学ぶ歴史や時代と関係なく内容的に・事柄そのものとして非常に面白いということと、哲学の読解・理解の仕方が歴史と切り離せないいうことを同時に学ぶのです。
本書は全六章からなっております。以下、授業中に取り扱う、第二章と第五章を紹介します。
第二章 なぜプラトンの『国家』を読むのか
プラトンの『国家』では、国家の運営に携わる「守護者」が登場します。プラトンは女性の守護者という考えを打ち出していて、これは19世紀のイギリスの哲学者を中心に大いに称賛されてきました。しかし、反面『国家』には「妻子の共有」という悪名高い文句があり、20世紀の間にプラトンは全体主義者、ファシストとみなされることもあったのです。現代では双方の評価が一面的であることは明らかにされていますが、どのようにしてこうした現代の評価が可能になったのかでしょうか。こうした評価の変遷からは、学びを構成する基礎的な前提を具体的な形でとりだすことができます。
第五章 論理と実在(論理学と自然学)
われわれにとってなじみが薄い「論理学」を、アリストテレスは学問を進める際の必須の「道具」と位置付けています。アリストテレスの論理学は、20世紀になってフレーゲ、ラッセルらが命題論理学を発見するまで、ヨーロッパの大学教育で学ばれてきました。本章では、さらに論理学と並び立つ学問分野であった「自然学」がどのようなものであったのか、また「自然学の後におかれたもの」としての形而上学と自然学の関係を考察します。「自然学」というなじみのない言葉とともに、「この世界に目的はあるのか」という興味深い問いかけについて古代哲学がどのように考えてきたのかを学びましょう。
科目目的
古代哲学の入門書の読解を通じて、古代哲学が現代においてどのような意義をもつのか、その一端を学んでいきます。その際、英語の文章そのものから理解を立ち上げていく力を養います。
到達目標
英語でかかれたテキストの訳読がこの教科の中心になって来るので、各学生が訳読を行い、解説をみて再検討することを通じて、テキストが正しく読み取れるようになることが一つの到達目標です。
他方で、筆者(ジュリア・アンナス)の文章を正しく理解し、各章の要点を押さえた説明ができるようになること、例えば、怒りと魂の問題について(第一章)おおまかな説明ができるようになることも到達目標です。
授業計画と内容
<前期>
第一回 前期イントロダクション
第二回 第二章第一節 古代哲学はどのように伝承されたのか
第三回 第二章第一節②
第四回 第二章第一節③
第五回 第二章第二節 古代哲学の研究方法
第六回 第二章第三節 読者の関心の変化
第七回 第二章第四節① プラトン『国家』読解の歴史①
第八回 第二章第四節②
第九回 第二章第四節③
第十回 第二章第四節④
第十一回 第二章第五節① プラトン『国家』読解の歴史②
第十二回 第二章第五節②
第十三回 第二章第五節③
第十四回 前期のまとめ
<後期>
第十五回 後期のイントロ
第十六回 第五章第一節 シラバスの伝統
第十七回 第五章第二節 古代論理学
第十八回 第五章第二節② アリストテレス論理学
第十九回 第五章第三節 自然と科学
第二十回 第五章第四節 自然学と形而上学
第二十一回 第五章第五節 アリストテレスと自然
第二十二回 第五章第六節 意図のない目的論
第二十三回 第五章第七節 意図のある目的論
第二十四回 第五章第七節②
第二十五回 第五章第八節 目的論の不在?
第二十六回 第五章第九節 古代の理論と現代の世界
第二十七回 第五章まとめ
第二十八回 後期のまとめ
授業時間外の学修の内容
授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり1時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
---|---|---|
レポート | 30 | 前期後期の最終授業の際に課題を提示します。評価基準は、課題に適切に答えられているかです。 |
平常点 | 70 | 授業の出席と、毎週出す課題の提出で一回分の成績を付けます。 |
成績評価の方法・基準(備考)
やむを得ない理由を除いて、9回以上休んだ場合は、単位を認定できません。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
グループワーク
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
訳読に関しては、それぞれが英文読解をした後で、グループごとに訳のすり合わせを行ってもらい、発表してもらうかたちをとります。
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
中央大学通信教育インストラクターとして、古代哲学のレポート採点を行っている。
中央大学で「英語読解」の授業を行っている。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
もっぱらアリストテレスを中心とした古代哲学にかかわっているので、授業内容も古代哲学の範囲内で行われます。
テキスト・参考文献等
[テキスト]
Julia Annas, Ancient Philosophy, Oxford, 2000.
テキストは、 哲学研究室にてコピーを配布します。初回授業までに哲学研究室にてテキストをもらってください。初回授業に予習の必要はありません。
[参考文献]
ジュリア・アナス(訳 瀬口昌久)『古代哲学』、岩波書店、2004年。
この参考文献は、テキストの翻訳です。授業内で翻訳をそのまま読み上げることは厳禁とします。