シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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ギリシャ語(上級) | 2024 | 通年 | 火4 | 文学部 | 伊藤 雅巳 | イトウ マサミ | 2~4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-OW2-SG20
履修条件・関連科目等
「ギリシャ語(初級)」の授業を既に学修しているか,古典ギリシャ語の初等文法を既に習得していることが望ましい.初等文法の未習者は「ギリシャ語(初級)」を併せて履修することが望ましいが,初等文法を独習するなら,その限りではない.
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
アリストテレース『ニーコマコス倫理学』を古典ギリシャ語の原文で冒頭から読む.
本書の主題は〈人間にとっての善〉である〈幸福〉とは何かを明らかにすることであるが,その問題は,〈人間としての善さ〉である〈徳〉との関係で論じられる.第1巻~第2巻は導入部に当たり,そこで問題の枠組みが示される.特に専門的な知識を要することなく読めるので —— 説明が必要な部分は,授業担当者〔伊藤〕が補う ——,各自の日常的な直感と照らし合わせながら,議論の流れを追って欲しい.
この授業は演習形式で行なう.テキストの文法的な註釈(Grammatical Notes)を作成するので,受講者は,それを参考にしながら,テキストの和訳に取り組んで欲しい.始めのうちは,授業担当者〔伊藤〕がGrammatical Notesに即して文法的な説明を行ない,私訳を示すが,受講者の語学力を考慮しながら,少しずつ,受講者に和訳を担当してもらうようにする.各参加者が担当した和訳については,他の参加者と共に検討し,授業担当者〔伊藤〕が文法的な説明などを補足しながら私訳を示す.その上で,解釈上の問題を提示し,それについて全員で議論する.
科目目的
『ニーコマコス倫理学』は,「倫理学」という学問分野を確立した著作であり,この著作によって倫理学が扱う問題の枠組みが示されたという点で,西洋倫理思想を学ぶ上で重要な著作であるが,何より古典ギリシャ語に習熟することが本講の狙いである.古典ギリシャ語の原文で読むことで,翻訳では分からない —— あるいは,分かった気になって,却って気付かない —— 原文の微妙なニュアンスを味わって欲しい.これに加えて,西洋倫理思想の諸概念について素養が深まれば,一石二鳥である.これらは,幅広い教養と学科・専攻に係る専門知識を獲得することに資するところがあると思われる.
長文の読解を通じて,古典ギリシャ語の初等文法を復習しながら,さらに習熟することを第一の目的とするが,欄外校訂註の扱い方などについても,適宜,指導する.
到達目標
辞書と文法書(「ギリシャ語(初級)」で用いた教科書)さえあれば ―― たとえ首っ引きであっても ――,古典ギリシャ語で書かれた文を曲がりなりにも読める(/訳せる)ようになることを到達目標とする.
まず,(1)辞書を使いこなせるようになること(―― 変化形・活用形から見出し語を特定し,記載された語義・用法の中から読解に必要な情報を読み取ることができるようになること),次いで,(2)文法書が使えるようになること(―― 取り敢えず,「ギリシャ語(初級)」で用いた教科書を文法書として用い,知りたいと思う事柄がどこに記載されているかを見付けることができ,そこから必要な情報を読み取ることができるようになること),そして,(3)Grammatical Notesを参考にしながら,正しく訳せるようになることが最低限の到達目標となる.その上で,(4)テキスト解釈の要所・問題点を指摘し,自分の解釈を提示することができるようになれば,申し分ない.
授業計画と内容
テキストの内容紹介を兼ね,通年で読了する予定で計画を記しておくが,受講者の習熟度に合わせてペースを調整するので,あくまでも目安である.
《前期》
第1回 テキスト解題/辞書,文法書,註釈などの紹介.
(第2回~第14回(第1巻 第1章~第8章):幸福をめぐる考察)
第2回 第1章:目的と善(1094a1-18)
第3回 第2章:最高善(1094a18-b11)
第4回 第3章:倫理学の特性と聴講者の要件(1094b11-1095a13)
第5回 第4章:通念と考察の方法(1095a14-b13)
第6回 第5章:三種類の生き方(1095b14-1096a10)
第7回 第6章:イデア論批判(1)普遍性という観点から(1096a11-34)
第8回 第6章:イデア論批判(2)離存性,善の多様性という観点から(1096a34-b26)
第9回 第6章:イデア論批判(3)イデア認識の有用性という観点から(1096b26-1097a14)
第10回 第7章:幸福の定義(1)善の特性/最高善としての幸福(1097a15-b21)
第11回 第7章:幸福の定義(2)徳に基づく魂の活動(1097b22-1098a20)
第12回 第7章:論述の仕方について(1098a20-b8)
第13回 第8章:幸福の定義と通念の対照(1)幸福と徳(1098b9-1099a7)
第14回 第8章:幸福の定義と通念の対照(2)徳と快(1099a7-b8)
《後期》
(第1回~第8回(第1巻 第10章~第13章):幸福をめぐる考察(つづき))
第1回 第9章:幸福はいかにして得られるか(1099b9-1100a9)
第2回 第10章:ソロンの言葉をめぐる問題(1)問題の提示(1100a10-b7)
第3回 第10章:ソロンの言葉をめぐる問題(2)幸福と運・不運(1100b7-33)
第4回 第10章:ソロンの言葉をめぐる問題(3)至福な生(1100b33-1101a21)
第5回 第11章:死者の幸不幸(1101a22-b9)
第6回 第12章:称賛と尊敬(1101b10-1102a4)
第7回 第13章:幸福論から徳論へ(1)政治学と魂の考察(1102a5-b11)
第8回 第13章:幸福論から徳論へ(2)「ロゴスに与る」の二つの意味(1102b11-1103a10)
(第9回~第14回(第2巻 第1章~第6章):人柄の徳について)
第9回 第1章:習慣と人柄(1103a14-b25)
第10回 第2章:行為と習慣(1103b26-1104b3)
第11回 第3章:徳と快・苦(1104b3-1105a16)
第12回 第4章:行為と性向(1105a17-b18)
第13回 第5章:性向としての徳(1105b19-1106a13)
第14回 第6章:行為と感情における中間的な性向としての徳 (1106a14-1107a27)
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業で扱った箇所について疑問点が残っていないかどうかを確認し,次回で扱う範囲のテキストの和訳をGrammatical Notes等を参考に準備する.
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり1時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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平常点 | 100 | 担当箇所の和訳を,訳の正確さ,および,Grammatical Notesをどれだけ理解し活用できたかという観点から毎回採点し,前期・後期を通じて理解度・習熟度の進歩具合を見た上で,先に示した「到達目標」を踏まえて,総合的に評価する. |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
《テキスト》
Bywater, I.(ed.) (1894), Aristotelis Ethica Nicomachea. Oxford Classical Texts(OCT). Oxford UP : Oxford. (必要な部分をプリントして配布するが,PDFファイルでも公開する)
《辞書・文法書》
初回の授業でプリントを配布して紹介するが,インターネットで閲覧できるものもあるので,高価な辞書や文法書を買い揃える必要はない.Perseus Digital Libraryというウェブサイトを利用すれば,辞書や文法書を買わなくても済む.
《邦訳》
加藤信朗〔訳〕『アリストテレス全集 13 ニコマコス倫理学』,岩波書店,1973.
朴一功〔訳〕『アリストテレス ニコマコス倫理学』,西洋古典叢書G028,京都大学学術出版会,2002.
神崎繁〔訳〕『アリストテレス全集 15 ニコマコス倫理学』,岩波書店,2014.
渡辺邦夫/立花幸司〔訳〕『アリストテレス ニコマコス倫理学(上)』,光文社古典新訳文庫,光文社,2015.
《研究書》
菅豊彦『アリストテレス『ニコマコス倫理学』を読む —— 幸福とは何か』,勁草書房,2016.
その他特記事項
受講者は初等文法を既に習得してしていることが望ましいが,古典ギリシャ語で書かれた原典を読んでみたいという意欲があれば,その限りではない.受講者の習熟度に合わせて進めるので,意欲のある学生は,奮って参加して欲しい.
質問については,授業時にも受け付けるが,manaba の「個別指導(コレクション)」でも受け付ける.授業担当者〔伊藤〕との連絡は「学内メール」を用いて下さい.manaba にメールアドレスを公開しておく.