シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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後期教養演習(舞台芸術) | 2024 | 後期 | 火2 | 文学部 | 高橋 慎也 | タカハシ シンヤ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-IF3-U300
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
前期の講義「舞台芸術論」で取り上げた舞台作品を例としながら、舞台芸術における国際交流について分析し、意見交換を行います。それぞれの舞台作品ついて、作品のテーマ、演出意図、評価基準、文化交流のシステム、分析のための理論などについて焦点を当てます。また英語圏とドイツ語圏の大学で用いられている演劇学入門書を用いて、演劇学の基礎を学修する予定です。舞台芸術に関する自由な意見交換を中心として柔軟に進めていきます。またゲストスピーチの回を一度、設定する予定です。
当初は教員による舞台分析を紹介し、それに関する意見交換を行います。その後に受講生が選択した舞台作品について分析結果を発表し、質疑を行います。分析対象とする舞台作品と分析の視点は受講生の自由選択とします。主な調査対象となるのは作品それ自体、制作関係者のインタビューと各国の劇評です。分析の焦点は国際的な評価につながった要因に当てていきます
まず初めに野田秀樹作/演出/出演『The Bee』東京版とロンドン版(Colin Teevan訳)の比較分析を行います。この舞台は野田のロンドン研修を契機として現地でのワークショップを重ねた後に2006年にSoho Theatreで英語のロンドン版が初演され、その翌年に世田谷パブリックシアターで日本語の東京版が初演されました。シェイクスピア劇と歌舞伎に典型的な言葉遊びを英語版と日本語版で共に多用し、『蝶々夫人』や『My Way』などの音楽による複雑な伏線をちりばめながら、イラン戦争を進めたアメリカ、それに追従した日本を暗示的に批判しています。英語と日本語の台本を制作し、ロンドン版と東京版では異なる演出スタイルを用いることによって、この舞台は異文化統合型のユニークなハイブリッド演劇となっています。各国の劇評も多くありますので、評価基準の分析対象となります。英語の劇評分析の際にはDeepLによる自動翻訳を使用し、その翻訳ミスを訂正してゆきます。
次にハリー・クプファー演出と小池修一郎演出のウィーン・ミュージカル『エリザベート』(ウィーン初演1992年、宝塚初演1996年、東宝初演2000年)の比較分析を行います。ウィーン版、宝塚版、東宝版では演出が異なります。またウィーン版は「斜陽化するウィーンの町おこしミュージカル」としてウィーンのイメージアップを目的とし、公的資金で制作された舞台です。一方の宝塚版は人気低迷期にあった宝塚歌劇団が、人気回復と震災復興を目的として制作した民間主導の舞台です。ウィーン版ではエリザベートの自立への意志が強調されるのに対し、男役主体の宝塚版ではトート(Tod=ドイツ語の「死」)の求愛によるエリザベートの「愛の死」への憧れと死後の安らぎが重視されています。この授業では、こうした相違が生まれる背景についても異文化交流の観点から考察してゆきます。ドイツ語圏での劇評はドイツ語ですが、自動翻訳機能によってかなりの程度、理解可能となってきました。それを使用しながら翻訳ミスを指摘します。
授業時間に余裕があればカフカ原作/スティーブン・バーコフ演出(1969年)/宮本亜門出演(1992年)と森山未來出演の『変身』(2010年)、ブロードウェイ版(1989年)の比較分析を行います。この舞台は1969年のバーコフ主演の初演が革新的で話題となり、その後にミハイル・バリシニコフ主演のブロードウェイでの高い評価が日本公演につながり、宮本版の高い評価が森山版の再演につながったケースです。
本授業ではまた英語圏、ドイツ語圏の大学で用いられている演劇学、パフォーマンス研究の代表的入門書についても簡略に解説します。欧米の舞台芸術研究の全体的傾向としては、演劇研究からパフォーマンス研究への転換、ヨーロッパ中心の舞台芸術史から世界各地域の文化上演史への転換、舞台上演研究から文化上演研究への転換などを挙げることができます。)
その他にこの授業では下記のような舞台作品を受講生の分析対象として紹介します。ただし、それ以外の舞台を受講生が自由に選択することも可能です。
〇 エウリピデス作/宮城總演出と蜷川幸雄演出: 『王女メディア』、ハイナー・ミュラー作『メディアマテリアル』との影響関係
〇 岡田利規作/渋谷慶一郎作曲/YKBX作画: ヴォーカロイドオペラ『The End』
〇 岡田利規作・演出: 『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』
〇 勅使川原三郎振付・出演: 『夜の思想』
〇 谷崎潤一郎作/山口小夜子演出・出演: 『影向』
科目目的
〇 日本と欧米の舞台芸術交流史に関する調査、分析、発表の能力を養成する
〇 日本と欧米各国の舞台芸術の特徴に関する調査、分析、発表の能力を養成する
〇 現代の欧米における演劇研究理論に関する調査、分析、発表の能力を養成する
到達目標
〇 日本と欧米の舞台芸術交流史を特定の視点から分析し、研究発表することができる
〇 日本と欧米各国の舞台芸術を特定の視点から分析し、研究発表することができる
〇 演劇研究理論の概念を用いながら舞台芸術をし、研究発表することができる
授業計画と内容
1) 授業案内と作品紹介
2) 野田秀樹作・演出『The Bee』東京版、ロンドン版の特徴、演出方法、演出意図に関する解説と意見交換
3) 上記舞台作品の劇評、異文化交流システムに関する解説と意見交換
4) カフカ原作/スティーブン・バーコフ演出(1969年)/宮本亜門出演(1992年)と森山未來出演の『変身』(2010年)、ブロードウェイ版(1989年)の特徴、演出方法、演出意図に関する解説と意見交換
5) 上記舞台作品の劇評、異文化交流システムに関する解説と意見交換
6) 欧米の演劇学、パフォーマンス研究、文化上演研究の入門書に関する解説と意見交換
7) 受講生による作品分析の発表と意見交換①
8) 受講生による作品分析の発表と意見交換②
9) 受講生による作品分析の発表と意見交換③
10)受講生による作品分析の発表と意見交換④
11) 受講生による作品分析の発表と意見交換⑤
12)受講生による作品分析の発表と意見交換⑥
13)ゲストスピーチ
14)授業のまとめ
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
指定した舞台録画を事前に視聴すること
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 50 | 設問に対応した解答の達成度 |
レポート | 30 | 研究発表の資料、内容、質疑の充実度 |
平常点 | 20 | 授業課題全体に対する授業態度 |
成績評価の方法・基準(備考)
期末試験の課題は授業中に発表した研究発表のために作成した下記の三つの資料を改善して提出することです。
1) プレゼンテーション用のパワーポイントファイル
2) ハンドアウト(A4 2枚程度)
3) プレゼンテーションの発表原稿(2000字程度)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
オフィスアワーでの面談の機会を利用してフィードバックを行う
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキスト:
必要に応じてmanaba上で提示する
参考書
〇 Christopher B. Balme : The Cambridge Introduction to Theatre Studies (Cambridge Introductions to Literature) Cambridge University Press 2011
〇 Bruce McConachie 編: Theatre Histories: An Introduction Routledge; 3rd edition 2016
〇 Richard Schechner: Performance Studies: An Introduction Routledge; 4th edition 2020
〇 Erika Fischer=Lichte: Theaterwissenschaft: Eine Einführung in die Grundlagen des Fachs UTB GmbH 2009
日本語訳: 演劇学へのいざない―研究の基礎 (国書刊行会2013)