シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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身体の知 | 2024 | 後期 | 火5 | 文学部 | 田口 卓臣 | タグチ タクミ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-HS3-U402
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
この授業では、「身体」を取り巻く様々な言説や表象を批判的に読み解いていきます。読み解きにあたっては、哲学、社会学、芸術学、文学、カルチュラルスタディーズなど、多視点的なアプローチを目指します。また、歴史的な背景を踏まえつつ、アクチュアルな文化現象にも目を向けられるように進めていきます。
ただし、誤解のないように、次の2つの点に注意してください。
(1)この授業は、身体を実践的に動かすための技能や知識の修得を目指しているわけではありません。あくまでも、「身体」に関する表象や言説を分析し、そこで得た知見を「言語化」する能力を養うための授業です。
(2)この授業は、グループワークを主軸に進めていきます。教員は毎回、各グループがディスカッションするための素材を提供しますが、「正解」や「知識」を一方的に伝達することはありません。
(3)グループワークが主軸となる以上、受講生の皆さんの「事前準備」が不可欠となります。「事前準備」に労力をかけるのが苦手な人や、教員の講義内容をノートするだけの人、さらに、一つの素材について他人と積極的に議論するのが苦手な人には、この授業は向いていません。
科目目的
・この科目は、カリキュラム上の演習科目として位置づけられていることから、この科目での学習を通じて、学生が「学びのパスポート」に関する幅広い知見を修得するとともに、みずから主体的に問題を発見し、その問題を他者と共有する能力を獲得できるようになります。
・この科目は、文学部のディプロマポリシーである「コミュニケーション力」「主体性」を修得することを目的としています。
到達目標
・常に自分についてまわる「身体」について、様々なアプローチで批判的に言語化できる(身体に関する知)。
・事前準備のために配布されたテクストをきちんと読み込み、内容理解に基づいて、グループワークに臨むことができる(テクスト読解)。
・グループワークを通じて、立場が異なる人と「対話」できる(コミュニケーション)。
・グループで協力して、他人の前で、発表できる(プレゼンテーション)。
授業計画と内容
第1回 ガイダンス。「前へならえ」ができなかった少年、田口卓臣
第2回 広告によって攻囲される身体――身の回りの広告を批判的に分析する。
第3回 触覚論――モリヌー問題とディドロ
第4回 「身体知性」(佐藤友亮)の3要件――タ認知、全身把握、自他境界の縮減。
第5回 監視文化における「身体」――フーコーの「セキュリティー権力」論から、ライアンの「モニタリング社会」論へ。映画『ザ・サークル』を読み解く。
第6回 ベルトコンベアー労働における「身体」――擬似テイラー主義、チャップリンの映画『モダンタイムズ』、ギュンター・アンダースの「機械装置的身体」論
第7回 プロパガンダと身体――リーフェンシュタールのスポーツ映画『民族の祭典』『美の祭典』とナチス党大会記録映画
第8回 「身体的距離」(エドワード・ホール)の分類――『エヴァンゲリオン』のATフィールド、満員電車の身体、中国の屏風、日本の襖
第9回 身体所作:笑い方、泣き方――小説『大地』の「哭き方」、映画『ローマの休日』の泣き方、柳田國男と小泉八雲の「ほほえみ」論。
第10回 「生まれながらの身体」の誕生――ルソー『エミール』における「産着」批判、西洋美術における「拘束着」表象、『風と共に去りぬ』における「コルセット」表象、イッセーミヤケによる「一枚の布」
第11回 サイボーグ化するスポーツの身体――野球における「スタットキャスト」「フライボール革命」「セイバーメトリクス」、サッカーにおけるフットボナウト、ゲーゲンプレス、ポジショナルプレー
第12回 SF・漫画における「人造人間」表象――手塚治虫『どろろ』、石ノ森章太郎『キカイダー』『サイボーグ009』、諸星大二郎『バイオの黙示録』、シェリー『フランケンシュタイン』における「怪物クリーチャー」
第13回 ひとはなぜ排泄物を「汚い」と思うのか(衛生学的身体)――モンテスキューの『ペルシア人の手紙』における「浄不浄」論、ジョルジュ・ヴィガレロ「清潔にする〈私〉」
第14回 総括・まとめ
* 授業の進行は、受講生の理解度や作業の進捗度を見ながら、適宜、柔軟に修正します。何より、受講生の取り組み姿勢によって、後半は、受講生の主体的なリサーチに基づくグループ発表や、自分の身体を用いたワークショップを開催する可能性が高いです。
*ワークショップのイメージは以下の通りです。
https://chuo-bun-futsubun-gobun.blogspot.com/2023/11/blog-post_14.html
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 20 | 論述の内容、方法の的確性、身体に関する考察の深さ |
平常点 | 60 | 授業への参加・貢献度、受講態度の状況。(毎回、グループワークをおこないます。そのための事前準備、グループ内でのディスカッション、授業での発表等が必須となります。これら全体が「平常点」として評価されます。) |
その他 | 20 | 授業コメント(授業内容の理解度、複眼的思考、主体的な問題発見など) |
成績評価の方法・基準(備考)
・無断欠席はいっさい認めません。「公欠」であっても、事後になって書類提出する人は、欠席とします。
・グループワークが中心の授業であるため、無断欠席者や、授業直前になって「公欠」を申し出る人は、他の受講生にとって迷惑となります。このため、大幅減点とします。
・「公欠」については、スケジュールが分かった時点できちんと報告することが、大原則です。
・欠席者は、授業で提示した事前課題について、「授業コメント」の提出をしていただきます。これを提出しない人は、欠席とします。
・上記の基準に基づく「欠席」を4回以上した人は、不可となります。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
反転授業(教室の中で行う授業学習と課題などの授業外学習を入れ替えた学習形式)/ディスカッション、ディベート/グループワーク/プレゼンテーション
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
タブレット端末/その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
・グループワークの際に、スマホで検索等をすることを積極的に推奨します。
・グループワークにあたっては、スマホでLINEグループを作り、授業時間外の意見交換もしてもらいます。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
<テキスト>
・テキストはできるだけ授業でコピー配布します。
・ただし、必要に応じて、グループ発表のために、各グループごとに資料を選定し、独自に購入していただく場合もあります。
<参考文献>
伊藤亜紗『手の倫理』講談社選書メチエ、2020年(第2章「触覚」、第6章「不埒な手」)。
伊藤亜紗『目の見えないアスリートの身体論』潮新書、2016年。
鷲田清一『ひとはなぜ服を着るのか』ちくま文庫、2012年。(第一部:「気になる身体」「衣服という皮膚」「<わたし>の社会的な輪郭」「コスメティック――変身の技法」「テクスチュア感覚」/第二部:「身体と匂いと記憶と」「からだは孔が空いている」「デザインされる肉体」)
鷲田清一『ちぐはぐな身体 ファッションって何?』ちくま文庫、2005年。
鷲田清一『悲鳴をあげる身体』PHP新書、1998年。
鷲田清一『メルロ=ポンティ 可逆性』講談社、2003年。
石田英敬『現代思想の教科書 世界を考える知の地平15章』ちくま学芸文庫、2010年。(「権力と身体――権力と主体化」)
三浦雅士『身体の零度 何が近代を成立させたか』講談社選書メチエ、1994年。
佐藤友亮『身体知性 医師が見つけた身体と感情の深いつながり』朝日新聞出版、2017年。
武智鉄二『舞踊の芸』東京書籍、1985年。
エドワード・ホール『かくれた次元』みすず書房、1970年。
安井真奈美、エルナンデス・アルバロ編『身体の大衆文化 描く・着る・歌う』KADOKAWA、2021年。(第5章「服と生きる、ファッションと暮らす」、第6章「コスプレの活動とイメージを再現する快楽」、第8章「車いすの誕生」)。
ジョルジュ・ヴィガレロ『清潔になる〈私〉 身体管理の文化誌』同文館、1994年。
ジョルジュ・ヴィガレロ監修『身体の歴史III 20世紀 まなざしの変容』藤原書店、2010年。
柳田國男『不幸なる芸術、笑の本願』岩波文庫、1979年。
小泉八雲「日本人の微笑」:『小泉八雲集』新潮文庫、1975年。
デイヴィッド・ライアン『監視文化の誕生 社会に監視される時代から、ひとびとが進んで監視する時代へ』青土社、2019年。
美馬達哉『感染症社会 アフターコロナの生政治』人文書院、2020年。
クロード・レヴィ=ストロース『われらみな食人種』創元社、2019年。
竹崎一真、山本敦久『ポストヒューマンスタディーズへの招待 身体とフェミニズムをめぐる11の視点』堀之内出版、2022年(第2章「近代スポーツをゆるめ、解体する」、第3章「サイエンス・スタディーズから「フェムテック」を考える」、第6章「シンデレラテクノロジーはどのように生まれたか?」、第7章「自分の身体を愛でる/取り戻す経験――人間ラブドール製造所」、第9章「生殖と身体のテクノロジーをめぐる統治性」)。
黒木幹夫他編『身体の知 湯浅哲学の継承と展開』ビイング・ネット・プレス、2015年。
山本敦久『ポスト・スポーツの時代』岩波書店、2020年。
ヘルムート・プレスナー『笑いと泣きの人間学』紀伊国屋書店、1984年。
グレゴワール・シャマユー『人体実験の哲学 「卑しい体」がつくる医学、技術、権力の歴史』明石書店、2018年。
ジョン・マカルーン『オリンピックと近代 評伝クーベルタン』平凡社、1988年。