シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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テクノロジーと現代社会/文化人類学B | 2024 | 後期 | 水4 | 文学部 | 小田 昌教 | オダ マサノリ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-SC3-U407
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
この講義では、わたしたちの身のまわりにあるさまざまな「メディア」(「芸術」もまた「メディア」です)を、人間が造りだした「テクノロジー」としてとらえ、近代文明批評、メディア論、文化人類学、文芸批評、美術批評、文化研究、映像論、IT批評など、複数の学問領域にまたがるハイブリッドな視点から考えます。専門性にとらわれない、人間についての幅広い関心と興味を持った受講生の履修を望みます。
科目目的
この科目の目的は、メディア/テクノロジーを否定したり、あるいは、それが持っている「あやうさ」を警戒するあまり「テクノフォビア(テクノロジー嫌い)」になることではありません。過去から現在の多くの芸術や文芸作品、そしてそこにこめられた思索にふれることを通じて、個々のテクノロジーの発明とその普及によって「ひらかれるもの」や「失われるもの」「よみがえるもの」や「ひっくりかえるもの」(「授業方法」の項を参照してください)をみきわめ、「持続可能」で「共存可能」な適正なテクノロジーとはなにか(あるいは、どれか)を問う視点と感性を身につけ、実際の自分の生活のなかで、それを選びとり、あるいは、組み合わせてゆく実践的な態度、つまり「オルタナティヴなテクノ・リテラシー」の獲得を目標としています。
到達目標
「メディア論」の先駆であるマクルーハンの思索は、文化人類学者エドワード・ホールの次の考えを拡張したものです。「かつて人間が自分の身体を使って行っていたことのほとんどが、今日では「拡張活動」によって行われている。武器の進化は、こぶしと歯にはじまり、原子爆弾で終わる。メガネ、テレビ、電話、時空を超えて声を伝える書物などは、そうした物質的拡張の例である」。マクルーハンは「車輪は足の拡張であり、本は目の拡張であり、衣服は皮膚の拡張であり、電子回路は神経の拡張である」とし、メディア/テクノロジーが、人間の意識や感覚、そして社会のあり方さえを変えてしまうという点に注目しました。そして最後の著作では「拡張」だけでなく、さまざまなメディア/テクノロジーが「強化させるもの」「衰退させるもの」「回復させるもの」「反転させるもの」に注目し、メディアの持つ特性を精査するための下の図式を「テトラッド」と名づけました。
○○を強化する ○○に反転する
○○を回復させる ○○を衰退させる
【マクルーハンのテトラッド】
この講義では、さまざまな作家や芸術家、思想家たちの作品や思索にあたりながら、二〇世紀から現在までのメディアをこの図式にあてはめ、それが現代社会に与えた変化について多面的に考えることが、この科目の到達目標です。
授業計画と内容
各授業ごとのテーマは次のとおりですが、受講者の興味と関心、理解度にあわせて、授業のテーマは変更する場合があります。
■01【人間拡張の原理】「メディアはマッサージである。」(マーシャル・マクルーハン)
■02【パパラギ】「どんな機械もテクノロジーも人を幸せにしたことはない」(ツイアビ)
■03【バランスのこわれた世界】「私たちはテクノロジーのなかで生きている」(ゴドフリー・レジオ)
■04【スペクタクルの社会】「テレビは私たちを連れ去る」(リチャード・セラ)
■05【メディアの法則1】「拡張」「衰退」「回復」「反転」(マーシャル・マクルーハン)
■06【メディアの法則2】「動員の革命」(津田大介)
■07【メディアの法則3】「時間どろぼう」(ミヒャエル・エンデ)と「灰色」(小沢健二)
■08【メディアの法則4】「芸術もて、あの灰色の労働を燃せ」(宮沢賢治)
■09【アクシデント】「新たなテクノロジーの発明は新たな事故の発明である」(ポール・ヴィリリオ)
■10【忙しいゾンビ】「メディアに繋ぎとめられた者」(アントニオ・ネグリ)
■11【人間の終焉】「世界はこれで十分、もう十分だ」(ビル・マッキベン)
■12【スモール・イズ・ビューティフル】「人間の顔をしたテクノロジー」(E・R・シューマッハ)
■13【メタバース】「AI」「SNS」「WEB3」
■14 アクティヴラーニング式テスト
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
リアクションペーパーの提出
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 90 | 「成績評価の方法と基準」参照 |
その他 | 10 | リアクションペーパー |
成績評価の方法・基準(備考)
下記の5点を評価の基準とします。
①オーセンティック・ラーニング
②クロスカリキュラム・ラーニング
③アンチバイアス・ラーニング
④プロアクティヴ・ラーニング
⑤クリティカル・ラーニング
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
その他
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
クリッカー
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
講義を担当する講師は、文化人類学を修めた後、現代美術家になり、現在はグラフィックデザインや映像編集などの仕事をしながら、複数の大学で教育活動を行っています。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
この講義では、アートやデザインのスキルを活かし、講師が独自に編集した動画やグラフィック資料を教材に使って講義を行います。
テキスト・参考文献等
教科書は使いません。授業ごとに必要な教材や資料を準備して、プリントとmanaba で配布します。
その他特記事項
大学で「教養」を身につけることの意義については、下記の文章を参考にしてください。
「ひとつの時代が終わったと言われて久しい。だが、その先にいかなる時代を展望するのか、私たちはその輪郭すら描きえていない。グローバル資本主義の浸透、憎悪の連鎖、暴力の応酬、世界は混沌として深い不安の只中にある。現代社会においては変化が常態となり、速さと新しさに絶対的な価値が与えられた。消費社会の深化と情報技術の革命は、種々の境界を無くし、人々の生活やコミュニケーションの様式を根底から変容させてきた。ライフスタイルは多様化し、一面では個人の生き方をそれぞれが選びとる時代が始まっている。同時に、新たな格差が生まれ、様々な次元での亀裂や分断が深まっている。社会や歴史に対する意識が揺らぎ、普遍的な理念に対する根本的な懐疑や、現実を変えることへの無力感がひそかに根を張りつつある。そして生きることに誰もが困難を覚える時代が到来している。しかし、日常生活のそれぞれの場で、自由と民主主義を獲得し実践することを通じて、私たち自身がそうした閉塞を乗り超え、希望の時代の幕開けを告げてゆくことは不可能ではあるまい。そのために、いま求められていること、それは、個と個の間で開かれた対話を積み重ねながら、人間らしく生きることの条件について一人ひとりが粘り強く思考することではないか。その営みの糧となるものが、教養に外ならないと私たちは考える。歴史とは何か、よく生きるとはいかなることか、世界そして人間はどこへ向かうべきなのか。こうした根源的な問いとの格闘が、文化と知の厚みを作り出し、個人と社会を支える基盤としての教養である」「岩波新書新赤版1000点に際して」(2006年)より抜粋
参考URL
https://illcommonz.wordpress.com/