シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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博物館資料保存論 | 2024 | 後期 | 土3 | 文学部 | 酒井 中 | サカイ アタル | 2~4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-MG2-Y316
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
一般に、博物館に収蔵される資料は、それ以前には実際に使用されていたものや博物館内とは異なる環境におかれていたものが多く、館内での展示あるいは収蔵庫で保管している間にも脆弱化・劣化したり、破損することさえもある。
歴史的価値のあるものは、長い時間経過を経ても、その状態を保存されてきたものであるが、今日のような消費型社会においては、大量生産・大量消費を前提としており、長く持たせようという発想はない。その一方、文化史や社会史、産業史、美術史、民俗史などあらゆる歴史は、実物資料を通して過去をよりよく理解できるものである。博物館はあらゆる社会の歴史遺産を積極的に保存・活用してゆく社会的使命を負っており、そこで働く学芸員には資料保存に対する責務があり、そのためには資料保存に関する適切な知識が求められるのである。
本科目では博物館における資料の展示及び収蔵環境を科学的に捉え、資料を良好な状態で保存していくための知識を習得することを通して、博物館資料の保存に関する基礎的能力を養う。
科目目的
資料保存の観点から展示環境及び収蔵環境を科学的に捉え、資料を良好な状態で保存していくための知識を習得することを通じて、資料の保存に関する基礎的能力を養うともに、博物館の資料を取り巻く現状や課題についての理解を深める。
到達目標
学芸員として博物館活動に従事するうえで必要となる資料保存に関する基礎知識を習得し、実際に資料を取り扱う際の要点を把握すること、博物館における資料保存の今日的課題及び資料が保管される環境について、科学的に分析できる基礎学力を身に着けることを目指す。
授業計画と内容
第1回 ガイダンス、博物館資料を保存する意義、職業倫理
第2回 博物館資料保存に関わる法律と令和4年度博物館法改正
第3回 資料の材質と劣化要因、保存科学
第4回 資料の取り扱いと収納 梱包・輸送
第5回 博物館資料の保存環境と対応(1) 温湿度環境、光と照明
第6回 博物館資料の保存環境と対応(2) 室内空気汚染、大気汚染
第7回 博物館資料の保存環境と対応(3) 生物被害、IPM
第8回 博物館資料の保存環境と対応(4) 屋外環境
第9回 博物館資料の修復(1) 資料の劣化,汚損への対応
第10回 博物館資料の修復(2) 地震,火事,水害などへの対応
第11回 博物館資料の危機管理、文化遺産防災学
第12回 地域資源・文化財の保存と活用、オーバーツーリズム
第13回 レプリカ製作、デジタルアーカイブ
第14回 まとめ:資料保存に関わる課題と展望
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
特定のテキストは設定していない。講義レジュメをmanabaを利用して受講生に配布する。必要があれば、紙の資料を適宜配布する。予習は必須ではないが、配布資料を読み直す、博物館等に出向いて実態を確認すると、より理解が深まるものと思われる。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 50 | 期末レポートをもって期末試験に替えることとします。 |
平常点 | 50 | 出席率、受講態度、課題の提出状況から総合的に判断します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
【成績評価の前提】
出席率が70%に満たない者については、レポートの内容や受講態度を問わずE判定とします。
【欠席の取り扱いについて】
就職活動・インターン・課外活動による欠席については、事前に申告があった場合は出席扱いまたは公欠扱いとします。事後報告は欠席扱いとします。傷病等により登校困難な場合は事前連絡および事後に診断書等の証跡提出を以って出席扱いとします。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
・地方自治体での埋蔵文化財調査および整理・報告書作成業務 5年
・民間企業での埋蔵文化財調査および整理・報告書作成業務 16年
・GISを用いた自治体向け文化財管理システム構築業務 10年
・ICT技術を用いた博物館資料の管理システム構築業務 5年
・3次元計測技術を用いた博物館資料・史跡のデジタルアーカイブ 10年
・遺跡出土品の保存処理業務 16年
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
博物館資料の保存や史跡整備等に関する課題について、業務において経験した事例紹介を交え、課題の解決プロセス、現時点では解決困難な問題も存在することを理解させることで資料保存に関する理解を深めてもらう。
テキスト・参考文献等
特定のテキストを定めることはしないが、内容的には次の文献が参考になる:
石崎武司編著『博物館資料保存論』 講談社,2012年
岩崎奈諸子・佐藤崇・中川千種・横山操『文化財と標本の劣化図鑑』朝倉書店,2023年
神庭信幸『博物館資料の臨床保存学』武蔵野美術大学出版局,2014年
佐滝剛弘『観光公害 -インバウンド4000万人時代の副作用-』祥伝社新書,2019年
東京文化財研究所(編)『文化財害虫事典 ー博物館・美術館におけるIPM(総合的害虫管理)推進のためにー』クバプロ,2004年
立命館大学「テキスト文化遺産防災学」刊行委員会(著)『テキスト文化遺産防災学』学芸出版社,2013年
公益財団法人日本博物館協会(編)『改訂版 博物館資料取扱ガイドブック』ぎょうせい,2016年
その他特記事項
上記参考書以外については、テーマに即した参考文献や資料のを講義中に紹介することとする。