シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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生徒指導論 | 2024 | 後期 | 月2 | 教職 | 中條 克俊 | チュウジョウ カツトシ | 3年次配当 | 2 |
科目ナンバー
QC-TC3-C902
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
最近の学校現場においては、「社会化」(socialization)の機能低下が顕在化している。具体的には不登校、低学力といった「不適応」とともに様々な形で現れる「問題行動」がある。こうした問題の背景には個人的な要因の他に明らかに社会的要因がある。この授業では、「ケース」(事例)を取り上げ、問題に即して法規的根拠、人権への配慮、具体的な指導法の各視点を理解したうえで、受講者がディスカッションしながら「よりよい指導法」とその根拠を模索する。当事者性を持つこと、教員としてどうするか自分の意見を持つことなどを重視して、問題に複眼的にアプローチする。また、この授業では、担当者が行なっている調査やさまざまなケースに基づいて問題を提起し、教職を目指す受講者と共に「生活指導」「生徒指導」について考える。
科目目的
生徒指導は、一人一人の児童・生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して教育活動全体を通して行われる重要な教育活動である。この授業では、生徒指導(広くは「生活指導」)について、その原理・方法を理解するとともに、現実に即して、生徒指導の観点から学校教育について考察する。
到達目標
現在、学校現場で起こっている様々な問題について、「教員の視点」に立ち、教員としての自分の考えを持ち、それを諸規定に照らして吟味し、現実に即して自分の言葉で表現して、諸問題の解決の方向性や方策を方法論も踏まえて提案できるようになることがこの授業の到達目標である。
授業計画と内容
講義とグループ・ディスカッションを中心に授業をすすめる。グループ・ディスカッションでは「ケース(事例)」を提示してよりリアルに問題を捉え、当事者性を持って考え、「自分ならどうするか・どうすべきか」という実践の視点が得られるような授業展開を心がける。知識を得ることよりも問題へのアプローチを中心にするので、自分の考えを持ち、グループ・ディスカッション形式での意見交換に積極的に参加してほしい。
1.オリエンテーション・・・生徒指導とは何か?
2.生徒指導と生活指導・・・学校教育における「生徒指導」の位置づけ
3.生徒指導の意義と役割,歴史的変遷
4.学校の生活指導(生徒指導)・・・「個人化社会」に抗う集団指導を通した「社会化」の意味
5.自己指導能力とはなにか?自己指導能力はいかにして育成されるのか?
6.生徒指導の体制と運用の実際・・・「チーム学校」としての生徒指導はいかに構築されるか?
7.生徒指導の実際1(規律指導の意味を問う)
8.生徒指導の実際2(授業規律と評価)
9. 問題行動1(いじめ問題の予防と対応)
10.問題行動2(不登校問題の予防と対応)
11.問題行動3(非行問題の予防と対応)
12.生徒理解のための生徒指導と教育相談・・・学校・家庭・地域の連携
13.生徒指導の現在の課題・・・厳しい生徒指導vs受容的生徒指導
14.授業のまとめ・・・発達の視点に立つ生徒指導の展開
授業時間外の学修の内容
授業終了後の課題提出/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
(1)講義内容を振り返り、理解不十分と思われる項目または用語を確認すること。
(2)社会情勢に敏感に反応し、新聞記事、インターネット等を活用して積極的に情報を収集・分析して、現
代の教育事情を把握すること。
(3)社会的視野を広げるために、教職課程に関する文献、資料を読むこと。
(4)博物館、美術館等での文化財鑑賞並びに内外の映画鑑賞を通して、文化的素養を高めること。
(5)教育に関する研究会に積極的に参加し、研究者・現場の先生方から多くを学ぶこと。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 50 | 与えられた教育テーマと課題図書から学んだことをレポートにまとめ、発表する。基礎知識の習得状況とレポート内容を総合的に判断して評価する。 |
平常点 | 50 | 授業への参加・貢献状況、グループワークの発言内容、毎回のリアクションペーパー、提出する小レポートなどより総合的に判断して評価する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
授業や資料等をとおして、課題の講評を全体に向けて行う。質問があった場合には、回答するとともに、全体にも共有する。授業内容など積極的に質問してほしい。
アクティブ・ラーニングの実施内容
その他/実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
討議を深めるため、学生から出た意見や質問については共有できるよう随時、紹介していきたい。
授業におけるICTの活用方法
タブレット端末
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
授業資料の配布、質問の受付、課題提出などをmanabaで実施する。
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
1981年4月、全国的に「校内暴力の嵐」が吹き荒れる中、36年間の埼玉県公立中学校社会科教員の人生がスタートした。「果てしなき暴力教室」とマスコミで報じられ、「日本一の荒れる学校」とまで言われた 埼玉県南部の中学校が講師の教員人生の原点である。毎日深夜にまで及ぶ生徒指導の連続は、描いていた教員生活と現実は大きくかけ離れ、挫折と心機一転巻き返しの繰り返しであった。以後、定年退職するまで、「校内暴力の嵐」から学んだ以下の5点を教訓に現場第一主義(目の前の子どもたちと向き合う)の教員をめざすことになった。
①教師の権威を笠に着た力まかせの指導をしない教育。「理解・共感・一致」を大切にする生徒指導。
②目立たない子どもにこそ目を向け、一人ひとりの子どもたちと向き合う教育。
③子どもと共に学び、個を尊重する集団づくりをめざす教育。
④競争原理に走らず、点数学力以外の学力(生きる力・思考力・判断力・表現力)を育てる教育。
⑤すべての学習は平和学習を追究する教育。暴力の否定・非行克服から始まった平和学習の継続。
教員経験年数を重ねていくうちに、教科主任、研修主任、進路指導主事など責任ある仕事を任され、教員人生の後半は学年主任として学年教員団のまとめ役としてチームワークある教育活動をめざした。
学級活動・生徒会活動・学校行事に専念し、学校づくりに授業づくりにのめり込み、放課後は水泳部顧問として生徒に負けられるかと一緒に泳いだトレーニングという具合に仕事は多種多様であったが、楽しかったから続けることができたといえよう。教師の仕事は「苦あれば楽あり」で、やりがいはある。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
1981年4月から2017年3月までの36年間を埼玉県公立中学校社会科教員として子どもたちと共に積み上げてきた教育実践と一教員のライフヒストリーを講義でくわしく伝えていきたい。ここでは、講師自身が獲得した体験的教師教育論のポイントを示しておく。
(1)願望としての教師像
①社会派教師 ②授業の達人 ③醒めた熱血教師
(2)教員は職人です―技を盗みクリエイティビティ(独創性)をめざす
①職人気質 ②職人技 ③職人魂
(3)教員はルポ・ライターです―地域を探訪(ルポルタージュ)し教育実践記録を残す(ライター)。
(4)失いたくない教育信念
①教育は人なり ②教えることは学ぶこと ③すべての学習は平和学習
(4)子どもから見た教師論ー子どもが嫌う教師
①不公平な教師(気に入った子だけえこひいきする教師)
②比較する教師(兄弟姉妹、友人そして学力の優劣だけで比較する教師)
③自慢話ばかりする教師(いばってエラソーなことばかりいう教師)
教育は教員の全人格が問われていることを忘れてはならない。子どもたちの尊厳を踏みにじり、自信満々だが中身のない教員の授業は空疎である。一方、子どもたちからも学ぶ姿勢を持つ教員の授業はゆたかである。子どもの今は未熟かもしれないが、「後生畏るべし」である。子どもを見下すのではなくリスペクトして共に学びあう姿勢は教育実践に見事に反映されていく。
講師の実務経験と獲得した教育的理論に基づいた講義をめざし、受講生の意欲と創造性を高めたい。
テキスト・参考文献等
《テキストー事前に購入しておいてください》
『君たちに伝えたい③朝霞、校内暴力の嵐の中から生まれたボクらの平和学習。』(中條克俊著、梨の木舎、2017年)
《参考文献》
『生徒指導提要』(2022年)
『学習指導要領解説特別活動編』(2018年)
その他、適宜授業で紹介します。