シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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離散数学1 | 2024 | 前期 | 火5 | 理工学部 | 酒折 文武 | サカオリ フミタケ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
SE-AN1-1B01
履修条件・関連科目等
本科目の内容は数学的帰納法、数列と和、無限和、順列や組合せなどを扱い、高等学校の数学と密接に関係しているので、履修に際して一定以上の理解が望まれる。しかしそれ以上に、この高度情報化社会・AI時代において、数学を活用して問題解決したいという気概を求める。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
本科目では、数学的帰納法や漸化式、和の計算、整数論、組合せ論、母関数といった離散数学の基本的な考え方を、具体例を豊富に用いながら学んでいく。もう少し具体的には、以下のような内容を含む。
数学的帰納法
その原理と手順を理解し、馴染みのある問題だけでなく、少しとりかかりにくいような命題の証明にもトライする。また、ありがちな数学的帰納法の誤用・悪用についても学ぶ。そして、数学的帰納法が帰納ではなく演繹であることを学習する。
漸化式
簡単な2項間漸化式を解く方法として特性方程式や和の因子を用いた方法などを学習する。また、与えられた漸化式を解くだけでなく、具体的な問題設定から自分で漸化式を立てるトレーニングを行う。そして、少し複雑な問題について漸化式を立てて解くことにもトライする。
数列の和
柔軟な和の記法や、和の基本的なルールについて学び、和の計算法として摂動法や拡大縮小法といった特殊な方法についても学習する。そして、複数の添字についての和である多重和の定義と性質を学び、混乱しやすい多重和の計算についても確実におこなえるようトレーニングする。さらに、級数(無限和)の計算の注意点に確認するとともに、特殊な級数としてリーマンのゼータ関数に触れ、他の科目との接続をしておく。
組合せ論
順列・組合せで登場するさまざまな場合の数を確認する。その中で、二項係数と第1種・第2種スターリング数について、漸化式をはじめとする基本的な性質を学ぶ。また、二項係数については整数全体への拡張を行い、組合せ的な理解のみならず数式的な理解を深める。
母関数
特別な級数である母関数の定義を学び、簡単な数列に対する母関数を確認する。そして、母関数の応用例として、母関数を用いた漸化式の解法について学ぶ。また、指数型母関数や超幾何級数についても触れる。
授業は教科書代わりの配布資料に基づいて行われるが、配布資料にはほぼ証明や計算過程は記されていないので、板書でそれらを説明しながら進める。他の数学の専門科目とは異なり、数学的な厳密性よりも、その直感的な理解や応用可能性を重視する部分もある。その場合は、上の学年の他の科目で厳密な理解を補ってほしい。
受動的ではなく、皆さんの主体的な授業参加を促すために、適宜ディスカッションの時間や、手元での計算練習、そして発言の機会を多く設けるつもりで準備をする。しかしながら新型コロナウイルスの影響で対面型の授業が難しい場合には, manaba での議論等も活用する。
科目目的
離散数学は、有限で離散的な構造を研究対象とする数学である。離散数学の範疇に含まれる分野は多岐に渡るが、無限で連続的な構造を主な研究対象とする他の数学とは考え方が異なる部分も多い。
離散数学の各分野はデータサイエンスや計算機科学---すなわち情報・計算の基礎理論やコンピュータ上への実装に関する研究分野---の基礎をなすものであり、高度情報化社会・AI時代にあって非常に重要性が増してきている。
離散数学1では、
・数学的帰納法, 漸化式
・数列の和, 多重和, 級数(無限和)
・組合せ論
・母関数
といった、離散数学の中でも基礎的な内容を扱う。後期の離散数学2では、離散的な確率論やグラフ理論といった、より「離散数学的'」な内容を扱う。その離散的な考え方や操作に熟達し、必要な場面で活用できるようになること、そして、現代数学を学ぶ上での基礎とすることが目的である。
到達目標
具体的には, 以下が皆さんの到達目標である。
・数学的帰納法の原理を理解し、様々な命題の証明に活用できる。
・具体的な問題設定から自分で漸化式を立て、その漸化式を解くことができる。
・多重和、無限和も含んだ和の記法(シグマ記法)に熟達し、自由に計算できる。
・二項係数、スターリング数などの基本的な組合せ数について、その性質を理解する。
・母関数や関連する級数の定義と意味を理解し、必要な場面で活用できる。
いずれも、基本的にはほとんど全ての定理を自力で証明できるようになって欲しいが、全員にはそれを求めないようなレベルの問題は「発展」として扱う。発展問題も決して難し過ぎはしないので、余力のある人は是非トライして欲しい。
また、授業期間中随時、そして半期が終了した時に上の到達目標を振り返り、自分の理解度・達成度の自己評価に役立ててほしい。
授業計画と内容
第1回(対面)ガイダンス、数学的帰納法
第2回(オンデマンド)漸化式を立てる、漸化式を解く、複雑な漸化式
第3回(対面)帰納と漸化のまとめ
第4回(オンデマンド)和の計算、多重和
第5回(オンデマンド)多重和のまとめ
第6回(オンデマンド)無限和、リーマンのゼータ関数
第7回(対面)中間到達度確認
第8回(オンデマンド)組合せの数、第2種スターリング数
第9回(オンデマンド)第1種スターリング数
第10回(オンデマンド)二項係数と拡張、二項係数の性質、二項係数と母関数
第11回(オンデマンド)母関数と指数型母関数
第12回(対面)母関数のまとめ
第13回(オンデマンド)母関数の応用、超幾何級数
第14回(対面)到達度確認
オンデマンド授業の回については、特設ウェブサイトにて100分の授業相当の動画や解説を行う。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
テキストの予習・復習により理解を深めておくこと。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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中間試験 | 40 | 帰納と漸化、和に関する各概念の基礎的な理解と、その応用力を問う。 |
期末試験(到達度確認) | 40 | 組合せ論、母関数、超幾何級数に関する各概念の基礎的な理解と、その応用力を問う。 |
平常点 | 20 | 簡単な演習問題やミニッツペーパーにより、基礎的な概念の理解を問う。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
リアルタイムでの演習時間に補足や解説を行う。また、manaba での議論やフィードバックを行う。
アクティブ・ラーニングの実施内容
その他
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
計算演習を行なう。
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキスト:特に指定しない
参考書:グラハム、クヌース、パタシュニック「コンピュータの数学」共立出版 1993 ¥10.260
講義資料を適宜配布する。
その他特記事項
講義内容や評価方法の詳細は第1回の講義内で説明する。授業に関する連絡や重要情報等は manaba に掲載するので、適宜確認すること。
参考URL
E-mail: sakaori@math.chuo-u.ac.jp