シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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構造化学 | 2024 | 前期 | 火4 | 理工学部 | 岡島 元 | オカジマ ハジメ | 3年次配当 | 2 |
科目ナンバー
SE-BC3-6B13
履修条件・関連科目等
学部の物理化学系科目(『基礎物理化学』『物理化学1』『物理化学2』『物理化学3』の化学熱力学・量子化学に相当する分野)を履修済みであること。さらに、『量子化学』も併せて履修すると理解が深まる。本科目で扱う内容は、応用化学科の必修科目である『応用化学実験4(物理化学実験)』を深く理解するためにも役立つ。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
物質の構成要素である「分子のかたち」や、「分子のあいだにどのような相互作用が働き液体や固体がつくられるのか」、そのような「ミクロな分子論的知見がマクロな物性にどう関わるか」は分子論に基づく物理化学の中心的テーマである。これまでに、さまざまな実験や理論計算(近年ではデータ科学を含む)により精細な知識が積み重ねられてきた。
本講義では、最初に分子構造を調べるための分子分光法の基礎について解説し、分子の回転や振動を調べることにより分子構造を決定する方法や、電子遷移や電子励起状態の性質を調べる方法などを説明する。つぎに、分子間相互作用の起源を説明し、高分子や分子集合体の構造がどのように決まるかを述べる。最後に、これらのミクロな分子論の知識と、物質のマクロな熱的性質(化学熱力学として学修)とをつなぐ「統計熱力学」の考えを導入し、物質の化学的性質を分子論的に理解する基礎を学ぶ。
科目目的
我々が肉眼で観測することができる物質の性質の多くは、モル単位、アボガドロ定数個の「膨大な」分子が集合して発現する物性を「平均的に」観測したものである。1・2年次に学んできた物理化学の化学熱力学分野では、これらの物性についての理解を深めてきた。一方で、分子はそれぞれ特有のかたちをしており、その構造や分子同士にはたらく力(分子間相互作用)が物質の性質の起源となる。
本科目で学ぶ構造化学とは、分子の個々の状態・構造に注目する「分子論」に基づいて、物質の性質を理解する物理化学の一分野である。本科目ではミクロな視点を与える分子論(分子分光学や分子間相互作用)の基礎理論から始め、それらの概要について理解することを目的とする。また関連する実験技術についての理解を深めることも目的とする。さらに、物質のミクロな性質とマクロな性質をつなぐ統計熱力学の基礎を学ぶことで、「分子論に基づいて物質の化学的性質がどう説明されるか」を理解することを目的とする。これらによって、分子論に立脚した物理化学を俯瞰的に理解することを目指す。
到達目標
分子のかたちを調べる分子分光学の基礎(理論および実験技術)について理解する。液体や固体を形成する基盤となる分子間相互作用の種類や性質についてその基礎を理解する。個々の分子に関する性質をマクロな熱力学的物性と結びつける統計熱力学の概念(ボルツマン分布や分配関数)を理解する。これらの概要を自分の言葉で説明できるようになる。
授業計画と内容
第1回 ガイダンス,光と分子の相互作用,分子分光法の実際
第2回 量子論の基礎,ボルツマン分布則*
第3回 回転分光法(1):分子の慣性モーメントと回転子の種類
第4回 回転分光法(2):剛体回転子のエネルギー準位と回転遷移選択律*
第5回 振動分光法(1):2原子分子の振動と多原子分子の基準振動
第6回 振動分光法(2):調和振動子のエネルギー準位と振動遷移選択律*
第7回 回転の遠心力歪み,振動の非調和性,振動回転遷移*
第8回 電子励起状態(1):電子遷移とフランク-コンドンの原理
第9回 電子励起状態(2):電子励起状態の緩和
第10回 分子間相互作用(1):電気的相互作用*
第11回 分子間相互作用(2):水素結合,相互作用ポテンシャル
第12回 統計熱力学(1):分配関数*
第13回 統計熱力学(2):熱力学的性質の起源
第14回 総括
*で示した内容の回はオンデマンド講義として実施する(各回100分相当の動画や課題)。公開日以降も繰り返し視聴して復習できる(詳細はmanabaのコースニュースにて連絡する)。また各回の演習課題の解答解説もオンデマンド教材として公開する(各回10分程度の動画)。これらの講義内容は、それ以降の講義内でも繰り返し参照する。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
毎回の講義終了後に演習問題(レポート課題)を出題する。それに取り組むことで講義内容の復習をする。
講義資料は講義の前後に配布する。毎回の演習問題に対する解説もオンデマンド資料として公開する。それらを活用して講義の予習・復習をすること。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 60 | 電磁波一般についての基本事項(用語、単位換算)を理解していること。分子の振動スペクトル、回転スペクトル、電子吸収スペクトルの概略を理解していること。分子間相互作用の種類や式について、区別して理解していること。統計熱力学におけるボルツマン分布・分配関数の概念およびそれらと各種熱力学関数の関係について理解していること。 |
レポート | 30 | ほぼ毎回の講義で、講義内容に関する演習問題を課す(講義で述べたことの応用問題であり、演習に取り組むことで復習にもなる)。講義で学んだ事項を、具体的事例にあてはめ、自らの言葉で論理的に説明できるかどうかを評価基準とする。 |
平常点 | 10 | 講義中にRespon等を使ってアンケートやクイズ、コメントシートを課す。それらに答え、積極的に講義に参加しているかを評価する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
期末試験とレポート、平常点を総合し、60 %以上の正解により合格とする。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う/その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
毎回出題する演習問題に対して、その解答解説を補助講義資料として公開する(PDFおよび動画にて)。
講義内容に対する質問は、manabaの掲示板機能を用いて受講生全員が見えるように公開する。
アクティブ・ラーニングの実施内容
その他
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
毎回の講義や演習問題についての理解度確認を、Responを使った履修生参加形式で行う。
また、それまでの講義資料を学習していることを前提に、講義中にResponやmanabaを使って小課題に答える部分的な反転授業を行う。これらの講義運営については、講義中、あるいはmanaba コースニュースにて適宜指示する。
授業におけるICTの活用方法
クリッカー/その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
Manabaを活用して講義内容に関する質問に答える。
Webexなどで、講義に関連する動画を配信する。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキスト:
[1] 講義資料としてスライドPDFを配布する
[2] P. W. Atkins・J. de Paula 著,千原 秀昭・稲葉 章・鈴木 晴 訳『アトキンス 物理化学要論(第7版)』 東京化学同人,ISBN:9784807909773
参考文献:
分子分光学に関する書籍
[3] 中田 宗隆 著『基礎コース物理化学Ⅱ分子分光学』東京化学同人,ISBN:9784807909377
[4] 日本分光学会 編『分光測定入門シリーズ1分光測定の基礎』講談社,ISBN:9784061571075
統計熱力学に関する書籍
[5] D. A. McQuarrie・J. D. Simon 著,千原 秀昭・江口 太郎・齋藤 一弥 訳『物理化学(下)分子論的アプローチ』東京化学同人,ISBN:9784807905090
その他特記事項
中学校及び高等学校一種免許状(理科)の教員免許の取得において、本科目は選択科目の一つである。