シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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基礎演習Ⅰ | 2024 | 前期 | 金4 | 総合政策学部 | 川口 康裕 | カワグチ ヤスヒロ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
PS-BS1-0001
履修条件・関連科目等
参加者として、国や地方公共団体による「政策」の形成過程、運用に関心を持っている人、そして大学での学びを将来の「生きる力」としたいと考えている人を想定する。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
演習テーマ:18歳から大人ー「成年年齢引下げ」の政策形成過程
民法の成年年齢を20歳から18歳へ引き下げる民法の改正法が2020年4月に施行された。この演習では、学生の皆さんとともに、この「政策」が形成された経緯、実施に当たっての問題点、それを解決するためにとられた対策、その実施状況を調べることにする。
この政策が策定されるに当たっては、2007年に日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)で投票権年齢が18歳に定められ、続いて、2015年に公職選挙法改正による選挙権の18歳への引下げが行われ、2018年の民法改正により、民法における成年年齢引下げが実現した。これによる若年者における消費者被害の拡大等が懸念されたが、これを防止するために、高校教育等における消費者教育の充実が図られ、若者に多い消費者被害を念頭においた消費者契約法の改正も行われた。
新たに入学した新1年生は、こうした時代背景のもとで高校時代に消費者教育を受け、18歳で成人になった当事者なので、自らの経験を振り返りながら、政策形成の実務を学ぶこととする。
国会における法案審議、関係省庁における連携、中央政府と地方公共団体の機関である消費生活センター、独立行政法人との協働を理解する。また、消費者政策における代表的な民事ルール(民法の特則)である消費者契約法についても条文に直接触れ、法律についての基礎的な理解を得る。
科目目的
高校時代に消費者教育を受け、18歳で成人になった「自らの実体験」を振り返りながら学ぶことを通して、これから「政策」を様々な角度からで学んでいく、基礎的技能を養成する。
到達目標
中央政府によって「政策」が策定される契機、形成過程、そこにかかわる立法府、関係府省庁、独立行政法人等の「分担と協働」、関係団体とのやりとり、実施に当たっての地方政府(都道府県、市町村)の協力、事後的な実施状況の点検など、政策のPDCAについてイメージを持ち、本学部における様々な科目の学修につき意欲を育む。副次的効果として、将来にわたり、消費者被害にあいにくく、あっても被害を小さくする技能(生きる力)を身につける。
授業計画と内容
演習の進行は、今のところ次のような流れを予定している。
第1回 成年年齢引下げをめぐる諸問題(全体の概観)
第2回 国民投票法の制定と投票権年齢
第3回 公職選挙法の選挙権年齢の引下げ
第4回 民法の成年年齢引下げと消極意見
第5回 若年者の消費者被害
第6回 消費者教育の充実
第7回 消費者教育教材「社会への扉」の研究1
第8回 消費者教育教材「社会への扉」の研究2
第9回 消費者ホットライン188と消費生活相談員
第10回 消費者契約法の内容
第11回 平成30年消費者契約法改正
第12回 国民生活センターと消費生活センター
第13回 対策の実施状況
第14回 まとめ・総括
(注)演習のテーマ、順序は変更がありうる。
授業時間外の学修の内容
授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
出席者は、順番にテーマに沿った事前調査を行い、演習で発表する。演習終了までに、演習での議論等を踏まえたレポートを作成して提出する。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 30 | レポートの内容、論理的表現力。 |
平常点 | 20 | 毎回の演習における発言などの貢献度を評価する。 |
その他 | 50 | 担当回における報告内容、他の学生とのコミュニケーション。 |
成績評価の方法・基準(備考)
担当回における報告(パワーポイントによるプレゼンテーション)を重視する。割り当てられたテーマについて、所要の報告ができなかった場合には、原則として単位は取得できない。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/プレゼンテーション/実習、フィールドワーク
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
オンデマンド講義を体験し、Responを通じて意見・感想をまとめる。演習における報告にあたっては、パワーポイントによるプレゼンテーションを義務づけ、「プレゼン、ディスカッション力」を磨く。
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
担当教員は、国家公務員として、40年務めた経験を持ち、消費者庁設立にあたり、内閣官房において、参事官として参画した後、消費者庁審議官、消費者庁次長を合計7年務めた。
この間、平成30年には、「成年年齢引下げ」を見据え、若年者への消費者教育の推進に関する 4省庁関係局長連絡会議を主宰し、「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」をとりまとめた。また、このアクションプログラムの内容となった消費者契約法の制定(平成12年)と改正(平成30年)、教材の開発、消費生活センター、消費生活相談員の資格制度の法定化(平成26年消費者安全法改正)、消費者ホットライン188の設置、独立行政法人国民生活センターの整備などにも様々な立場で直接携わった。また、数多くの内閣提出法案の立案、審議過程をいろいろな立場で経験し、政府参考人として多くの国会答弁を行った。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
国の政策策定過程の様々な局面を経験しているため、この経験を踏まえ、学生の「素朴な疑問」に対して実務経験を踏まえ、わかりやすく解説するとともに、実務の観点から意味のある研究の方向を示唆する。
テキスト・参考文献等
参考文献
川口康裕「成年年齢引下げと消費者政策」2018/10『青山法務研究論集』16号 67-85ページ
(青山学院大学法務研究学会)
https://www.agulin.aoyama.ac.jp/repo/repository/1000/20647/20647.pdf
河上正二「第3講 成年年齢の引下げと消費者法」『遠隔講義 消費者法<新訂 第3版>2022』(信山社 2022年) 47ー57ページ
『法学セミナー』(日本評論社)744号([特集]18歳選挙権のインパクト)、747号([特別企画]18歳選挙権の論点 教授大ゼミナール )、802号(特集 子どもと学校)所収の関連論文
消費者庁、法務省、文部科学省、金融庁、独立行政法人国民生活センター、衆議院、参議院ウェブサイト掲載の各種資料(下記参照)
報告テーマと出席者の関心に沿って、適宜授業内で追加的に紹介する。
その他特記事項
参考URL
消費者庁ウェブサイト(若者の消費者教育関連)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/consumer_education/basic_policy/
https://www.caa.go.jp/future/project/project_003/
(生徒用教材 「社会への扉」)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/public_awareness/teaching_material/material_010/student.html
法務省のウェブサイト(成年年齢引下げ関連)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html
文部科学省のウェブサイト(消費者教育関連)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html
金融庁のウェブサイト(成年年齢引下げ関連)
https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/seinen.html
独立行政法人国民生活センターのウェブサイト(若者の消費者教育)
https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/wakamono.html
衆議院のウェブサイト(憲法改正国民投票の投票権年齢)
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/shukenshi073-1.pdf/$File/shukenshi073-1.pdf
参議院のウェブサイト(公職選挙法一部改正)
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2015pdf/20151001003.pdf