シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
モデリング | 2024 | 前期 | 火3 | 理工学研究科博士課程前期課程 | 樋口 知之 | ヒグチ トモユキ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
SG-SA5-7C06
履修条件・関連科目等
大学における基礎数学(特に線形代数)、確率論を理解していること。また、簡単なシミュレーションの仕組みを理解していることを前提とする。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
数値シミュレーションと観測・計測データを融合する手法であるデータ同化の理論とアルゴリズムを解説する。データ同化は、今の気象予報には欠かせない計算技術であり、それ以外にもあらゆる分野で活用が始まりつつある汎用的なものである。ここで数値シミュレーションは、偏微分方程式に立脚したタイプから、エージェントシミュレーションのような現象論にもとづくタイプまでをも含む。エージェントシミュレーションとは、人と人の関係のような、極めて細かいレベルの相互作用を数式で表した計算モデルである。データ同化の基礎は各種フィルタリングのアルゴリズムとなるが、その導出には、特異値分解など行列の分解に関わる線形代数の知識が必要となる。適宜、数理的思考力が高まるように指導する。
科目目的
予測の機能は、大別すれば、未来の状態を予知する計算モデルと、現状の状態を把握する観測モデルの2つで成り立っている。従来の科学観は、特に統計学がそうであるが、この2つを独立に扱い、相互検証する形式で各々の情報を活用してきた。一方、予測能力の観点からすると、2つを統合するほうが優れた性能を当然示す。本授業では、この新しい科学観を支えるベイズ統計学の基礎を解説し、ベイズ統計学に基づく道具である、マルコフ連鎖モンテカルロ法と逐次ベイズフィルタのアルゴリズムを習得することを目的とする。これらの道具は、現実の複雑な対象の予測問題を取り扱う際には大変有用である。
到達目標
以下を到達目標とする。
・ベイズの定理が意味するところを複数の観点で説明できる。
・マルコフ連鎖モンテカルロ法、とくにメトロポリスへースティング法とギブスサンプラーを解説できる。
・代表的な逐次データ同化手法
ー 粒子フィルタ
ー アンサンブルカルマンフィルタ
のアルゴリズムを理解し、計算機に実装できる。
・問題に応じて適切なデータ同化手法が選択できる。
授業計画と内容
第1回 概論
第2回 数値シミュレーションとベイズの定理
第3回 状態空間モデルと次元の呪い
第4回 逐次ベイズフィルタ
第5回 状態エクトルの拡大
第6回 マルコフ連鎖モンテカルロ法:メトロポリス法、ギプスサンプラー
第7回 粒子フィルタ
第8回 乱数発生法とリサンプリング
第9回 さまざまな平滑法とパラメータ推定
第10回 確率変数ベクトルの直交射影
第11回 カルマンフィルタ(KF)
第12回 アンサンブルカルマンフィルタ(EnKF)
第13回 平方根フィルタ、Unscented KF
第14回 融合粒子フィルタ、pMCMC、アジョイント法
◎ 以上は目安である。
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
数学的な展開が多いので、教科書および配布資料を用いて復習すること。またレポートを期限までに提出すること。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
---|---|---|
レポート | 40 | マルコフ連鎖モンテカルロ法を理解した上で、主要なアルゴリズムを簡単な問題に適用できるかどうかを評価する。および、各種逐次フィルタのアルゴリズムを理解した上で、簡単な問題に適応できるかどうかを評価する。 |
平常点 | 60 | 授業への参加、受講態度(授業内での議論への参加やアンケートへの回答への姿勢)の状況を基準とする。 |
成績評価の方法・基準(備考)
出席率が70%に満たない者、レポートを提出しない者はE判定とする。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキスト:
(1)樋口編・著、データ同化入門、朝倉書店、2011、ISBN: 978-4254127867
参考書:
(1)北川源四郎 著、時系列解析入門、岩波書店、2005、ISBN: 400-0054554
※テキスト(1)のカルマンフィルタおよび平滑化アルゴリズムの導出法の基礎が付録にある。
※R言語による解説が追記され
「Rによる 時系列モデリング入門」、岩波書店、2020、ISBN: 9784000050159
として改訂出版されたばかり。
(2)片山徹 著、非線形カルマンフィルタ、朝倉書店、2011、ISBN: 978-4254201482
※テキスト(1)と参考書(1)とは異なる方法で、カルマンフィルタおよび平滑化アルゴリズムを導出している。
(3)伊庭幸人・他 著、計算統計Ⅱ「統計科学のフロンティア12」、岩波書店、2005、ISBN: 400-0068520
※MCMCの数理がしっかりと記述されている。
(4)伊庭幸人 著、ベイズ統計と統計物理、岩波書店、2003、ISBN: 400-011582
※ベイズ統計とMCMCの概要がざっくりとわかる本。
その他特記事項
参考URL
https://researchmap.jp/matrix/