シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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行政学Ⅰ | 2024 | 前期 | 金2 | 総合政策学部 | 川口 康裕 | カワグチ ヤスヒロ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
PS-PA2-0001
履修条件・関連科目等
日本国憲法下の統治構造を講義する「立憲主義と統治」、多様な主体間の相互作用を議論する「政治と社会」、「現代政府論」、行政を法的側面から議論する「行政法ⅠⅡ」、行政学の隣接科目である「財政学」、あるいは「政策過程論」などを併せて受講して、日本の行政について基本的理解・関心を持っていることが望ましいが、この講義だけでも「日本の行政」について理解が深まる講義を目指したい。なお、「日本社会文化論」など日本人の行動原理について理解を深める科目や、より広く「組織」を議論する「経営組織論」の履修も本講義の理解にとって有意義である。
本講義は、反覆される定型性に注目し、日本の行政を「静態的」に議論するものであるが、国民国家と行政システムの発展、各種の行政改革など一回限りの歴史性に注目し、立法府及び司法府による行政統制、具体的な政策分野における展開等について議論する「行政学II」(後期)もあわせて履修することにより、「行政」をより「動態的に」学ぶことができる。また、行政学Ⅰ、Ⅱが「総論」にあたるのに対し、「パブリックインターンシップ」では、中央省庁等で勤務する現役の国家公務員を毎週交代で招聘し、その組織の抱える課題について講義をしてもらう。行政学の「各論」ともいうべき講義となる。「総論」(静態的、動態的)と「各論」の双方を学ぶことで、日本の行政の多面的側面についての深い理解を得ることができる。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
現代の国家は、「行政国家」といわれる。公権力に裏打ちされた巨大な「制度」の体系を企画・立案し、運用する「行政」は、様々な場面で私達の人生に大きな影響を与える。国民が主権者(第一起動力)として、そうした「行政」をしっかりとコントロールしていくためには、憲法や行政法にとどまらず、日本の行政の「内側」で実際に動かしている主体(官僚)やその意思決定、行政の「外側」にある立法府との「協働」などを理解する必要がある。
この講義では、「国民本位の行政をどのように実現するか」という問題意識の下、内閣の下で運営されている我が国の「行政」を動かす基本要素(ヒト、カネ)と組織、内部の意思決定等の諸原理、国民の権利義務を規定する法律を立法(立案及び審議)する過程における立法府と行政府の「協働」などをできる限り分かりやすく、実態に即して議論する。
科目目的
この科目は、カリキュラム上の「マネジメント・ポリシーサイエンス」科目・分野として位置づけられている。
この科目での学習を通じ、受講者が我が国の内閣の下で行われている国の行政の担い手や諸原理について基礎的な知識を習得し、日本における国(中央政府)の行政の運営の実際、政策立案等における基本原理について理解を深めることを目的としている。
到達目標
行政の「鉄格子」である憲法をはじめとする公式の法制度を超えて、文化的背景を含めて、日本の行政を実際に動かす原理や広義の「制度」を理解し、日々行われている国の行政につき、自分なりに評価・分析する枠組みを身に着ける。それを通じて、人生において直面する諸問題の解決に向け、これらの知識を自らの意思決定に生かせるようになること。
授業計画と内容
第1回 政治と行政
第2回 国民国家と憲法体制
第3回 国の行政を担うヒト 1
官僚制の歴史と公務員の類型
第4回 国の行政を担うヒト2
官の人生
第5回 国の行政を担うヒト3
組織形成
第6回 国の行政組織
第7回 国の行政を担うカネ1
第8回 国の行政を担うカネ2
第9回 国の行政の意思決定
第10回 立法過程(立法府と行政府の協働)1
議員立法
第11回 立法過程(立法府と行政府の協働)2
内閣提出法案の策定
第12回 立法過程(立法府と行政の協働)3
内閣提出法案の国会審議、行政立法
第13回 地方自治、地方行政
第14回 総括・まとめ
(注)講義の順序、内容に変更がありうる。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
レジュメが配布される場合は、教科書の該当箇所に加え、それを事前・事後に読み込むこと
授業時間外の学修に必要な時間数/週
毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 70 | 問題の理解、知識、論述力 |
平常点 | 30 | 毎回の講義において提出する質問・意見 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
経済企画庁(現内閣府)に1982年に法律職として入庁して以来40年、国家公務員として勤務した。同庁のほかに内閣官房、内閣府本府、大蔵省、金融庁、消費者庁、外務省(在米国大使館及び在ラトビア共和国大使館)にて勤務。留学2年(ロンドン大学LSE:経済学修士)を含め8年の在外勤務により、欧米(米国、英国、EU加盟国)の行政システムに接し、日本のシステムを相対化する機会も得た。
その間、霞ヶ関において、事務官から専門調査員(係長)、課長補佐、主計官補佐(主査)、調査官、課長、参事官、総務課長を経て、指定職(参事官、審議官、次長)として9年勤務した。
内閣参事官として内閣官房において消費者庁の設立準備を行ったほか、庁次長(官房長・局長に相当)として、国会で数百回に及ぶ政府参考人答弁を行い、在職中、製造物責任法、消費者契約法、消費者裁判手続法など合計5本の新法制定や多数の法改正に携わった。さらに大蔵省主計局主査、経済企画庁広報室長のほか特命全権大使(特別職)など国の行政の多面的機能に、様々な立場で自ら携わる機会を得た。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
「行政学」及びその周辺の学問に蓄積した理論、業績を踏まえつつ、自らの実務経験に照らし、我が国の行政を理解するために本質的であると思われる知識(大枠である制定法令を出発点として、不文律、文化、慣行、行動原理などを含む)を抽出し、再整理して、講義においてできる限りわかりやすく伝えたい。その意味で、「行政学Ⅰ」全体が実務経験を活かした授業内容となる。
テキスト・参考文献等
「テキスト」として、
①伊藤正次・出雲明子・手塚洋輔 『はじめての行政学(新版)』(有斐閣 2022年)を指定する。
コンパクトな記述でありながら、最近の動きも含め、重要論点をバランスよくとりあげており、行政学の基礎を学ぶことができる。早いうちに通読するとともに、講義の予習復習に関連箇所を読み込むこと。
お勧めしたい「参考文献」は以下の通り。
スタンダードな行政学の教科書としては、②西尾 勝 『行政学(新版)』(有斐閣 2001)、理論の展開を丁寧に紹介するとともに、行政システムの中核を意思決定行動として描いた③村松岐夫『行政学教科書---現代行政の政治分析(第2版)』(有斐閣 2001)がある。
21世紀の行政をカバーした新しいテキストとしては、、④真渕 勝『行政学(第2版)』(有斐閣 2020) がある。①を通読した後、興味のある論点を深く学ぶために、参照されたい。地方行政にも多くの頁を割いているので、地方公務員志望者は必読である。「分業」と「委任」という概念をキーワードに日本の行政の実態を「体系的」に論じたものとして、⑤曽我 謙吾『行政学 新版』(有斐閣 2022年)がある。行政学をできるかぎり「理論的」に学びたい学生にお勧めしたい。
日本人の精神原理や行動様式から、日本の政治全般について鳥瞰し、日本の政治や行政を動かす原理やその文化的背景の理解に、示唆に富む文献として⑥京極 純一『日本の政治』(東京大学出版会 1983)がある。
厚生労働省に勤務した行政官が九州大学への出向時に執筆したものを最新の動きを踏まえ改訂したものとして、⑦中島 誠 『立法学(第4版): 序論・立法過程論』(京都の法律文化社 2020年)がある。実務家による意欲的な著作であり、本講義と問題意識や執筆者の世代、背景、アプローチが重なる。立法過程を中心に書かれたものであるが、行政学のテキストとしても広く参考になる論点をカバーし、関連著作・論文の引用も豊富である。
その他特記事項
現代国家において、行政は、社会のあらゆる側面に大きな影響を及ぼしており(行政国家現象)、どんな職業選択をしても、行政と無関係に人生を送ることはできない。国や地方自治体、独立行政法人等で働くことを真剣に考えている人だけでなく、マスコミや民間企業を志望するなど、国の行政の活動に関心のある人は広く聴講してもらいたい。