シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
行政学Ⅱ | 2024 | 後期 | 金4 | 総合政策学部 | 川口 康裕 | カワグチ ヤスヒロ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
PS-PA2-0002
履修条件・関連科目等
2023年度または2024年度に本学部の行政学Ⅰを受講していることを前提に講義を進めるが、必須ではない。
本講義は、反覆される定型性に注目し、日本の行政を「静態的に」議論する行政学Ⅰに続き、一回限りの歴史性にも注目しながら「行政」をより「動態的に」学び、21世紀の日本の行政について理解を深めるものである。しかし、21世紀の行政を理解するに当たっても、昭和から続く日本の「静態的な」行政原理を同時に理解することが望ましい。その意味で、行政学Ⅰも併せて受講することが望ましい。
また、「パブリックインターンシップ」では、中央省庁等で勤務する「現役の」国家公務員を毎週交代で招聘し、その組織の抱える課題について講義をしてもらう。行政学ⅠⅡの「各論」ともいうべき講義となる。「総論」(静態的、動態的)と「各論」の双方を学ぶことで、日本の行政の多面的側面についての深い理解を得ることができる。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
本講義は、日本の行政システムを「静態的」に議論した行政学Ⅰに続き、現在の行政システムが形成された歴史的経緯、各種の行政改革、立法府や司法府、さらには、国民による行政に対する「統制」の実態、いくつかの分野における政策策定の実際等について議論することで日本の「行政」をより「動態的」に学ぶ。
科目目的
この科目は、カリキュラム上の「マネジメント・ポリシーサイエンス」科目・分野として位置づけられている。この科目での学習を通じ、行政学Ⅰで学んだ我が国の内閣の下で行われている国の行政の担い手や、日本における国(中央政府)の行政の運営、政策立案等における基本原理を基礎に、それが具体的に展開し、現在に至った経緯や新しい改革、行政の「外部」からの行政に対する統制、いくつかの具体的分野の政策策定の実際などを学ぶことで、日本の行政の実態についての理解を一層深めることを目的としている。
到達目標
不確実でグローバルな時代において、現代社会が抱える様々な問題を解決するための行政のあるべき姿を自らの言葉で、議論することができるようになること。
授業計画と内容
第1回 国民国家と行政システムの成立
第2回 官の行動原理
第3回 行政統制(立法府)
第4回 行政統制(司法府)
第5回 行政の客体としての国民
第6回 行政の透明性
第7回 行政統制(国民)
第8回 政策過程の循環・審議会
第9回 行政組織の改革(橋本行革)
第10回 政府の失敗、規制緩和、新公共管理(NPM)
第11回 政策策定の実際1(経済財政政策)
第12回 政策策定の実際2(消費者政策)
第13回 政策策定の実際3(条例の策定)
第14回 総括・まとめ
(注)政策策定の実際については、一部外部招聘講師を招聘する予定。講義の順序及びテーマは、講師の都合等で、変更の可能性がある。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
毎回、レジュメを事前に配布する。テキストの関連箇所と合わせ、講義の事前・事後に読み込むこと。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
---|---|---|
期末試験(到達度確認) | 70 | 問題の理解、知識、論述力 |
平常点 | 30 | 毎回の授業ごとに提出を求める質問・意見、講義における発言など。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
講義における質問・意見の提出にはResponを活用する
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
経済企画庁(現内閣府)に1982年に法律職として入庁して以来40年、国家公務員として勤務した。同庁のほかに内閣官房、内閣府本府、大蔵省、金融庁、消費者庁、外務省(在米国及びラトビア共和国大使館)にて勤務。留学2年(ロンドン大学LSE:経済学修士)を含め8年の在外勤務により、他国(米国、英国、EU加盟国)の行政システムに接し、日本のシステムを相対化する機会も得た。
その間、事務官から専門調査員(係長)、課長補佐、主計官補佐(主査)、調査官、課長、参事官、総務課長を経て、指定職(参事官、審議官、次長)として9年勤務した。
内閣参事官として内閣官房において消費者庁の設立準備を行ったほか、次長(官房長・局長に相当)として、国会で多数の政府参考人答弁を行い、在職中、製造物責任法、消費者契約法、消費者裁判手続法など合計5本の新法制定や多数の法改正に携わった。さらに大蔵省主計局主査、経済企画庁広報室長のほか特命全権大使(特別職)など国の行政の多面的機能に、様々な立場で自ら携わる機会を得た。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
「行政学」及びその周辺の学問に蓄積した理論、業績を踏まえつつ、自らの実務経験に照らし、我が国の行政を理解するために本質的であると思われる知識を抽出し、再整理して、講義においてできる限りわかりやすく伝えたい。その意味で、「行政学Ⅱ」全体が実務経験を活用した授業内容となる。
テキスト・参考文献等
「テキスト」として
①伊藤正次・出雲明子・手塚洋輔『はじめての行政学 新版』(有斐閣 2022年)を指定する。
コンパクトな記述でありながら、最近の動きも含め、重要論点をバランスよくとりあげている。講義の予習復習として関連箇所を読み込むこと。
「参考文献」としては、下記を参照されたい。
スタンダードな行政学の教科書として、②西尾 勝『行政学(新版)』(有斐閣 2001)。これまでの理論の展開を丁寧に紹介した③村松岐夫「行政学教科書---現代行政の政治分析(第2版)」(有斐閣 2001)がある。
最近の動きを反映し、日本の行政の実態を様々な視点から整理した新しい教科書として、④真渕 勝『行政学(第2版)』(有斐閣 2020) があるが、やや大部なので、①を通読した後、興味のある論点を深く学ぶために、参照されたい。ただし、地方行政にも多くの頁を割いているので、地方公務員を志望している学生は、講義と並行して関連箇所を読み込むことをお勧めする。
日本人の精神原理や行動様式から、日本の政治全般について鳥瞰し、日本の政治や行政を動かす原理やその文化的背景の理解に、今なお示唆に富む古典として⑤京極 純一『日本の政治』(東京大学出版会 1983)がある。
さらに、行政の意思決定に大きな影響力を持つ「審議会」の実像を明らかにした三部作として、⑥森田 朗 『会議の政治学』(滋学選書 2006)『会議の政治学Ⅱ』(滋学選書 2015)『会議の政治学Ⅲ』(滋学選書 2016)がある。これを参照すれば、行政の機微がよく見えてくるであろう。
その他特記事項
現代国家において、行政は、社会のあらゆる側面に大きな影響を及ぼしており(行政国家現象)、どんな職業選択をしても、行政と無関係に人生を送ることはできない。国や地方自治体、独立行政法人等で働くことを真剣に考えている人だけでなく、マスコミや民間企業を志望するなど、国の行政の活動に関心のある人は広く聴講してもらいたい。