シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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地域情報化政策 | 2024 | 後期 | 金3 | 総合政策学部 | 山内 康英 | ヤマノウチ ヤスヒデ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
PS-IF3-0003
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
「「地域情報化」とは、情報通信技術とデータのより高度な利用を促進する情報社会のローカル(=自律・分散・協調的)な活動の総称、また「地域情報化政策」とは、地域情報化に関係した国や自治体の政策の総称です。「情報化」とは情報社会を構成する継続的、長期的な社会変容もしくは運動だ、ということができるでしょう。自治体や国の地域情報化政策には1960年代以降の歴史と積み重ねがあります。この講義では、地域情報化と情報社会の諸課題について、以下の観点から考察します。
(1)コンピュータ・ネットワークとしてのインターネットの発展にともなって、ユニバーサル・サービスとしての電気通信事業に大きな変化が生じています。インターネットとデジタル・トランスフォーメーション(DX)によって、地域の情報化政策にどのような変化が生じているのでしょうか。インターネットは、これに先立つ交換機系の情報通信インフラと、どこが違うのでしょうか。さらに公益産業が満たすべきユニバーサル・サービスとはどのようなものでしょうか。
(2)産業集積の形成に焦点を当てた立地政策や国土計画は、地域研究の重要なテーマです。GoogleやAmazonが立地するカリフォルニアの「シリコンバレー」は、情報通信産業の産業集積のメッカになっています。情報化やグローバリズムの進展にともなって、日本国内の産業集積はどのように変化しているのでしょうか。
(3)国際社会の一貫した傾向として、グローバル化と経済的な相互依存が進展しています。しかし他方では、イギリスのEU離脱や、米国のトランプ政権のように、政府が国益第一主義を掲げるケースも増えています。産業化や情報化のなかで、先進産業諸国だけでなく、東アジア諸国とりわけ中国やASEANも大きく変化しています。このような国際社会の総体的な動きを前提として、地域政策を考える際に、どのような社会科学の分析枠組みや政治経済思想があるのでしょうか。
本講義は、①総合政策の観点から自治体の情報化やDXの取り組み、②地域の情産産業や産業集積の育成、③IT企業や電気通信産業の具体的な業務、④情報通信政策をめぐる永田町と霞ヶ関の政策決定過程、⑤DXやクラウドサービスの背景にあるインターネットの技術的な特徴、⑥社会の情報化を理解する長期的な視点、⑦情報社会の文芸批評、などに関心を持つ学生対象とします。本講義の受講生は、各回の講義のテーマから関心のある課題を選び、PBL(Project Based Learning)による調査研究を行うものとします。PBLでは、卒論やゼミのテーマを勘案しながら、文献やオンライン資料を利用して調査研究し、期末にレポートを作成するものとします。課題の取り組み方や文献については、受講生ごとに講師が説明、指導します。各回の講義のテーマは以下の通りですが、受講者の希望を勘案して入れ替えるものとします。授業中の質疑にオンラインの検索を使って貰いますので、ネットに繋がるノートパソコンを教室に持ってきて下さい。
科目目的
この授業では、中央大学の建学の精神である「實地應用ノ素ヲ養フ」とともに、学部の理念である「政策と文化の融合」、つまり社会的背景を理解して、われわれの直面する問題解決の方法論を歴史的に構成し、さまざまな観点から課題の発見・解決、社会現象の解明を行うことのできる人材育成を目的とします。カリキュラムマップでは『DP1:「専⾨性に基づく複眼的思考能⼒」社会科学および⼈⽂科学等の多分野にわたる実践知を⾝につけ、物事を多⾯的かつ学際的に捉えることができる』に相当しています。
具体的には「地域情報政策」を主題として、(ⅰ)総合政策および社会科学のさまざまな分析フレームワークを理解し、(ⅱ)具体的な社会事象に結び付けて解釈する方法を身に付けることを目的とします。また(ⅲ)「政策」「情報」「文化」の観点からオンライン資料や文献を使った調査研究の手法を学びます。講義で取り上げる具体例を参考にして調査研究に応用するよう学生のみなさんに求めます。
講義では毎回トピックを一つ選んで、(1)そのトピックに関連した社会科学の理論と、(2) 具体的な政策および検討事例を解説します。講義の資料は、中央大学全学授業支援システム「manaba」の「コースニュース」を使って毎回受講者に配布し、同じく「スレッド」を使ってPBLのレポートの作成を指導します。
到達目標
受講生の皆さんは、良い意味でのシンボリック・アナリストつまり抽象的な概念を使って組織活動やビジネス・スキームを構築する職業人となり、付加価値の高い職務をこなさなければなりません。そのためには現在の日本社会の動向と、その歴史的推移を把握することが先決です。具体的には、(ⅰ)日本の情報社会の政治経済の動向について包括的に理解するとともに、(ⅱ)情報通信技術や情報産業について基礎的な専門用語つまり語彙や概念を理解し、これを使って議論を組み立てる能力と、(ⅲ)社会と実践共同体が求める正しい振舞い、つまり公徳(public virtue)に立ちかえって考える習慣を身につけることが大切です。
言葉は、「目と耳から入り、口と手から出るもの」、つまり “words in words out” です。まず基礎的な専門用語を身につけないことには、市民参加の活動に貢献することも、ビジネスで企画書のパワーポイントを作ることもできません。毎回講義をしっかり受講して、身近な関心のあるテーマを選び、PBLとレポートでは自主的に調査と研究を進めて下さい。
授業計画と内容
Ⅰ. 総論と技術的背景
第1回 情報社会と自治体による地域情報化の取り組み
第2回 地域情報化の具体例とインターネット/パケット交換と回線交換
第3回 情報社会と基盤技術/コンピュータ・ネットワークの普及と発展
Ⅱ.政治学的分析
第4回 ユーティリティ産業と民営化/電気通信産業と電気産業
第5回 公益産業の民営化と日本の政治経済思想の推移
第6回 日本の政策形成と政治過程について
Ⅲ. 産業集積と地域経済
第7回 産業集積と日本の国土形成計画
第8回 サプライチェーンの国際展開/アジアのインフラ建設と日本のODA
第9回 産業集積のイノベーション体制とDXの展開
第10回 DXとクラウドのビジネスモデル
Ⅳ.情報社会に関連した諸課題
第11回 オンライン・ビジネスとデータ解析:ロングテールとブラック・スワン
第12回 文芸批評とモダニティおよび情報社会
第13回 インターネットと知的財産権/DRM
第14回 講義のまとめ
【試験期間中に期末試験を実施します。】
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 35 | 筆記試験の採点結果を用いる。 |
レポート | 35 | テーマの重要性、調査研究の質と量、分析の正確さ、仮説構築と結論を導出する論理などの観点から総合的に評価する。 |
平常点 | 30 | 講義に毎回出席して、講師の質問に答えたり、議論に建設的に貢献する活動を総合的に評価する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
①期末レポート、②期末試験、③授業の貢献度によって総合的に評価します。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
この講義は非常勤講師による講義形式ですのでゼミとは関係しませんが、ゼミ論や卒論作成の役に立つように期末レポートの作成を指導します。成績の必要な方は必ず期末試験を受けてレポートを提出してください。
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
本講義の受講生は、各回の講義のテーマから関心のある課題を選び、PBL(Project Based Learning)による調査研究を行うものとします。PBLでは、卒論やゼミのテーマを勘案しながら、文献やオンライン資料を利用して調査研究し、期末にレポートを作成するものとします。課題の取り組み方や文献については、受講生ごとに講師が説明、指導します。各回の講義のテーマは、受講者の希望を勘案して入れ替えるものとします。
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
毎回の講義資料をPowerPointで作成して、中央大学全学授業支援システム「manaba」の「コースニュース」を使って毎回受講者に配布し、同じく「スレッド」を使ってPBLのレポートの作成を指導します。成績は、①授業の貢献度、②期末試験、③期末レポートによって総合的に評価します。単位の必要な方は、かならず期末試験を受けて期末レポートを提出すること。
受講生はスマホだけでなく、パソコンを用いたファイルのアップロードやダウンロード、WordやPowerPointの基本的な利用にも習熟することを求めます。
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
この授業を担当する講師は、「アニメ大全」のシステム開発と運営や、JICAのコンサルタントとしてアジア諸国のインフラ建設に参加した実務経験があります。また、東京大学大学院総合文化研究科の博士号(国際関係論)を持ち、現在は東京大学公共政策大学院の客員研究員を兼務しています。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
インターネットの技術的背景について、クラウドを利用したシステム開発や運用の経験に基づいて解説します。
テキスト・参考文献等
-重松博之監修、野中郁次郎、鈴木寛、山内康英編著『ワイズ ガバメント―日本の政治過程と行財政システム』中央経済グループパブリッシング、2021年。(テキスト)
- 公文俊平「プラットフォーム化の21世紀と新文明への兆し」『NIRA研究報告書』総合研究開発機構、2015年10月.http://www.nira.or.jp/pdf/1503report.pdf ← urlをコピーしてpdfをダウンロードして下さい。(テキスト)
- C.A.ベイリ『近代世界の誕生―グローバルな関連と比較 1780-1914』平田雅博、吉田正広、細川道久訳、名古屋大学出版会、2018年。(参考文献)
-竹下恵『パケットキャプチャ入門:LANアナライザWireshark活用術』 リックテレコム、2014年。(テキスト)
-戸根勤『ネットワークはなぜつながるのか:知っておきたいTCP/IP、LAN、光 ファイバの基礎知識』日経BP社、2007年。(テキスト)
-村井純『日本でインターネットはどのように創られたのか? WIDEプロ ジェクト20年の挑戦の記録』インプレスR&D、2009年。(参考文献)
-村松幹夫『政官スクラム型リーダシップの崩壊』東洋経済新報社、2011年。(参考文献)
-R.E.ハント『ご注文は革命ですね――情報時代の政治にまつわる物語』小野和夫訳、早稲田大学出版部、2003年。(テキスト)
-経済産業省資源エネルギー庁「電力小売全面自由化」
http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/ ←urlをコピーしてブラウザで見て下さい。(テキスト)
-「ヘゲモニーとしての修正新自由主義――世界システムと国民国家の政治経済学」『情報社会学会誌』Vol.13 No.1、2018年。https://infosocio.sakura.ne.jp/wp/wordpress/wp-content/uploads/2019/05/vol13no1-8.pdf ← urlをコピーしてpdfをダウンロードして下さい。(テキスト)
-マイケル・ポーター『競争戦略論II』ダイヤモンド社、1999年。(テキスト)
-クレイトン・クリステンセン『明日は誰のものか:イノベーションの最終解』宮本喜一訳、ランダムハウス講談社。(参考文献)
-松原宏編『産業集積地域の構造変化と立地政策』東京大学出版会、2018年。(参考文献)
-野中郁次郎、竹内弘高『ワイズカンパニー―知識創造から知識実践への新しいモデル』東洋経済新報社、2020年。(テキスト)
-Google Cloud 『クラウドコンピューティングの将来』 https://cloud.google.com/resources/future-of-cloud-computing-ebook?hl=ja ← urlをコピーしてpdfをダウンロードして下さい。(テキスト)
-「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン実践ガイドブック」https://cio.go.jp/guides ← urlをコピーしてpdfをダウンロードして下さい。(テキスト)
-関満博『フルセット型産業構造を超えて―東アジア新時代のなかの日本産業』中公新書、1993年。(参考文献)
-ミラン・クンデラ『小説の技法』西永良成訳、岩波書店、2016年。(テキスト)
-水村美苗『日本語が亡びるとき─英語の世紀の中で』筑摩書房、2008年。(参考文献)
-大村彦次郎『時代小説盛衰史』筑摩書房、2005年。(参考文献)
-中村真一郎『小説とは本当は何か』河合文化教育研究所、1992年。(参考文献)
-クリス・アンダーソン『ロングテール(アップデート版)』藤森ゆりこ訳、ハヤカワ新書、2009年。(テキスト)
-ナシーム・ニコラス・タレブ『ブラック・スワン:不確実性とリスクの本質』望 月衛訳、2009年。(参考文献)
その他特記事項
参考URL
https://www.ni.tama.ac.jp/yamanouchi/