シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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特殊講義(ヨーロッパ統合と法Ⅰ:EU法の基礎) | 2024 | 前期 | 木2 | 総合政策学部 | 庄司 克宏 | ショウジ カツヒロ | 2年次配当 | 2 |
科目ナンバー
PS-NF2-0001
履修条件・関連科目等
3年次の事例研究Ⅰ・Ⅱ(庄司ゼミ)の履修を予定する学生は、特殊講義(ヨーロッパ統合と法Ⅰ:EU法の基礎)を2年次の専門演習に準じて位置づけているので、履修することが望ましい。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
授業ではEU法の基礎的事項を全体的に説明した後、「EU憲法」として統治機構、国内法との関係、基本的人権の保護を中心に扱う。具体的には、次のとおりである。
(イ)EU基本条約(EU条約・EU機能条約)およびEU法制度とその発展について概観する。
(ロ)EU諸機関、EU権限、EU法の法源、立法制度、行政制度および司法制度について詳述する。(ハ)EU法が国内法といかなる関係にあるのかをEU法の直接効果、国内法に対する優越性、基本権保護およびEU法上の権利の国内的救済という視点から解説する。
科目目的
本科目は、EU法政策の基礎概念を踏まえてスプラナショナル(超国家的)な組織に関する法体系、すなわちEU憲法について学習し、「ヨーロッパ統合と法Ⅱ」で扱うEUの法政策(EUの仕事に関わる分野)につなげる。
到達目標
EUは約4億5千万人の巨大市場を擁する。そこで適用される共通のルールとしてのEU法は、環境規制等のように事実上のグローバル・スタンダードを形成したり、競争法や個人情報保護法のように域外適用される場合がある(ブリュッセル効果と呼ばれることがある)。このようにして、EU域内に進出したり、輸出を行う日本企業でなくとも、規制への対応や制裁金の賦課などで多大な影響を被ることがある。そのため、日本企業の間では、EU法に精通したビジネスマンや公務員への期待が高まっているが、そのような需要に応えることができていないのが現状である。このように、日本では「EU法ギャップ」が存在する。
本授業は、EUが運営される超国家的組織法について理解することを目的とする。受講者が将来、EU法を「付加価値」として活用し、実務上EU法に直面した際に的確な調査、判断、助言を行うための応用能力の基礎を提供することが到達目標である。
授業計画と内容
第1回 EU法入門(1)
なぜ日本人がEU法を学ぶのか?
EU法を支える原則
ヨーロッパ統合とEU法
個人が裁判所でEU法を使えるということ
EU法と国家主権の調整
第2回 EU法入門(2)
トランスナショナルな法空間
物・人・サービス・資本の自由移動
トランスナショナルな自由競争
単一通貨ユーロの仕組み
第3回 EU法制度の発展
EU法制度とその発展を、EU基本条約、権限類型、法源、EU諸機関の発展に関連づけてそれぞれ説明する。
第4回 EU統治機構① EU立法
EUにおける通常立法手続および特別立法手続、立法手続における諸機関の役割、補完性手続による国内議会の監視について説明し、「民主主義の赤字」という問題についても触れる。
第5回 EU統治機構② EU行政
コミッションによる委任立法、EU立法の実施におけるコミトロジーおよび補助機関についてメローニ原則を中心に解説する。
第6回 EU統治機構③ EU司法
裁判所組織と訴訟の類型を概観した後、先決付託手続と国内裁判所との関係に焦点を当てる。また、義務不履行訴訟を中心に解説する。また、取消訴訟(先決付託手続きとの関係を含む)および違法性の抗弁について解説し、とくに私人の原告適格の問題に焦点を当てる。
第7回 学外講師①(終了後に感想・コメント文提出)
第8回 EU法の基礎理論① EU法の優越性と国内法上の効果 その1
EU法秩序を確立した判例法として、直接効果に関するVan Gend en Loos判決および優越性に関するCosta v ENEL判決を紹介し、その意義について解説する。
第9回 EU法の基礎理論② EU法の優越性と国内法上の効果 その2
EU法の直接効果の定義および要件を踏まえて、とくに「指令」の直接効果について解説する。
第10回 EU法の基礎理論③ EU法優越性と国内法上の効果 その3
とくに「指令」の直接効果以外の効果(国内裁判所の適合解釈義務、抵触国内法の適用排除義務、加盟国の損害賠償責任)について解説する。また、EU法の優越性の範囲と国民的一体性条項について解説する。その際、立憲的多元主義についても触れる。
第11回 EU法の基礎理論④ EU法上の権利に対する国内的救済―加盟国の手続的自律性
直接効果を有し、かつ国内法に優越するEU法規定に基づく権利が私人に付与されたとしても、その侵害に対する救済は国内裁判所において国内法に依拠して行われる。それは加盟国の手続的自律性と呼ばれる。その内容および範囲について理論的に解説する。とくに根拠および定義、要件としての同等性および実効性に焦点を当てる。
第12回 EU法の基礎理論⑤ EU法の下における基本的人権の保護
EU司法裁判所が基本権保護に関する判例法をどのように形成してきたのか、また、基本権に関する審査権の範囲はどこまで及ぶのかについて概観した後、EU基本権憲章および欧州人権条約の位置づけについて解説する。EUの欧州人権条約加入問題についても触れる。また、EUの刑事司法協力と基本権保護の関係についても言及する。
第13回 学外講師②(終了後に感想・コメント文提出)
第14回 総括・到達度確認
(上記各回の順序が一部入れ替わる場合がありうるが、そのときは事前に連絡する。)
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 70 | 授業で扱った範囲で論述式の筆記試験を行う(教科書、配布物、ノートを持込可で実施する、授業内容の理解度を評価する)。 |
レポート | 30 | 学外講師授業について提出するコメント・感想文、および、適宜実施する授業小レポート |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキスト
庄司克宏著『新EU法 基礎篇』岩波書店、2013年
庄司克宏著『はじめてのEU法(第2版)』有斐閣、2023年
☆上記教科書に対応して設問および資料を印刷したハンドアウトを補助教材として事前に配付する。各ハンドアウトには、上記教科書の該当ページがすべて示されている。
参考文献
庄司克宏著『新EU法 政策篇』岩波書店、2014年
庄司克宏著『欧州連合 統治の論理とゆくえ』岩波新書、2007年(2016年7月15日第10刷)
庄司克宏著『欧州ポピュリズム―EU分断は避けられるか』ちくま新書、2018年
庄司克宏著『ブレグジット・パラドクス』岩波書店、2019年
その他特記事項
参考URL
駐日欧州連合代表部 https://eeas.europa.eu/delegations/japan_ja
EU MAG 駐日EU代表部公式ウェブマガジン https://eumag.jp/
ジャン・モネEU研究センター(慶應義塾大学) http://www.jean-monnet-coe.keio.ac.jp/