シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
政治学概論 | 2024 | 前期複数 | 月3,木1 | 経済学部 | 三船 毅 | ミフネ ツヨシ | 1年次配当 | 4 |
科目ナンバー
EC-IF1-21XX
履修条件・関連科目等
特にないが、現代日本の社会と政治に関心があることが望ましい。高等学校で学んだ世界史(近現代)、日本史(近現代)、政治・経済の内容をある程度踏まえて講義を進めるが、特に身構える必要はない。本講義の履修者は混沌とした現代社会を読み解き生活していくうえで、政治学が重要な指針を与えてくれる学問であることを理解していただきたい。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
<学位授与方針と当該授業科目の関連>
この科目は、現実把握力(経済学の専門知識及び社会・人文・自然科学の知識教養に裏付けられた広い視野に立った柔軟な知性に基づき、現実の経済現象を的確に把握することができる)の修得に関わる科目です。
<概要>
本講義では現代の政治原理としての自由民主主義の成立過程とその現代的意義、および自由民主主義体制における諸問題を論じる。本講義における前半では、現代の自由民主主義という政治原理がいかにして形成されてきたのかを近代市民社会の成立過程、およびいくつかのトピックスから解き明かす。後半では、現代の自由民主主義体制において政治の関わる諸領域や、政策の問題点を説明し考察する。特に、政治主体、政治制度、政治意識、政治文化、国際関係などを取りあげて、その現状と問題点を理解する。
科目目的
①基本的な政治理論ならびに、他の社会科学を理解していくうえで必要な知識の習得を目標とする。
②現代社会における一市民として、実社会における政治の重要性を認識する。
③現代社会において政治が関わる領域の現状を理解し、問題点を考察し批判的視点を涵養する。
④政治原理としての自由民主主義および社会主義などを理解し、自由・平等などの社会的諸価値の意義を理解する。
到達目標
自由民主主義という政治原理がいかにして確立されてきたのかを理解する.
政治学の基礎的な用語を理解する.
現代の日本および国際がどのような状況あるのかを理解する.
授業計画と内容
1回:政治と政治学
講義の目的:現実におこなわれている政治はいったい何を目的としているのかを理解する.
また政治学の目的が何であるのかを身近な例から考察し,本講義の目的を述べる.
2回:民主政治の起源
講義の目的:政治,政治学,民主主義とは何かを説明し,本講義の概要を説明する.
近代以降の政治学を理解する出発点として古代ギリシア・ポリスの政治を辿り,現代における政治,政治学の意味を理解する.
3回:近代民主政治の成立過程
講義の目的:市民革命の原理としての民主主義,自由主義とその展開について説明する.
次いで,市民革命の背後にある社会契約論についての論理を,ホッブス,ロック,ルソーの思想から読み解く.
4回:自由主義と民主主義
講義の目的:自由主義と民主主義の展開を整理し,アメリカにおける自由民主主義の成立過程を説明する.自由主義を基礎とする現代の政治の在り方を理解する.
5回:国家と自由民主主義
講義の目的:民主主義とは何であるのかを再考し,現実の民主主義と理念としての民主主義の違いを明らかにする.
6回:自由民主主義の問題点
講義の目的:市民社会から大衆社会への移行の後に,民主主義という政治体制における多くの問題点が明らかになってきた.その問題点は政治を担う人民(大衆)であったことを大衆社会論から理解する.
7回:自由民主主義の再定義
講義の目的:民主主義は20世紀の初頭には理論的,現実的にも問題点が露呈してきた.
その結果,民主主義はシュンペーター,ダールらのアメリカ的多元主義の政治学者により再定義されることになった.
シュンペーターの民主主義理論,ダールの分析的民主主義概念としてのポリアーキーを考察する.
8回:福祉国家の成立と進展
講義の目的:福祉国家の成立過程と進展の要因を考察し,現代社会における福祉国家の在り方の問題点を探る.
9回:自由と平等:福祉国家を巡る論争,ロールズの正義論
講義の目的: 自由民主主義は,経済システムとしては資本主義を採る.しかし,それが故に多くの問題も発生する.
自由と平等をいかにして両立させるのかを,ロールズの功利主義批判から展開される『正義論』を基に考察する.
10回:自由と平等:福祉国家を巡る論争,ロールズの正義論への批判
講義の目的: ロールズの『正義論』は,自由を重視するノージック,また平等を重視するドゥオーキンらから,さまざまな批判を受けた.
それらの批判の論点を説明し,現代国家における再分配という問題を考察する.
ロールズへの批判を自由主義から展開したリバタリアン(ノージック)と呼ばれる人々,
また平等主義から展開したコミュニタリアン(サンデル,マッキンタイアー,テイラー,ウォルツァー)の思想を説明する.
11回:自由民主主義における政治体制:議院内閣制と大統領制
講義の目的:民主主義体制は大別すると,議院内閣制と大統領制がある.これら2つの政治体制は長所・短所を併せ持つことを理解し,
実際の国家体制を考察する.
12回:民主主義の類型化:多数決と合意形成
講義の目的: 自由民主主義体制における意志決定の方法から体制を類型化し,その特徴を理解する.
13回:選挙制度と民主主義
講義の目的: 現代の国家で採用されている選挙制度の理念とその具体的方法をみる.
また,日本において採用されてきた中選挙区制や現在の小選挙区比例代表並立制の問題点を考察する.
14回:投票行動の理論
講義の目的:有権者の投票行動を説明する理論である,コロンビアモデル,ミシガンモデル,
および経済学の理論を用いたダウンズモデル,などを概観し,現代の投票行動研究の意義を理解する.
15回:現代日本の選挙
講義の目的:日本の選挙の特徴を把握し,有権者の投票行動,投票率の変化から日本の政治の変化を捉える.
16回:議会
講義の目的: 議会の機能を理解し,議院内閣制および大統領制における議会のあり方の差異を考える.
17回:政党と政党制
講義の目的: 代議制民主主義における政党の意義と機能を理解し,政党制を理解する.
また,主要国における政党政治の問題点を考察する.
18回:戦後日本政治の変遷1
戦後から高度経済成長を経た田中内閣までの政治過程を理解し,現代日本政治への影響を考察する.
19回:戦後日本政治の変遷2
田中内閣から1993年の非自民連立政権を経て,自民党中心の連立政権への移行,民主党政権,第2次安倍政権までの政治過程を理解し,
日本政治が大きく転換してきたことを考察する.
20回:政策過程
政策がどのようにしてつくられ,実行に移されるのかを日本の事例から理解する.また政策過程に於ける政治家と官僚の関係から民主主義の問題点を考察する.
21回:官僚と行政活動,地方自治
講義の目的:行政の概念を理解し,行政国家,官僚制の問題点を理解する. 次いで,1980年代以降の行政改革を説明し,その進展と問題点を考察する.
地方自治の概念,地方自治の本旨を理解し,日本の地方自治の問題点とされてきた機関委任事務の問題点,
および小泉内閣における構造改革以降の中央・地方関係を考察する.
22回:利益集団と政治過程
講義の目的: 現代の政治過程における利益集団・圧力集団の政治的機能について理解する.
23回:マスメディアと世論
講義の目的: 新聞,テレビ,ラジオなどのマスメディアが政治(有権者や政治家)に及ぼす影響を考える また,近年大きな影響を及ぼすようになってきたインターネットを通じた情報の双方向通信についても考える.
24回:政治参加の理論:政治参加、市民運動、NPO
講義の目的: 自由民主主義の根幹は市民による政治参加である.市民の政治参加が1960年代から70年代に参加民主主義理論を背景に昂揚してきたことを説明し,その現代的意義を考える.
社会運動が戦後日本において果たしてきた役割を理解し,また社会運動の問題点を考察する.
25回:政治意識と政治文化
講義の目的: 政治関心,政治有効性感覚,イデオロギーなどの政治意識の概念を理解する.日本の政治文化の特徴を考察する.
26回:社会階層と政治
講義の目的: 平等・平等化の概念を理解し,戦後日本の「社会階層」と新中間大衆について考察する.
また,現代の格差社会の問題点についても考察する.
27回:グローバリゼーションと民主主義
講義の目的: 自由民主主義の思想は一国内の政治だけではなく,国際関係も規定し,国際政治の原理でもあることを説明する.
ウェストファリア条約以降,WWⅠ,WWⅡの経験から確立された国際関係における自由民主主義を考える.
28回:市民社会と新しい民主主義:討議(熟議)民主主義による政策形成
講義の目的:アメリカから諸外国にもたらされた自由民主主義は,20世紀後半から大きく変容してきた.
その変容の要因と,新しい民主主義思想としての討議民主主義(デリバレイティブデモクラシー)を説明する. さらに日本の自由民主主義を明治国家の性質と天皇制から考察し,戦後日本の民主主義がそれ以前と何を異にしているのかを考察する.
小泉政権以降の自民党政権と民主党政権下の日本政治について考える.
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
---|---|---|
期末試験(到達度確認) | 80 | 短答式および記述式の問題の正答率により評価する. |
平常点 | 20 | 授業中に何回か小テストを行う.形式は短答式である. 正答率により評価する |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
タブレット端末/その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
授業で用いるレッジュメなどはmanabaを通して配布するので,タブレットやPCでダウンロードしていただきたい.
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキスト:川出良枝・谷口将紀『政治学第2版』(2022年)東京大学出版会。
また、授業各回でレジュメなどを配布する。
参考書は、適宜紹介する。また、授業内容に大きく関わる文献については、各回の講義で紹介する。