シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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特殊講義(障害者の雇用政策とインクルージョン) | 2024 | 前期 | 月4 | 総合政策学部 | 山田 雅穂 | ヤマダ ミホ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
PS-IF1-0004
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語/英語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
【授業概要】
前半(第1回~第6回)は『障害者雇用の実態、政策と企業の取り組み』、後半(第7回~13回)は『経営倫理と障害者雇用―CSR・「ビジネスと人権」・「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を焦点に』をテーマに授業を進める。
初回で障害者の雇用政策について概説した後、第2回以降で日本の障害者雇用政策の基軸である障害者雇用率制度や、障害者雇用の実態などを講義する。また障害のある人の雇用・就労には、職業生活と日常生活の両方の包括的な支援が必要であり、加えて企業(事業主)への支援も必要である。この点を「職業リハビリテーション」の視点から学ぶ。
また、日本政府は2006年12月に国連総会で採択された「国連障害者の権利条約」を2014年1月に批准し、これに伴い障害者差別解消法と改正障害者雇用促進法が2016年4月より施行された。これにより日本でも企業による障害への配慮(合理的配慮)が義務付けられ、さらに障害者雇用は各企業のCSR(企業の社会的責任)における重要課題として取り組みが進んできている。
これらの点からも、障害の有無に関係なく、誰もが働けることをより一層促進することが強く求められている。よって後半は、企業に求められる方策を、CSRを含めた経営倫理学(Business Ethics)の知見から講義する。日本語の他に英語の文献も用いて、経営倫理学を学び、障害者雇用も経営倫理もグローバル・イシュー(地球規模での解決が必要な課題)であることを実感してもらう。また障害者を含めたダイバーシティを生かし、企業や社会にいかに包摂するかという「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」について、経営倫理学の観点から講義する。
さらに、全ての国家と企業に適用されるグローバル行動基準である「ビジネスと人権」について、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を中心に講義する。企業は人権を侵害しないのみならず、全ての経営活動で人権を保障し、本業を通じて人権を積極的に実現し、社会課題の解決主体の1つとして大きな役割と責任を担っていることを学ぶ。また障害者雇用も「ビジネスと人権」の重要な一分野であること、企業と国家のそれぞれの役割と責任を理解する。それらを踏まえた上で、多くの企業が発行しているCSRレポートや統合報告書を教材とし、障害者雇用、経営倫理の視点と上述の「ビジネスと人権」およびD&Iの観点、さらにSDGs(持続可能な開発目標)の視点(サステナビリティ、「誰一人取り残さない」社会の実現)から、企業の実態や在るべき姿を読み解く力を養う。
そして授業全体を通して、障害があっても働けるインクルーシブな企業や社会の在り方、働くことを通じた「インクルージョン(inclusion)」の在り方について考える。
科目目的
本科目の目的は、次の3点である。
①本講義では、障害者の雇用政策を通して、障害があっても共に働けるインクルーシブな企業や社会を構築するにはどのような方策や視点が必要かを、障害者雇用政策、福祉政策、CSR(企業の社会的責任)を含めた経営倫理学、ダイバーシティ&インクルージョン (D&I)などの多様な学問分野の知見を用いて学ぶことを目的とする。
②障害者の就業率は障害のない人に比べて低く、重度障害者は障害者の中でもさらに就業率が低い。この実態を解決し、障害のある人もない人も共に働けるインクルーシブな雇用の実現や、働くことを通じた「インクルージョン(inclusion)」について学ぶことを目的とする。
③障害者雇用は日本だけのテーマではなく、重要なGlobal issueであることを理解する。
到達目標
上記の本科目の目的を踏まえた上での到達目標は、次の3点である。
①障害を持つ可能性は誰にでもあるという点で、障害の有無に関係なく働ける企業・社会の構築は、社会全体および自分の身近な課題であるという視点を理解する。
②障害のある当事者と障害者雇用に関わるあらゆる人々・組織(ステークホルダー)の多様な視点を踏まえた上で、多角的な学問分野の知見を身に付け、複眼的な思考と分析に基づいて解決策を自分で導ける力を身に付ける。
③障害者の雇用政策においては、現場の実態と政策・制度とを結びつけることが不可欠であることを、授業全体を通じて理解する。
授業計画と内容
【前半:障害者雇用の実態、政策と企業の取り組み】
第1回 オリエンテーション授業(障害者の雇用政策の概説、受講の際の心構え)
第2回 日本の障害者雇用・就労政策と雇用をめぐる実態(障害者雇用率制度など)
第3回 「障害」とは何か―WHOのICF(国際生活機能分類)と障害の社会モデル
第4回 「国連障害者の権利条約」と合理的配慮(reasonable accommodation)
第5回 障害への配慮と障害者差別解消法
第6回 インクルージョンとは何か?
【後半:経営倫理と障害者雇用―CSR・「ビジネスと人権」・D&Iを焦点に】
第7回 経営倫理とは何か・CSRとは何か
第8回 経営倫理・CSRと障害者雇用
第9回 Business Ethics(経営倫理)とは何か―英語のTextbookで読み解く
第10回 D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)と障害者雇用
第11回 「ビジネスと人権」とは何か―国連「ビジネスと人権に関する指導原則」と企業の責任
第12回 コーポレート・ガバナンスとCSR
第13回 CSRレポート・サステナビリティレポート、統合報告書を読み解く
第14回 総括:障害者雇用とインクルージョン(Inclusion)-インクルーシブな企業・社会とは?
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
・事前に授業中またはmanabaで指示したり、配布した論文・文献・資料等は必ず読んだ上で出席すること。それを前提に毎回の授業を進める。
・授業の最後に提示する課題に必ず取り組み、復習も行うこと。
・授業で配布したレジュメ・資料に加え、授業で扱う事例以外に、各自授業のテーマに関する論文・文献・資料や事例等を収集し、学習しておくこと。それらを有効に活用して、授業への出席とレポート作成に臨むこと。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 60 | ・レポートとして求められる様式や字数を満たしていること ・本、論文、報告書、データなどをきちんと自分で調べ、読んだ上で執筆すること(ネット上の「学術資料以外のもの(筆者が不明なサイト、ツイッターなど)のみの引用」は不可) ・授業以外に自分で収集し学修した学術文献(本、論文等)、データや報告書などの資料、蓄積した事例等も用いていること ・授業で学修した内容を生かし、自らの考察に基づいて論理を展開できているかどうか |
平常点 | 40 | ・授業への出席数 ・リアクションペーパーの提出(不定期に実施) ・授業への参加姿勢(積極的な意見の表明、他の履修生との相互尊重や多様性の尊重に基づいたディスカッションへの積極的な参加、授業全体への貢献など) |
成績評価の方法・基準(備考)
【評価の前提条件】
・出席率が70%に満たない人、レポート課題を提出しない人は、E判定とします。
・成績評価は、平常点とレポート(期末)を総合的に評価して判定します。よって、例えば「授業への出席およびリアクションペーパーの提出のみ」または「レポートの提出のみ」だけでは成績評価はされず、単位が認定されません。授業への出席もレポートも、両方努力して下さい。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う/その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
・授業に関する質問などは、授業時間内のほか、manabaの個別指導コレクションでも随時受け付けています。
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)/反転授業(教室の中で行う授業学習と課題などの授業外学習を入れ替えた学習形式)/ディスカッション、ディベート
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
・本授業は、オンラインによるライブの双方向型授業である。
・出席は、manabaのresponを使用して確認する。
・双方向授業中にはチャット機能も用いて、履修生の意見や質問に随時答えたり対話しているほか、授業中にネット環境等の不具合でアクセスができない場合や、マイクが使えない場合でも出席が可能になるよう、チャット機能、manaba、メールなどあらゆる手段を利用している。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
【テキスト・参考文献】
1.は本科目の基本テキストとして使用する。
それ以外に、以下に挙げる文献に加え、他の文献も複数組み合わせて使用する。
毎回の授業で、manabaにアップするレジュメ、文献や資料等に基づいて講義を進める。またオンラインでアクセスできる論文、研究報告書などの資料、各省庁等のデータや報告書をより多く紹介し、それらを使って履修生がスムーズに学修を進められるようにしている。
1. 【テキスト】日本経営倫理学会編(2023)『経営倫理入門ーサステナビリティ経営をめざして』文眞堂
2.水谷雅一(1988)『経営倫理学のすすめ』丸善株式会社
※電子書籍で購入可能(大学生協 VarsityWave eBooks)
https://coop-ebook.jp/asp/ShowSeriesDetail.do?seriesId=MBJS-440399
3. 松本恒雄監修・田中宏司著(2005)『CSR入門講座第1巻 CSRの基礎知識』
日本規格協会
4. Crane, Andrew, Dirk Matten, Sarah Glozer, and Laura Spence. 2019. Business Ethics Fifth
Edition. Oxford: Oxford University Press.
5. 日本職業リハビリテーション学会編(2012)『職業リハビリテーションの基礎と実践
―障害のある人の就労支援のために』中央法規出版株式会社
6. 佐藤久夫・小澤 温(2016)『障害者福祉の世界〔第5版〕』有斐閣
その他特記事項
・授業への出席は、皆勤を原則とする。初回は履修上の注意事項を説明するので、初回も必ず出席すること。
この科目はライブ型オンライン授業として実施します。