シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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日本政治史料講読B1 | 2024 | 春学期 | 木5 | 法学部 | 山田 博雄 | ヤマダ ヒロオ | 4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-PS4-029S
履修条件・関連科目等
日本近現代史や日本思想史などを学んでいるに越したことはありませんが、特にというほどではありません。むしろ、いま生きている社会をもっとよく知りたいという知的好奇心をもつ人が好ましいでしょう。公務員、教師、ジャーナリストなどを志望する人や、大学院進学を考えている学生などが履修するのに向いているかと思います。
通年で1つのテキストを完読するよう計画されていますから、できるかぎり秋学期の「B2」も受講することが望ましい。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
近代日本を代表する思想家・福沢諭吉(1835-1901)の『学問のすゝめ』(1872-1876)を読みます。
明治初年の大「ベストセラー」であり、今に至る「ロングセラー」です。しかし古典によくあること(ではないでしょうか)、このあまりにもよく知られた本は、一体どれほど本当に(?)読まれているのでしょうか。
この授業は、なぜそれほどに読まれ(少なくとも書名は知られ)、いまだに人の口の端にのぼるのか、その理由を考えてみるということになるでしょう。つまり日本の近代・現代の取るべき方向性を指し示したきた書物を読んで、今ある私たちの位置を確認しようということです。
他方で、戦後日本を代表する政治思想史家・丸山眞男(1914-1996)は生涯にわたり福沢と「対話」を続けましたが、その理由は何かを考えることにもなるはずです。
(方針)①履修者にテキストを朗読してもらいます。②語句の解釈と内容の意味を説明します。③ほぼ毎回、内容理解の確認と意思疎通、質問などを兼ねて簡単な感想を書いて提出してもらいます。翌週に寸評をつけて返却します。
科目目的
基本的に「史料講読A」と変わりません。ただ、この科目が開講されているのは卒業を間近に控えた学生ということもあり、社会人として生きていくときに、大切なことは何かを教えてくれるものとしても適切な、福沢諭吉の『学問のすゝめ』をテキストを読み、考えることにします。
科目の具体的な目的は、①明治期の日本語を解読できる学力を身につけること。②それにより現在と過去との「対話」を容易におこない得るようになること。③「世界」という書物を、自分なりに広く、深く、楽しく、興味深く読み解けるようになること。そして以上すべての根底を貫くのは、④「事実」の尊重とそれに基づく「合理的推論」の重要性であり、その精神と技術を修得すること。
もう一つ。学問は「問い」に始まります。何を、いかに「問う」か。それは各受講者それぞれの課題です。「答え」でなく「問い」。それこそが学問において最も重要なことの一つです。ですから到達目標は、自ら問いを立て、その問いを自ら答えようとすることができるようになることです。『学問のすゝめ』自体が、それを教えてくれる古典です。
到達目標
第一に、漢文崩しの日本語の解読力を身につけ、古典との対話を通して、近現代日本の150年のなかで、現在のわたしたちの置かれている状況を、歴史的な遠近法によって、客観的に分析できるようになること。そして第二に、どう行動すべきかを自発的に考えられるようになること。
授業計画と内容
第1回 ガイダンス
第2回 教科書(2-7頁)「合本学問之勧序」および初編講読
第3回 教科書(7-10頁)初編講読
第4回 教科書(10-14頁)初編講読
第5回 教科書(16-20頁)二編「端書」「人は同等なる事」講読
第6回 教科書(20-24頁)二編「人は同等なる事」講読
第7回 教科書(26-30頁)三編「国は同等なる事」「一身独立して一国独立する事」講読
第8回 教科書(30-34頁)三編「国は同等なる事」「一身独立して一国独立する事」講読
第9回 教科書(36-40頁)四編「学者の職分を論ず」講読
第10回 教科書(40-44頁)四編「学者の職分を論ず」講読
第11回 教科書(44-50頁)四編「学者の職分を論ず」五編講読
第12回 教科書(50-55頁)五編「明治七年一月一日の詞」講読
第13回 教科書(55-61頁)五編「明治七年一月一日の詞」六編「国法の貴きを論ず」講読
第14回 教科書(62-69頁)六編「国法の貴きを論ず」講読
・授業の終わりにほぼ毎回、講読箇所および配布プリントについての感想などを書いてもらいます。その感想に対して、翌週に簡単な寸評をつけて返却します。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
学習する時、できるかぎり「声に出して」本文を読むようにして下さい。"音"が理解を助けるだけでなく、内容に集中するのにも有効です。ことに福沢は「演説」を大事な伝達方法として考えた人です(speechを「演説」と日本語訳したのは福沢です)。むろん「声」に出して読まれることを意識して文章を書いているわけです。音読すると、福沢の息づかいも実感されるかもしれません。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 50 | 毎回の授業で学んだことを、文章によってできるかぎり正確に客観的に表現できるか確認します。もう一つは普段の授業で読めない文献をレポート課題とします。 |
平常点 | 50 | 授業で受講生に音読してもらい、よく読めるか、意味は正確にとらえられているかを見ます。(むろん毎回の出席は大切です) |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
■テキスト
福沢諭吉 『学問のすゝめ』(コンパクト版)慶應義塾大学出版会
■参考書
福沢諭吉 『福翁自伝/福澤全集緒言』(コンパクト版) 慶應義塾大学出版会
大久保健晴 『今を生きる思想 福沢諭吉』講談社現代新書
小川原正道 『福沢諭吉 変貌する肖像』ちくま新書
丸山眞男 『福沢諭吉の哲学 他六篇』岩波文庫
丸山真男 『「文明論之概略」を読む』(上・中・下)岩波新書
寺崎 修編 『福沢諭吉の思想と近代化構想』 慶應義塾大学出版会
『福澤諭吉事典』 慶應義塾大学出版会
電子辞書をもっている人は、持参してください。
その他特記事項
■授業の工夫■
「科目目的・到達目標」にあるとおり、ちょっと大げさのようですが、「世界」という書物を自分なりに読み解けるようになることが目標です。何のために? 古典というテキストを使って今現在の社会の価値観を相対化し、よりよい見通しを与えて、自分がどう考え、行動すべきかを考えていくために、です。学問に対する方法論を、『学問のすゝめ』の福沢自身に教えられるということもあります。
■授業の工夫■
いま、本をあまり(まったく?)読まない学生がいるようです。ですが、そういう人でも、社会人になると、読書の、というよりは「教養」の必要性を全く感じない人はほとんどいないのではないでしょうか? 本講座で、学校の「勉強」と日々の暮らしでの「学び」とをいかにつなぐか、大学卒業前に一緒に、もう一度(または初めて?!)考えてみませんか。
福沢自身、おもしろい文章を書く人でもありますから、読み進むのは、慣れてくれば楽しくさえなり得るのではないでしょうか(そんなことがあるのか? と疑う向きには、ご自分で試してみればいかがです、というだけです)。