シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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研究倫理 | 2024 | 夏季集中 | 他 | 理工学研究科博士課程後期課程 | 札野 順 | フダノ ジュン | 1年次配当 | 1 |
科目ナンバー
SG-OC6-RA01
履修条件・関連科目等
特になし
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
研究は、人類の知的発展、健康と福祉、社会の安全と安寧、地球環境の持続性に貢献することを目的とする公共的な営みである。この営みを社会から委託されている研究者には、信頼と負託に応えて、質の高い、信頼できる知識や技術を公正な手段によって提供する責任がある。本科目では受講者が研究者として責任ある研究活動を行うための前提となる知識、考え方、価値・態度などについて学ぶとともに、研究活動において生じうる倫理的問題について具体的な事例に即して考察する。その過程で、研究者として責任ある行動を取るために求められる感性、価値観、問題分析能力、問題解決能力などの資質の向上をはかる。
科目目的
広義の「科学者」(所属する組織を問わず、新しい知識を生み出したり、それを利活用する専門職業者であり、技術者を含む)が重視すべき価値について考察するとともに、具体的事例の検討及びe-learning等を通して、『学術における誠実性(Academic Integrity)』、「責任ある研究活動(Responsible Conduct of Research)」、「疑わしい研究活動(Questionable Research Practice)」、「研究不正(Research Misconduct)」,『コンプライアンス(Compliance)』等の基本概念を理解する。また、倫理問題に関する感受性を高めるとともに、 「セブン・ステップ・ガイド」等の倫理的意思決定のための手法について学び、倫理的問題解決のためのスキルを修得する。加えて、事例の分析を通して、事故や不祥事、また研究不正が起こる要因について考察し、公正な研究を推進するための「公正研究推進プログラム」を具体的に設計するために必要な知識・能力を修得する。さらに、上記の事柄を含む科学技術倫理教育の学習・教育目標及び教育方法について学び、自らの環境に適した具体的な倫理教育の方法を考察する。
到達目標
科学技術の専門職である研究者として重視すべき価値や行動規範について、具体的な事例を通して学ぶ。「責任ある研究活動」に関わる基礎的な概念について学ぶとともに、討論を通じて「責任ある研究活動」がいかなるものであるかについて認識を深める。インタラクティブ教材の体験および研究倫理プログラムの試案作成を通じて、倫理問題に関する感性と問題分析・解決能力を高める。具体的な到達目標は以下の通りである。
• 研究者が研究・開発・実践において重視すべき価値について適切に理解し、説明できる。
• 研究に関して「責任ある研究活動」、「疑わしい研究活動」、「不正行為」がどのようなものであるかを適切に理解し、説明できる。
• 「責任ある研究活動」に関わる基本的な概念や手続き等(被験者保護、利益相反、オーサーシップ、知的財産権、研究ノートとデータ管理、研究費の取扱いなど)について適切に理解し、説明できる。
• 公正研究推進プログラムの構成要素を理解し、与えられた条件のもとで研究倫理プログラムを提案できる。
なお、本科目は、学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)の「理工学研究科を修了するために身に付けるべき資質・能力」のうち、「創造力」の構成要素である「関連法令を遵守し、倫理観を持って技術者が社会に対して負っている責任を果たす」資質・能力の養成に不可欠な内容を含んでいる。加えて、本科目では、「コミュニケーション力」、「問題解決力」、「組織的行動能力」、「多様性創発力」の資質・能力が試される。
授業計画と内容
第1回 なぜ今、研究倫理なのか
• 社会において問題となった不正事例について映像資料を視聴
• 映像資料の内容に関するグループ討議および全体討議
第2回 研究公正と責任ある研究活動
• 研究不正が起こる構造的背景、「責任ある研究活動」、「疑わしい研究活動」、「特定不正行為(捏造、改ざん、盗用)」および「その他の不正行為(二重投稿、不適切なオーサーシップ等)」についての解説
• 日本学術会議「科学者の行動規範」および「科学者の行動規範の自律的実現を目指して」についての解説
第3回 公正研究推進プログラム
• 公正研究推進プログラムの概要及び構成要素の解説
• 米国研究公正局作成のインタラクティブ教材"The Lab"の体験⑴
• "The Lab"(大学院生)の体験
• 全体討議
第4回 倫理的意思決定の方法
• 倫理的意思決定の方法(セブン・ステップ・ガイド)に関する講義
• 仮想事例の検討(「倫理の空白」など)
第5回 科学技術倫理2.0-倫理とwell-being-
• 予防倫理と志向倫理
• Well-beingの科学と応用
第6回 公正研究推進プログラムに関する検討(1)
• 公正研究推進プログラムに関する発表及び相互評価
第7回 公正研究推進プログラムに関する検討(2)
• 公正研究推進プログラムに関する発表及び相互評価
• 講評
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
次回の授業に備えて、テキストや参考文献等を参照しておく。また、研究倫理プログラムの試案作成に向けて、自らの所属する研究室等の研究倫理プログラムについて調べておく。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 40 | 公正研究推進プログラムに関する課題及び研究倫理教育モジュールに関する課題の提出及び内容ー具体性と実施可能性 |
平常点 | 50 | レスポンス・シート等の課題をそれぞれ真摯に対応しているか。 |
その他 | 10 | 講義への貢献度 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題の提出状況と達成度および討論、演習等における貢献度によって評価を決定する。
なお、以上の課題の達成度は以下の基準に即して判定する。
• 研究者が研究・開発・実践において重視すべき根本的価値や規範、それを重視すべき理由・根拠を、その背景まで遡って理解し、適切な言葉で説明できている。
• 研究倫理の諸概念や諸手続きについて、その意味と役割を、その背景まで遡って理解し、適切な言葉で説明できている。
• 与えられた事例を構成する要因を不足なく析出し、それについて十分な検討を加えた上で、倫理的判断を下すことができている。
• 既知の事例について下された過去の判断や判断基準を機械的に応用するのではなく、根本的な価値に結びつけて倫理的判断を正当化し、それを適切な言葉で表現できている。
• 複数の立場や倫理的観点を十分に考慮し、それぞれの問題に合わせて創造的に解決法を提案できている。
• 公正研究推進プログラムの個々の構成要素の意味と役割を正しく理解し、研究を主導する立場から、研究そのものや研究に従事するメンバー等の特性に十分に配慮して、実効的な公正研究推進プログラムを構成できている。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)/ディスカッション、ディベート/グループワーク/プレゼンテーション/その他
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
研究室の研究倫理プログラム試案の作成
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
教科書
日本学術振興会「科学の健全な発展のために」編集委員会、『科学の健全な発展のために-誠実な科学者の心得-』、丸善、2015年
参考書など
西垣・保井・札野共訳・監修:ヴァン・ニューワーバーグほか『自己成長の鍵を手に入れるポジティブ心理学ガイドー学生生活を始める人・新たな一歩を踏み出す人へー』、ミネルヴァ書房、2023年
札野順編著『新しい時代の技術者倫理』、放送大学教育振興会、2015年
日本科学技術振興機構、『The Lab』 (URL: http://lab.jst.go.jp)
日本科学技術振興機構、『倫理の空白』准教授編及び学生・若手研究者(https://www.youtube.com/watch?v=roa0oNy_g5Y)
(https://www.youtube.com/watch?v=MUVEBVaNLQw&t=0s)
eAPRIN < https://edu.aprin.or.jp >
日本学術振興会 e-learning